短く斬れ

ニュース・短評・データ・資料を怒濤の如く。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
このページのトップへ

ロシア:新移民法の施行と中国人不法移民の一掃


  20070119-00000002-rcdc-cn-view-000.jpg


温暖化の影響で全く冬らしい気がしない今日この頃です。
日課の散歩などに出かけても
あまりのポカポカ陽気に拍子抜けしてしまいます。
そういえば今年の東京はとうとう雪が降らなかったとか・・。


さて、話しは全然変わって
今日はロシアの移民事情について書きます。

当ブログでは何度か
ロシア極東地方での
中国人不法移民の増大について書いてきましたが、

ロシア:中国人の大量流入と摩擦・・モスクワの市場爆破事件

ロシアの復活とプーチン様の2つの難問・・工業化と人口問題

さすがにプーチン政権も危機感が増してきたようで
これに対処すべく
去年の11月に移民法の改正を行いました。

その概要は以下のとおりです。

◇ロシア全土に1200万人いる不法移民・不法滞在者の一掃。

◇正規の手続きを経て一定の枠内で外国人労働者を受け入れる。

◇年ごとの外国人労働者の受け入れ枠が設けられる。
 2007年は600万人の受け入れ予定。
 その大半がロシアと査証免除協定を結んでいる旧ソ連邦諸国から。

◇市場や売店などの小売業の労働者はロシア国民だけに限り、
 外国人は認めない。

つまり不法な1200万人を一掃し、
旧ソ連邦諸国からの600万人のみを認めるというわけですね。

この法律は去年の11月に制定され、
今年の1月15日から施行、
小売業からの外国人労働者の排除は
一定の段階を経て今年4月までに完全実施となります。

これによって大打撃を受けたのは
東北三省からロシア極東地方に
蟻の如く流入している中国人不法移民です。

彼らは最初は安価な中国製品を肩に担いで国境を越えて
ちまちまとした商売を行いつつ、
年を経るごとに極東地方の小売市場の大半を牛耳るようになりました。

この中国人不法移民が
今、ロシアの政策の変化によって悲鳴を上げています。

下記の報道をご覧あれ。
中国東北地方の朝鮮系住民のニュースサイトから。


'涙の袋包み' 険しいロシアでの商売の道

 ロシアでの商売の道は
 私たち朝鮮族たちにとって、ごく卑近な事だ。
 旧ソ連の解体末期、中露関係が解氷を迎え、
 朝鮮族のロシアドリームがおこり始めた。
 朝鮮族の村ごとに誰がロシアで商売をし、いくら稼いだ、
 貿易をして金持ちになった等々、町内の話題になっていた。

 しかしロシア政府が頒布した法令により、
 今年 4月 1日からロシア市場で外国人の小売業を全面的に禁止し、
 ロシア全域の 115の露天市場を全て閉鎖し、
 シベリアの寒風の中を転々とした朝鮮族にも
 直撃弾を当てることになった。

 今度、ロシアで出帆した法令は、
 ロシアで長年間商売をして来た朝鮮族には '青天の霹靂' で、
 あっという間に多くの人々が山のように持ちこんだ商品が
 処分品になってしまった。
 そして大部分の人々が元手だけでも回収しようとの思いから、
 商品のダンピングをしながら経営を続けている。

 ウラジオストク‘都市商売センター’で経営する、
 2000人余りの中国商人たちは半分以上が破産の危機になっている。
 現地の中国人たちも
 「不法経営者もいるが、
 大部分の合法商人たちは長年間ロシア政府に納税し、
 現地の経済にも一定の寄与をしたが、
 追い出すとなると直ちに手を下すロシア人たちの横暴が、
 ロバを使ってから食う行為とまったく同じだ」と憤慨した。

 東寧県三岱口朝鮮族鎮三岱口村の李ギョヒさんによれば、
 自分が商売をしていたハバロフスク・ウィブルスカ市場だけでも
 衣服、履物、家電製品、日用品などの商売に携わる中国人が
 少なくとも 3千名に達するのに、警察がうるさくまとわりつくので、
 結局耐えられずに陽暦の正月から次々に撤収し、
 今残っている人は何十人にしかならないという。
 彼らも、売台一つにつき、
 3万ドル以上払って購入したのを売却出来ない人、
 ロシア人に掛けで売った品物の代金をもらうことができなかった人、
 病気に入院して身動きさえできないなどの人々だと言う。

 外国人たちが大挙撤収するため、
 ロシア市場では中国製品の値段が暴落、
 服一着 2000ルーブルしていたものが、
 3~400ルーブル、ひいては工場価格よりも安いといい、
 倒産に追いこまれた荷担ぎ商人たちの血の涙を読み取ることが出来る。

 「ロシアで 10年余りも言葉を学び、根も下して、
 生計がようやく成り立つようになったが、こんな目に逢って、
 悔し涙を流しながら帰郷につきました。
 もはや他の道を選ばなければならないようです。」
 すっかり落ち込んだ李ギョンヒさんの言葉だった。

 大きなかばんを担いで肩を落として
 東寧税関を通って来る遼寧省撫順出身の崔さんに会うと、
 彼はモスクワで日用品を売っていたが、
 今日は旅券検査、明日は営業証検査、身体合格証検査、
 税金検査といいながら、煩くまとわりつく上、
 またある夜中にはならず者に踏み込まれるのではないかと心配で、
 鼠のようにぶるぶる震えながら生きている状況だといい、
 撤収のために 5万6万元損しながらも、
 残った品物と売台を他の人に売却処分し、
 家に帰って来る途中だと述べた。

 ロシアがこのような超強気になった理由は、
 中国商人の極東市場蚕食に対する危機感のためだ。
 プーチンロシア大統領は昨年末、
 中国人の極東地域商圏蚕食に対する力強い対策を注文した事がある。
 国会の外国商人小売業禁止法案制定は
 これに対する即刻の反応というわけだ。

 ロシアが危機感を持つほど、
 中国人は極東経済をほとんど占領している状況だ。
 ロシア沿海州ウスリースクにある、
 極東ロシア最大の在来市場にある2000店余りは
 皆中国人が運営しているか、
 中国人の委任したロシア人が運営しているほどだ。
 野菜や肉類などの場合も、安い中国産が
 ロシア現地人が栽培して育てた食材料を
 市場からほとんど駆逐した状態だ。

 電子製品市場や建築市場も中国業者が荒している。
 新華通信は中国内のロシア専門家たちの言葉を引用して
 "外国人がロシア市場を主導し、
 ロシア商人たちの不満が大きくなったので、
 ロシア政府が自国民の利権保護のために
 今回の政策を導入したものと見られる"と分析した。

 現在、ロシア沿海州に合法滞留している中国人は25万名ほどだが、
 不法滞留者まで含めば
 沿海州の人口650万名の10%に迫るものと推算されている。

   (朝鮮族ネット)


と、こんな状態になっております。

確かに地道に苦労して商売をしてきたのに、
ロシア政府の政策一つで追い払われてしまうのは
悲痛のような気もしないではありませんが、
中国人がロシア極東地方の経済を牛耳りつつある現状、

 ロシア沿海州ウスリースクにある、
 極東ロシア最大の在来市場にある2000店余りは
 皆中国人が運営しているか、
 中国人の委任したロシア人が運営している。

 野菜や肉類などの場合も、安い中国産が
 ロシア現地人が栽培して育てた食材料を
 市場からほとんど駆逐した状態。

 電子製品市場や建築市場も中国業者が荒している。

 不法滞留者まで含めば
 沿海州の人口650万名の10%に迫るものと推算されている。

まあ、これを見ていると
こりゃ追い払われてもしょうがねえだろうと
思っちゃいますね。


さて、この法改正と並んで
今年ロシア政府は新しい人口政策を打ち出しています。


露、人口減少に即効薬!? 「離散の民」帰国のススメ 
 
 人口の減少に悩むロシアが今年、
 旧ソ連圏諸国を中心に居住するロシア人の引き揚げを支援し、
 国内の戦略的要地への居住を奨励する政策に乗り出した。
 ソ連崩壊後、それまで補助金で
 居住を促していた極東など辺境地域から人口流出が続いてきたが、
 財政が回復基調のため、ロシア人を呼び戻すことで
 広大な“版図”を立て直す狙いがある。

 対象となるのは、ソ連時代の構成共和国に残留していたり、
 ソ連崩壊期などにロシアから国外移住したロシア人。
 旧ソ連圏だけで1600万~2000万人、
 欧米やイスラエルも含めると
 2000万~3000万人は存在するとされ、
 今年は46億ルーブル(210億円)の予算で5万人、
 以後の3年間で30万人の帰還をめざす。

 具体的には、移住費を支援し、
 国境沿いの戦略的要地である「A地域」の帰還者に
 6万ルーブル(約27万円)と家族1人あたり2万ルーブル、
 労働力が不足する「B地域」への帰還者には
 それぞれ4万ルーブルと1万5000ルーブルを支払う。
 A地域への帰還者には失業中の補助金支給や免税なども検討中で、
 すでに近隣国に露移民局の出張所も開設された。

   (産経新聞)


現在、ロシアは人口が年間70万人のペースで減少中で
それに輪をかけて、生活条件の悪い極東地方などは
人口が急激に流失・減少しつつあります。

旧ソ連邦時代は給与や年金の割り増しというアメと
中央政府の有無を言わさぬ命令というムチで
極東地方に人口を送り込んでいたのですが、
ソ連崩壊後はこのアメとムチが揃って消えてしまい、
こんな極寒の田舎は嫌だと
人口の流失に歯止めがかからない状態になっています。

その間隙を埋めるように
中国人がどっと国境を越えて不法流入してきたわけですが、
ロシア政府は極東地方の経済が
中国との交易と中国人労働力なくしては立ちゆかない状態を前にして
手をこまねいていました。

また、ロシアのみならず他国もそうですが、
急激な他国からの移民の増加は
民族の摩擦と憎悪、過激な排外主義を生み出します。

ロシアは近年、極右組織が台頭しており、
特にネオナチが若年層を吸収して勢力を増しつつあります。

ロシア:愛国主義の光と影 その1・・ネオナチの急増

去年12月に「全ロシア世論調査センター」が
ロシア人を対象に行った調査によると、
「ロシアはさまざまな民族の共通の家」との回答は
44%で前年度比9%減。
「ロシア人はロシアの多数派民族なのだから、
より多くの権利を与えられるべき」との回答が
36%で前年度比5%増。
ネオナチのスローガンでもある「ロシアはロシア人のもの」との回答が
15%を占めるという結果になりました。

今、ロシアの政治状況は
今年12月の下院選、来年3月の大統領選を睨み、
外交から内政の季節へと内向きにシフトしつつあります。

このプーチン政権の打ち出した、
不法移民の一掃とロシア系住民の回帰奨励策は
極東地方が中国化されつつあった状況の転換点であり、
国内の排外主義の横行に歯止めをかけるものでしょう。

また、ロシアは
内政の安定と石油高騰による収入増によって
経済状況は好転しつつあり、
極東地方の経済を左右する中国人不法滞在者の追い出しという、
荒療治を行えるだけの体力が身に付いてきたのでしょう。



関連資料リンク

選挙控え露政府、市場から移民締め出し

ロシアが新移民規制導入 不法滞在者の一掃ねらう


関連過去記事

ロシア:中国人の大量流入と摩擦・・モスクワの市場爆破事件

ロシアの復活とプーチン様の2つの難問・・工業化と人口問題


関連過去記事(本店ブログ)

対露外交と中国包囲網 その2
 ・・極東地方への中国人移民の流入(前編)

対露外交と中国包囲網 その3
 ・・極東地方への中国人移民の流入(後編)








スポンサーサイト
このページのトップへ

ロシアの資源外交と立国の礎


   5637_c350.jpg



ロシアも関税引き下げ譲歩 ベラルーシと石油輸出で合意

 ロシアからベラルーシを経由して
 欧州に向かう石油パイプラインの送油が
 一時止まった問題に関連して、
 ロシアのフラトコフ首相は12日夜、
 ベラルーシのシドルスキー首相との会談後、
 ベラルーシがロシアから購入する石油に課す輸出関税を
 引き下げることで合意したと明らかにした。

 ベラルーシ側がロシアの抗議を受けて
 1月から導入した石油通過税を廃止したのを受けて、
 ロシア側も一定の譲歩を示した形で、
 エネルギー価格をめぐる両国の対立はひとまず収束に向かった。

 ベラルーシはロシアから輸出税なしで原油を購入してきたが、
 ロシアは今月からベラルーシ向けにも輸出税を課すと通告。
 今回合意した方式による試算では、
 ロシアがベラルーシに課す今年の輸出関税は
 1トンあたり53ドルで、09年まで段階的に引き上げるという。
 ロシアは当初、1トンあたり180ドルの
 輸出関税を導入するとして、
 天然ガス価格の値上げと合わせてベラルーシの反発を招いていた。

   (asahi.com)


ロシアVSベラルーシのエネルギーバトルは
一応、決着がつきました。

ロシアもそれなりに譲歩したようですが
なんだかんだ言いつつ
ベラルーシがロシアの値上げを飲まされたわけで
ベラルーシ側の屈伏で幕を閉じました。

このニュースは日本のマスコミは適当に流した程度ですが、
とばっちりを喰らった形の欧州では大騒ぎとなりました。

まず、英仏の論調を2つ載せておきます。


◇プーチン氏の脅しを放置するな

 ドイツのメルケル首相は昨日、
 プーチン・ロシア大統領の
 エネルギー供給をめぐるいじめ姿勢について、
 さわやかなほど非外交的な反応を示した。
 首相は、ロシアが、ベラルーシおよび欧州連合(EU)諸国への
 石油輸出をいとも簡単に停止したことは
 「受け入れられない」と述べた。
 首相は、このような行動が「信頼を破壊した」とも述べたが、
 メルケル首相が他の西側諸国の首脳よりも
 クレムリンと近い関係にあることを考えると、
 これはかなりの重みを持たせた発言である。

 プーチン大統領が欧州へのエンルギー供給を遮断したのは、
 この一年間で二回目である。
 前回はウクライナ経由のルートだった。
 ルカシェンコ大統領の全体主義的な政権下のベラルーシは
 国際社会からはつまはじき状態にあり、
 西側諸国はこの価格をめぐる対立に
 巻き込まれないよう距離を置いている。

 しかし遅かれ早かれ、西側諸国は、
 プーチン氏のエネルギーを使った脅迫に
 反対する立場をとらざるを得なくなるだろう。
 ロシアは世界最大の天然ガス埋蔵量と、
 かなりの石油資源を持っており、いくらでも腕力を行使できる。
 英国の情報機関は、世界の秩序を維持するに当たって、
 エネルギー供給の安全を保障するのは、
 アルカイダの脅威に対処するのと同じレベルの
 課題だと見なしている。

 従って、強硬な政治的反応を必要としており、
 現在のEU議長国、主要国(G8)議長国として
 メルケル首相が主導すべきである。
 G8はプーチン大統領に対して、
 主要国の一員として同じテーブルに座りたいならば、
 G8のルールに従って行動すべきであり、
 さもなければG8の資格を剥奪されるリスクを
 冒すことになると伝えるべきである。
 またプーチン氏には、ロシアのエネルギー採掘は、
 西側の専門技術にひどく依存しており、
 その技術撤収の可能性があることもしっかりと思い出させるべきだ。

   (英デーリー・テレグラフ紙 2006/01/11)


◇エネルギーで恐喝するロシア

 ガスの次は石油。
 天然ガス価格をめぐるベラルーシとの口論が収まって
 何日もたたない一月七日、
 ロシアはポーランド、ドイツ向けに
 ベラルーシを経由する原油の供給を止めた。

 エネルギーを武器とするロシアの力の政策は当初、
 クレムリンへの従属を拒む旧ソ連諸共和国に向けられていた。
 ロシア・ベラルーシ間のいさかいはこの点、予想外だ。

 両国は一体化することを考えていたし、
 プーチン・ロシア大統領は
 ルカシェンコ・ベラルーシ大統領の最後の頼りでもあった。
 だが、目的を達成しようとするクレムリンには、
 「友情」も勘定に入らない。

 ウクライナ、モルドバ、アルメニア、グルジアと同様、
 ベラルーシも恐喝の対象となる。
 追従するか、言い値で支払うか、震え上がるか……。

 当面の効果と長期的な影響とで、
 エネルギー戦争のこの新たな展開は
 ロシア・ベラルーシ二国間関係の域を超える。
 欧州連合(EU)はその前面に立たされる。

 EU諸国が消費するガスの四分の一、
 石油の三分の一はロシアから供給されている。
 ロシアは西側との契約を一貫して守ってきたと主張する。

 確かに旧ソ連時代・冷戦当時を含めて、その通りだった。
 しかし、しばらく前から、
 西側に向けて直接ではなくとも、警告射撃には事欠かない。

 EU諸国はこうして、
 ロシア巨大エネルギー企業の野心に盾突くことが、
 どれほど高くつくかを思い知らされることになる。
 これら企業は政治権力の発露である。
 政治権力が企業側の発露でないとすればの話だが。

 EU諸国が従来通り、ばらばらの形で対応し続けるなら、
 やがてはロシアの要求に屈する以外、選択肢はなくなるだろう。

 EU共通のエネルギー政策、
 より広くは域内全体で協調した対ロシア政策が、
 これまでにも増して一層緊急に必要とされる。

   (仏ルモンド紙 2006/01/10)


どちらも「ロシアに警戒せよ」の論調で一致しています。
まあ、そうならざるを得ないでしょうね。


さて、原油高のおかげで
世界の石油や天然ガス産出国の羽振りがいいですね。
このロシアも、世界を騒然とさせているイランも、
そして南米の暴れん坊チャベス氏のベネズエラも。
しかし、彼らの天下はそう長くは続かないでしょう。

かつて1973年に石油ショックが発生し、
それまで超安値だった石油の価格が一挙に高騰しました。
この時、OPECなどの産油国は我が世の春を謳歌し、
逆に日本などの西側先進国は顔面蒼白となりました。

しかし、日本と先進国は
この窮地を省エネルギー技術の開発で乗り切りました。
あのサミット(先進国首脳会議)も
この石油ショックの危機感から始まったものです。

今回の石油高騰は
中国・インドの経済発展による需要増と
イラクの混乱などによって生じたものですが、
おそらくここ数年は
この傾向は続くのではないかと思います。

同時にそれは資源エネルギー産出国の天下が
しばらく続くことを意味してるわけですが、
日本と先進国はあの石油ショックで
省エネと原子力などの代替エネルギーの技術を促進させたように
今回は次世代エネルギーの開発が
そうとう急ピッチで進むと思われます。

高い需要が生じれば
それ相応の代替技術が開発されるのは自由主義諸国の常であり、
おそらく産油国の天下は10年も続かないでしょうね。

地下の資源を掘るしか能の無い連中は
資源の価格の変動に一喜一憂せざるをえませんが、
高い技術を追い求め、絶えず切磋琢磨して工夫を怠らない国は
なんだかんだ言いつつ、長い目で見たら勝利するものです。

世界史を眺めてみると
資源に恵まれなくとも技術や産業で
歴史上に輝きを残した国はいくらでもありますが、
その逆はありません。

資源をかさに他国を恐喝し、
国家間の約束事や契約を弊履の如く破り捨てるロシアですが、
資源以外にまともな技術や工業製品があるでしょうか?
せいぜい中国相手に好評を博している、
2流の武器ぐらいなものでしょう。

プーチンの高笑いもあと10年がせいぜいでしょう。
ロシアはいつまでも天然資源に頼るべきではありません。
資源外交と国際的恐喝に血道をあげる前に
そろそろ何をもって国の礎となすかを
真剣に考えるべきでしょう。

資源は掘ればやがて尽きる時がきます。
このようなものに国家の未来を託せば、
石油の暴落は国家の暴落につながります。

「ソ連邦崩壊後の新生ロシアは
人類史に何か誇れるようなものを生み出したか?」
そう問われて自国を振り返った時に
石油と天然ガスと2流の武器と暗殺団、
それ以外に何も無いことに気づくべきでしょうね。



関連過去記事

ロシアVSベラルーシ:欧州向け送油の停止
 ・・プーチンのエネルギー帝国主義

ロシア強硬策「サハリン2」事業停止へ
 ・・「生産分与契約」と国家の信義

ロシアの復活とプーチン様の2つの難問・・工業化と人口問題







このページのトップへ

ロシアVSベラルーシ:欧州向け送油の停止・・プーチンのエネルギー帝国主義


   ベラルーシ.gif



露も送油停止 東欧巻き込む「資源戦争」

 ロシアと隣国ベラルーシが
 エネルギー供給をめぐって対立している問題で、
 ロシア国営パイプライン会社、
 トランスネフチのグリゴリエフ副社長は9日、
 ロイター通信に「ベラルーシは違法に導入した関税分として
 原油を抜き取っている」と述べ、
 パイプラインへの原油供給を停止したことを認めた。
 
 ベラルーシは今月、ロシアが今年から天然ガス価格を
 2倍以上に引き上げたことへの報復として、
 自国領を通過するロシア産原油に大幅な関税を課す考えを表明。
 ロシアが応じる姿勢を見せないため、
 パイプラインから現物を抜き取る実力行使に出た可能性がある。
 
 送油が停止したのは「ドルージュバ」(友好)と呼ばれる、
 ソ連時代からの基幹パイプラインで、
 ロシアが輸出する原油の約3割が
 ベラルーシを通るルートで欧州に向けられている。
 
 一方、スロバキアやハンガリー、チェコでも8日夜、
 ベラルーシを経由して欧州に向かうロシア産原油の供給が停止した。
 8日朝にはドイツやポーランドへの供給も停止しており、
 ロシアとベラルーシ間のエネルギーをめぐる紛争は
 東欧にも大きな影響を与えている。
 
 スロバキアの石油備蓄量は約70日分、
 ハンガリーは約3カ月分、チェコは約3・5カ月分あるが、
 ハンガリー政府は、クロアチア経由で
 石油を緊急搬送する準備を進めている。

   (iza!)


この問題の経緯を簡単に書いておきますと、

 ◇ロシアがベラルーシに天然ガスの値上げを通告
        ↓
 ◇ベラルーシがこれに反発し、
  ロシアの天然ガスに高額の関税を課すと反撃
        ↓
 ◇ロシアは拒否、というか無視。
        ↓
 ◇報復としてベラルーシは
  領内を通過するロシアの石油パイプラインから
  原油を勝手に抜き取り。
        ↓
 ◇ロシア、怒ってパイプラインの石油供給を全面停止

こんな感じですね。

これが昨年の12月下旬から今日に至るまでの経過ですが、
一番馬鹿馬鹿しい思いをしているのは
ロシア産原油に頼っている欧州各国で、
両国の争いの巻き込まれ、石油を停止されて
「ふざけんなよ」というのが率直な気持ちでしょうね。

ちょうど一年前にも
ロシアはウクライナと同様の争いを起こし、
欧州向けのロシアの天然ガスの供給が一部ストップして
イタリアで25%、フランスで30%、ハンガリーで25%、
ポーランドで14%、スロバキアで30%の供給減となり、
欧州諸国は恐慌状態となりました。
中一年でこの状態が再現したわけです。

近年、ロシアは
「エネルギー帝国主義」と形容されるような、
天然資源を武器とした国家戦略を展開しています。

曰く、友好国には安く売り、非友好国には高く売る。
敵対すれば供給をストップし、
許しを請うて膝を屈すれば供給を再開する。

このやり方でウクライナを脅し、グルジアを締め付け、
今回はベラルーシを標的にしているわけです。

もともとロシアとベラルーシは友好国であり、
ソ連邦崩壊後も親密な関係にありました。
一時は両国が合体して連邦制国家となる構想すらありました。

しかし、2003年、
ロシアが提案したルーブル通貨のベラルーシへの導入を
ベラルーシのルカシェンコ大統領が拒否し、
ここから関係が悪化していきました。

もともと連邦制への移行は
ルカシェンコ自身が大いにノリノリだった話しで
何故、途中から手のひらを返したように
反対に転じたのかは分かりません。
着々と地盤を固めるプーチンのロシアと組んでしまうと
自分の座るイスが無くなるとの焦慮でしょうか。

今回のこのエネルギー紛争は
昨年のウクライナVSロシアの対立と基本的なパターンは同じですが、
その時とは違って
欧米ではベラルーシを擁護する論調はあまり見受けられません。
それはベラルーシのルカシェンコが
民主主義の皮をかぶった独裁者だからです。

そこらへんの機敏を
1月3日付のワシントン・ポストが書いています。


◇ベラルーシが自立を望むなら
 
 ベラルーシのルカシェンコ大統領は
 欧州最後の独裁者として知られているが、
 ベラルーシを併合しようとするロシアの圧力にも抵抗してきた。
 
 これを受けて、プーチン大統領は
 ベラルーシから自らが欲するものを引き出すため、
 「ガスの市場価格化」を利用。
 ルカシェンコ氏は新年の演説で
 「われわれはまたも経済制裁と孤立に直面している」と述べ、
 「理由はわれわれが独立を望んでいるからだ」と強調。
 さらに踏み込んで、ロシアの「反ベラルーシ感情」を非難した。
 ロシアに幻滅したルカシェンコ氏は
 西側との関係改善を希望するようになるかもしれない。
 しかし、欧州連合(EU)が最近も再度強調したように、
 そのためにはルカシェンコ氏が
 ベラルーシの民主化に踏み出す必要がある。

 独裁者の同氏はこれまで民主化とは無縁だったが、
 ベラルーシが本当にロシアから離れ、
 欧州の独立国家として生き残ろうとするなら、
 ガスに市場価格を払うだけでなく、
 ずっと大きな変革を受け入れることが不可避となるだろう。

   (ワシントン・ポスト 2007/01/03)


西側の支援がほしければ
まず民主化を行えということでしょうか。

ウクライナとグルジアには同情的な西側メディアも
ベラルーシに対しては実にそっけないです(笑)

おそらくプーチンも
このベラルーシの事情を見越した上で、
天然ガスの値上げを吹っかけたのでしょうね。


さて、このロシアの資源エネルギー戦略について
過去に本店ブログの方で詳述したことがあります。

対露外交と中国包囲網 その6
 ・・東シベリア石油パイプライン(後編)

その中から一部抜粋します。


 ロシアのプーチン大統領は
 KGB(ソ連国家保安委員会)の出身であることは有名である。

 そのプーチンは旧ソ連崩壊後、KGB自体が無くなり、
 故郷のサンクトペテルブルグに舞い戻り、失意の日々を送った。

 1994年、彼はサンクトペテルブルグの副市長に抜擢される。
 その時、彼は一つの論文を執筆した。
 タイトルは「ロシア経済発展のための鉱物資源戦略」。
 この論文が現在、
 ロシア・ウォッチャーの間で興味の対象となっている。

 内容はずばり、

   ロシアを豊かな資源によって再興させる!

 そして、それを実現すべき方法論について書かれている。

 曰く、

  ◇石油やガスなどの資源産業を国有化。
         ↓
  ◇国有企業群の経営を欧米並みに効率化。
         ↓
  ◇金融機関の機能を併設して「金融産業企業群」となる。
         ↓
  ◇世界からロシアの資源開発への投資資金を集める。

 と、こういう内容。

 今のプーチン政権のエネルギー戦略を見ていると
 この1994年執筆の論文の内容を
 忠実に実行しているのが分かる。


 エネルギーの輸出とは
 そこに供給国と需要国の依存関係を作り上げる。

 今年1月4日の英フィナンシャルタイムズ紙に
 1980年夏の英独首脳会談での
 サッチャー英首相と
 西独のシュミット首相のエピソードが書かれていた。

 シュミット首相が
 ソ連との間で天然ガス供給契約を締結したことを話すと、
 サッチャー英首相が愕然とし、
 「それはとても危険なことだ」と言った。
 しかし、シュミット首相は
 「危険なんてことはない。ソ連はガスを売りたがっている。
 実際、オーストリアのように
 もっと依存している国もある。」と語ったため、
 サッチャー首相は同席していたエネルギー相に
 「英国を絶対に同様の事態にしないように」と諭したとのこと。

 この恐れが現実となったのが、
 今年初めのロシアとウクライナの天然ガス紛争である。

 ロシアのガス値上げ要求をウクライナが拒否し、
 怒ったロシアは今年元旦、
 ウクライナ向けパイプラインのガス圧力を下げ、
 供給を削減する措置を断行した。

 このガス紛争の背景には
 去年の民衆革命により、親露派から脱落し、
 急速にEUと米国に急接近するウクライナへの
 ロシアのエネルギー懲罰戦略発動といった側面があった。

 ロシアは資源エネルギーというものを
 単なる輸出製品や外貨獲得の手段として見てない。
 彼らはこれを国策上の武器と考えている。
 英ガーディアン紙はロシアのエネルギー政策を
 「現代版エネルギー帝国主義」と呼んだ。


昨年の12月27日、ロシア上院は

  「大統領がいかなる国家や個人に対しても
  経済制裁を課すことができる」

という法案を可決しました。

おそらく今回の石油供給の全面停止も
プーチンが早速この新法を適用し、
合法的に行った可能性が高いと思われます。

12月26日付けの英紙デーリー・テレグラフは
「プーチン氏が創造したロシア」と題して
このロシアのエネルギー戦略を批判しています。


 約7年前、大統領代行になる直前にプーチン氏は、
 マニフェストを発表した。
 共産主義の崩壊、エリツィン時代の混乱を受けて、
 ロシアの偉大さを取り戻すための青写真だった。
 信用を失墜したボリシェビキでもなく、
 西欧の自由民主主義でもない第3の道を追求するもので、
 そのカギは、国家権力を回復することにあった。
 国家による軍事力・警察力の独占は1990年代に、
 マフィア、政治的野心を持つ新興財閥、メディア貴族、
 地方知事の混合体によって脅かされていた。
 
 2期目の半ばをすぎたこの時点でプーチン大統領は、
 そのプロジェクトを達成したのも同然と感じていることは間違いない。
 新興財閥は無力となり、メディアは検閲の対象となり、
 州知事たちは従順になった。
 経済面では、ユコスを解体したり、
 ロイヤル・ダッチ・シェルと日本の2企業を
 環境保護に関する刑事責任追及で脅したりして、
 石油とガスの生産をコントロールすることによって、
 国家権力は再確立された。

 クレムリンがエネルギーを政治の武器として使っていることは、
 西側へのエネルギー供給源としての信頼性に疑問を生じさせている。
 記者のポリトフスカヤさんや、
 元国家保安委員会(KGB)工作員リトビネンコ氏の殺害は、
 ソ連時代の陰謀の暗黒世界を思い出させる。
 プーチン氏のロシアにはギャングの側面がある。
 ボリシェビキが戻ってくる訳ではない。
 しかし、陰気な左翼主義は、
 21世紀に偉大さを追求する権力にはふさわしくない。

   (デーリー・テレグラフ 2006/12/26)


今回、供給停止となった「ドルージュバ」というパイプラインは
日本語に訳せば「友好パイプライン」となります。
なんとも皮肉な話しですね。



関連過去記事

ロシア、グルジアへの圧迫を開始・・欧米紙の論調

グルジアがロシア軍将校を逮捕
 ・・ロシアの諜報工作とグルジアの反撃

ロシア強硬策「サハリン2」事業停止へ
 ・・「生産分与契約」と国家の信義



関連過去記事(本店ブログ)

対露外交と中国包囲網 その4
 ・・東シベリア石油パイプライン(前編)
 
 
対露外交と中国包囲網 その5
 ・・東シベリア石油パイプライン(中編)

対露外交と中国包囲網 その6
 ・・東シベリア石油パイプライン(後編)








このページのトップへ

ロシア:愛国主義の光と影 その2・・プーチン政権の紅衛兵「ナーシ」



   p_67357.jpg



前回の続きです。

ロシア:愛国主義の光と影 その1・・ネオナチの急増


2005年5月15日。
突如、モスクワの街頭を6万人の若者が集団行進し、
市民らを驚かせた。

この統一したコスチュームに身を包んだ、
高校生を主体とする若者の集団は
プーチン政権が作った青年組織「ナーシ(Nashi)」のメンバー。
彼らはこの日、ロシア全国の30の支部から集まり、
「旗揚げ」の街頭行進を行った。

ナーシ。
ロシア語で「私たちの」という所有代名詞を指し、
意訳すれば「わが祖国」「わがロシア」という意味。

そのスローガンは「ファシズムからの祖国防衛」であり、
厳格な規律を持った20歳以下の青少年で構成されている。
彼らは政権与党以外の全ての政治勢力を敵視し、
しばしば街頭にて政権擁護の政治運動を行っている。

このためナーシは、ロシアのマスコミや野党政治家からは

  「クレムリンの紅衛兵」

  「政権のヒットラーユーゲント」

と揶揄されている。


ナーシの前身は「共に行く人々」という青年団体。
2004年頃に創設されたらしい。

当時、グルジア・ウクライナなどの旧CIS諸国において
米国を主導とする民主革命が勃発し、親露派諸国は次々と脱落、
この流れはロシア国内にも波及しそうな勢いだった。

また、ソ連崩壊後、
コムソモールなどの全国的な青年教育システムが消滅し、
折からの経済危機や治安の悪化により、
青少年層にネオナチや極左などの急進主義思想が浸透していた。

この国内外の情勢に危機感を強めたプーチン政権は
民主革命の波及やネオナチの拡大を防ぐために
官主導による青少年組織を創設することを決意。
大統領府副長官のウラジスラフ・スルコフの発案により、
プーチン支持の若者を数千人単位で組織化し、
「共に行く人々」という団体を作った。

スルコフはプーチンの懐刀。
政権与党である「統一ロシア」の発起人の一人であり、
政権のイデオロギーや政治戦略を担当している。

ロシアの政治家の影響力についての世論調査では、
プーチンに次ぐ第二位を占めており、
この41歳の少壮政治家は
「クレムリンの灰色の枢機卿」とも呼ばれている。

プーチン政権の基本政策は
国権に管理された民主主義であり、
ロシア国内では「主権民主主義」という名称で呼ばれているが、
これの名付け親がスルコフである。

スルコフは「共に行く人々」の組織を
さらに数万人単位に拡充し、
腹心である連邦委員のワシーリー・ヤケメンコを指導者とし、
「ナーシ」と改名した。


スルコフはこのナーシを
かつてのソ連共産党の青年組織「コムソモール」のような
将来の政治エリートを養成する組織に育てようと考えた。

しかし、発足当初に集った若者達は玉石混淆であり、
その多くはイデオロギー教育に警戒感を示し、
政治組織化するナーシから距離を置こうとする者も出始めた。

そこでスルコフは方向転換を行う。
彼はプーチンに進言し、
プーチンのモスクワ郊外の公邸や黒海の別荘に
ナーシの青年幹部を招待した。
ここでプーチンは若者達と親しく会談し、
それがマスコミに大きく報じられた。

このパフォーマンスにより
ナーシが政権のエリート候補を育てる機関であることが周知され、
将来の出世を求める優秀な若者らが殺到した。

今年の夏、モスクワ郊外のセリンゲル湖畔で
ナーシの教育キャンプが開催された。
そこには競争率十倍の枠を勝ち抜いた優秀な青少年が
約五千人も集った。

講師陣は著名な教授や外交官、政治学者、
哲学者、知事などのそうそうたるメンバーであり、
参加費から往復交通費などはすべて無料で、
政権はこのキャンプに
約200万ドルの費用を投じたとされる。


夏にNHKの番組でも紹介されていたが、
彼らは非常に厳格な規律で知られており、
街頭での政治運動の終了後は酒の代わりにミルクで乾杯する。
 
飲酒・喫煙は御法度であるが、
セックスは許可されており、それも避妊無しが奨励されている。
その理由は「ロシアの少子化対策」ということで、
多くの子供を産み育てることを義務と教えられている。

ここらへんの潔癖さと規律と、そして権力に対する従順さは、
かつてナチスにより組織された、
「ヒットラーユーゲント(ナチス青年団)」に似ており、
暗然とした気持ちにさせられてしまう。

自らを「プーチンの親衛隊」と呼ぶナーシの若者達は、
左右の政治勢力を敵視し、
特にネオナチのような極右勢力と
かつての共産主義の流れをくむ左翼を蛇蝎のように捉えている。

ここらへんは創設者であるスルコフや
オーナーのプーチンの思惑がズバリ当たったと言えて、
彼らは政権を守る「若い牙」を手にしたといえるだろう。

ナーシの総帥ワシーリー・ヤケメンコは
マスコミのインタビューに以下のように答えている。

  ネオナチの若者は、デモを通して、
  自分たちが多数派で急進的だという幻想を世間に抱かせた。
  
  ナーシは、ファシストと似非リベラリストの協力関係を
  何度も批判してきた。
  野党勢力がファシズムを合法化する危険性があると警告した。
  このままではファシストとリベラリストのつながりが強化され、
  拡大してしまう。

  いまこそ、治安維持機関がネオナチ現象に対し、
  法律に則って正しい判断を下すときなのだ。
  そうなって初めて、我々はこの伝染病と
  まともに闘うことができるようになる。

ナーシの存在が世間に周知されたモスクワの行進から
まだ一年と半年に過ぎないが、
この組織は徐々に存在感と影響力を広げつつあり、
やがてそれ自体が小さな権力機構と化す可能性を感じさせる。



関連資料リンク

ナーシ(公式サイト)


関連過去記事

ロシア:愛国主義の光と影 その1・・ネオナチの急増

ロシア:過激「反日報道」とプーチン政権の思惑
 ・・対露外交の譲歩論と原則論

ロシア強硬策「サハリン2」事業停止へ
 ・・「生産分与契約」と国家の信義

ロシア:中国人の大量流入と摩擦・・モスクワの市場爆破事件


関連過去記事(本店ブログ)

対露外交と中国包囲網 その1・・盟友の条件









このページのトップへ

ロシア:愛国主義の光と影 その1・・ネオナチの急増

毒殺未遂のロシア保安局元幹部が死亡

 亡命先のロンドンで毒殺未遂にあった、
 ロシア連邦保安局(FSB)の元幹部、
 アレクサンドル・リトビネンコ氏が23日夜(日本時間24日朝)、
 入院先の病院で死去した。
 タリウム中毒に近い症状を起こして治療を受けていたが、
 容体が急変した。
 警察当局は捜査を継続する方針だが、
 病院では毒物は特定できないとしており、
 事件解明は一層困難になった。
 
   (iza!)


この事件、世評が言うように
おそらく犯人はロシアの国家機関でしょう。

具体的にFSB(KGBの後継機関)の犯行なのかは分かりませんが、
毒殺とは何とも荒っぽいことをやらかすものです。
ここらへんのスマートでないやり口を見ると、
FSBではなく別の機関、
チェチェン絡みでGRU(軍の諜報機関)が下手人かもしれません。

さて、最近のロシアは大国化に向けて驀進中です。
石油高騰の恩恵とプーチンの強権路線で
一頃のエリツィン時代の停滞状況とはうって変わり、
国際的にも発言力を強めています。

しかし、資源を武器とした強引なまでの外交や
国内では民主主義・自由主義に対する締め付けが始まっています。

今日はこのロシアの政情で
私が最近気になっている2つの動きについて書きます。
それはロシアにおけるネオナチの急増と
プーチン政権の私兵組織「ナーシ」についてです。

長いので今回と次回の2回に分けました。


<ネオナチの急増>

第二次大戦においてナチスドイツと戦ったロシア人ですが、
今、皮肉にもネオナチの急増に頭を悩ませています。

かつての仇敵であるヒットラーを崇拝し、
頭をスキンヘッドにし、
ナチスの服装に身を包むロシアの若者達。
彼らは排他的な民族主義に傾倒し、
かつての共産主義に代わる思想として、
ナチズム(国家社会主義)に心を引かれています。

この過激なネオナチグループは
全世界で20万人いると推計されていますが、
このうち5万人がロシアにいて
その中の1万5千人がサンクトペテルブルグに集中しています。

サンクトペテルブルグはプーチンの故郷であると同時に
「スキンヘッドが世界で最も多い町」と言われており、
アジア・アフリカ系住民への襲撃事件が頻発しています。

もともとロシアにネオナチが浸透したのはソ連邦解体直後。
欧州のネオナチグループの影響を受けた若者が増え、
その数は90年代年半ばまでに約千人を数えました。
機関誌を発行するとともにサンクトペテルブルクなどに進出。
その後、急速に人数が増え、
98年までにモスクワだけで約20の組織が
当局によって確認されています。

94年に始まり、その後泥沼化したチェチェン紛争、
中央アジアなどからの移民流入の増大、
そして98年の経済危機によりネオナチは急速に拡大しました。

90年代のネオナチグループの急増は
主に経済不況による貧困・失業が原因でしたが、
最近の傾向は、プーチン政権の打ち出すロシア愛国主義が、
若者の心を外国人排斥に煽り立てて、
やがてネオナチに行き着くというパターンです。

このロシアのネオナチ組織の特徴は
内部では軍隊のような規律と統制が行われていることです。
酒をかっくらって乱行する不潔な連中かと思いきや、
意外というべきか「ナチスのような規律」で組織を律しています。

ソ連崩壊後の道徳価値の低下が著しいロシア社会の中で、
彼らは禁酒、禁煙、上官への服従などの
規律を守りながら集団行動を行っています。

実はこの淵源はナチスというよりも
ソ連時代の青少年教育システムにあります。
ソ連時代、子供たちは共産党の教育システムに加入し、
年齢ごとに、一年生以上の生徒が加入するオクチャブリ、
三年生からのピオネール、
そして青年組織であるコムサモールに属しました。

ここで子供達は集団行動と規律を学び、思想教育を受け、
共産党は未来の人材を育成していました。

ネオナチも同様で
ソ連崩壊後の青少年の教育システムが不在の中、
組織の指導者らがコムサモールなどをモデルに、
この統制システムを作り上げたのです。

実際にモスクワ郊外のいくつかの町では
ネオナチ組織が自警団を作り、街頭パトロールなどを行い、
住民達に受け入れられています。

ここが欧州などでよく見られる、
不良で乱行のネオナチグループとの違いです。
逆にその意味では彼らの組織拡張が
社会的に半ば許容されている恐い側面があるわけです。

ただし、この規律あるネオナチグループも
当然ながら外国人、特にアジア系や黒人系には容赦しません。

2001年4月21日、ヒトラーの誕生日の翌日、
モスクワの自由市場をネオナチの若者約150人が襲撃し、
カフカス系商人10人を負傷させたほか、露店15軒を破壊しました。
世間を驚かせたのはこの若者たちの大半が
14歳から16歳の少年だったことでした。
ここからネオナチによる大規模な襲撃事件が始まっていきます。

同年10月、同じくモスクワで約300人のネオナチループが
市南部にあるツァリツィノ市場になだれ込み、
鉄棒や割れたビール瓶でカフカス系を中心とする外国人を襲撃し
3人を殺害しました。
警察に検挙されたスキンヘッドの若者の多くは、
上着の袖に、カギ十字に似たシンボルマークをつけていました。

2002年6月9日、
サッカーのワールドカップ(W杯)日本対ロシア戦が行われ、
ロシアの敗北が決まるとモスクワのフーリガンが暴徒と化しました。

1人が死亡、100人以上が負傷、
放火された車が7台、逮捕されたのは130人。
数千の暴徒がモスクワの中心で暴れ回り、
その映像は、ロシアだけでなく世界に衝撃を与えましたが、
実はこの暴動はネオナチの扇動によるものでした。

この後、ネオナチによる大規模犯罪は
モスクワとサンクトペテルブルグを中心に年中行事と化し、
プーチン政権は危機感を強めていきます。

2006年11月4日。
この日はプーチンが旧革命記念日(11月7日)に代わり制定した、
「国民団結の日」の日でした。

愛国主義を強調するプーチン政権にとっては重要な日で、
国威発揚を目的としたパレードなどが
ロシア各地で企画されていましたが、
結局、外国人排斥などを主張するネオナチの襲撃を恐れ、
各地で開催が中止となってしまいました。

実は前年の記念日に
ネオナチがモスクワなどで大規模なデモを行い、
チェチェン人などのカフカス系住民や、
中央アジア系住民との衝突事件を引き起こしたからでした。

ネオナチの暴威は年々拡大しており、
ロシア発の外国人襲撃事件のニュースを聞くことは
もはや珍しいことではなくなりました。

このグループは
意外なことにロシアの若年層の中に浸透しており、
その規律と統制で人心をつかみ始めています。


さて、上述したように、当初は
経済危機による貧困が原因と見られていたネオナチの拡大が
実はその下地にプーチン政権が鼓吹する、
愛国主義の煽りがあることが次第に明らかになってきました。

慌てたプーチンは愛国思想の鼓舞を抑制していくと共に、
ある若者の集団を組織し、
ネオナチなどの極右・極左グループと対抗させると共に、
政権の私兵づくりを着々と進めています。

次回はこのヒットラーユーゲントまがいの組織、
「ナーシ」について書きます。


   <続く>



関連過去記事

ロシア:過激「反日報道」とプーチン政権の思惑
 ・・対露外交の譲歩論と原則論

ロシア強硬策「サハリン2」事業停止へ
 ・・「生産分与契約」と国家の信義

ロシア:中国人の大量流入と摩擦・・モスクワの市場爆破事件


関連過去記事(本店ブログ)

対露外交と中国包囲網 その1・・盟友の条件









このページのトップへ

ロシア強硬策「サハリン2」事業停止へ・・「生産分与契約」と国家の信義

「サハリン2」事業停止 エネルギー戦略見直しへ

 ロシア天然資源省は18日、
 三井物産、三菱商事が参加するロシア極東サハリン沖の
 石油・天然ガス開発事業「サハリン2」に対し、
 事業化の調査承認を取り消すとの声明を発表した。
 事実上の事業停止命令として、
 同計画が今後、大幅な見直しを迫られるのは必至で、
 日本のエネルギー安全保障戦略は、再考を余儀なくされるとみられる。
 
 インタファクス通信によると、
 天然資源省は、ロシア検察当局からの抗議を受け、
 事業化承認を取り消す決定を下した。
 同省は2003年7月、
 環境や採算性などの問題を検討した専門家による事業化調査をもとに、
 同計画を承認していた。
 
 また、同国天然資源監督局は今回の決定に先立ち、
 「自然保護法違反」でパイプラインの建設など
 サハリン2の業務停止を裁判所に申請していたが、
 同計画が事実上、停止に追い込まれることになったため、
 21日に予定されていた審理も中止されるという。
 
 事業はすでに8割方完成していた。

   (iza!)


この「サハリン2」に関しては
前に書いたことがありました。

サハリン資源プロジェクト・・足踏み状態にロシア苛立ち

あの懐かしき「樺太」ことサハリン島で、
日本の三井や三菱のお父さん達が
天然ガスの開発で黙々と働いてるわけですね。

一応、地図を載っけておきます。

     74.jpg


「サハリン1」と「サハリン2」は共に、
多国籍の企業による出資方式ですが、
特に「サハリン2」の特徴はロシア資本が入ってないこと。
英国・オランダ系のロイヤル・ダッチ・シェルと
三井物産、三菱商事の3社の出資。
これが今回のロシア政府の
ごり押しにつながっていると思われる。

たいした資源開発技術を持たないロシアは、
こういう形で外資を入れることで
国内各地の資源開発を行っている。

しかし、上記ニュースのように
外資に喧嘩を吹っかけるようなことをすれば
最終的に困るのはロシア政府自身ではないのかね?
おそらく、これが日本政府や三井・三菱の疑問ではあるまいか?

その疑問の答えに関しては
いろいろな報道で背景説明が行われている。

たとえば、


サハリン2 プロジェクトに黄信号 ロシア側の提訴で

 停止が長期化すれば、採算性が低下し、
 計画全体への打撃も避けられない。
 ただ、実際は「ロシア単独での開発や資源の販路開拓は無理。
 事業がストップして困るのはロシア自身」
 (大手商社幹部)との見方は強く、
 当局が本気で計画中止を望んでいる可能性は小さいとみられる。
 
 では、なぜ提訴したのか。
 ロシア問題に詳しい大和総研の井本沙織主任研究員は
 「資源は、ロシア政府が外資に
 主導権を取らせない戦略分野だから」と説明する。
 サハリン2は、現在はロシアからの出資がないが、
 ロシアの政府系企業、ガスプロムが25%の出資を求め、
 既出資企業と株式取得交渉を進めている。
 難航する交渉を一気に前進させるため、
 事業停止をちらつかせて揺さぶりをかけた、
 との見方には説得力がある。
 
   (毎日新聞)


おそらく、これも「ごり押し」の理由の一つなんだろうね。

ただ、私は、
ロシア政府がプロジェクトの主導権を握ろうとするのは
積極的に資源国有化を図ろうというよりも、
もっと目先の損得で動いている部分が大きいと思ってます。

実はこの「サハリン2」のプロジェクトは
当初の開発予定費は約95億ドルだった。
それが資材価格の高騰や自然環境保護の費用で
2倍以上の200億ドル(約2兆3000億円)に跳ね上がった。

あらら、それは大変ですな。
出資したシェルや三井・三菱も大損だね~と思うところですが、
実は、このコスト増大に伴う損は
出資した3社よりもロシア政府がかぶる仕組みとなっている。

この「サハリン2」の開発に関しては
ロシア政府と出資元の3社の間では、
「生産分与契約(PS契約)」と呼ばれる契約形態が取られている。

以下を参照あれ。


石油/天然ガス用語辞典

 「
生産(物)分与契約 production sharing contract」

 1960年代前半からインドネシアにて普及し、
 その後、産油各国で採り入れられた、
 石油探鉱開発契約でサービス契約の一種。
 通常PS契約と略称される。

 インドネシアは1960年に大統領令により、
 石油産業の国有化を宣言したが、
 その建て前の下で外国企業の資金と技術を導入する、
 契約形態の模索が行われた結果、
 1960年代になって開発請負契約、PS契約が相次いで導入された。

 PS契約では従来の利益配分方式の探鉱開発契約と異なり、
 生産物自体を産油国と外国石油会社間で分けあう点が特徴的である。
 外国石油会社は産油国又は産油国国営会社の
 作業請負人(コントラクター)として作業を行い、
 併せて必要な資金と技術を提供する。
 探鉱の結果、商業規模の石油の発見があった場合、
 生産物から現物で投下資金を回収するが、
 通常、実費相当分はコスト原油として先取りすることができ、
 コスト回収後の原油を
 産油国と外国石油会社間で分けあう形式の契約である。


つまり、どれだけコストがかかろうが、
それは開発後の石油や天然ガスから支払われる。

で、コスト分を差し引いた石油と天然ガスを
今度は投資3社とロシア政府が山分けにする仕組み。

この「山分け率」は最初から契約で決まっている。

 ◇収益率17.5%未満の場合
   投資家の取り分 90%、ロシア側の取り分 10%

 ◇収益率17.5%以上、24%未満の場合
   投資家の取り分 50%、ロシア側の取り分 50%

 ◇収益率24%以上の場合
   投資家の取り分 30% 、ロシア側の取り分 70%

サハリン大陸棚における石油・天然ガスの開発と環境:
 サハリンプロジェクトの開発の利点

つまり、コストが増大し、その分利益が減れば減るほど、
ロシアの取り分がごっそり減っていき、
投資3社はそれほど打撃を受けない契約になっている。

だから、プーチンは怒ってるのさ。
「ざけんなよ!」ってね(笑)

以下、ロイターと産経の過去記事。


◇サハリン2超過コスト、露政府がほぼ全額承認へ

 ロシア・サハリン沖の
 原油・天然ガス開発事業サハリン2を手がける企業連合、
 サハリン・エナジーのクレイグ最高経営責任者(CEO)は、
 ロシア政府がプロジェクトの超過コスト100億ドルの
 ほぼ全額を承認する、との見方を示した。

 サハリン2の契約では、
 シェルやパートナーの三井物産、三菱商事は、
 コストをプロジェクトの収入から回収できることになっており、
 超過コストはロシア政府の怒りをかっていた。

   (ロイター:2006/03/23)


◇サハリン2事業費 負担増嫌う?
 露大統領 産業界、来日時の発言注視

 今月二十日のロシア・プーチン大統領の訪日を控え、
 サハリンなど極東のエネルギー開発に対する、
 産業界の関心が高まっている。
 プーチン大統領は、大手ガス・石油会社の首脳らと
 一緒に来日する予定であり、
 日本企業とも新たな協力関係を模索する見通しだ。

 とくにクジラ保護や資源価格の高騰で、
 総事業費が当初計画より倍増しそうな、
 原油・天然ガス事業「サハリン2」をめぐっては、
 プーチン大統領が事業費の増加を認めない意向を示したとされ、
 来日時の発言に関心が寄せられている。
 
 プーチン大統領は今月初旬のオランダ訪問で、
 サハリン2の事業主体の国際石油資本(メジャー)、
 ロイヤル・ダッチ・シェル首脳と会談。
 その中でプーチン大統領は、
 サハリン2で約二百億ドル(約二兆三千億円)に
 倍増する見通しとなった事業費を認めない意向を示した、
 とロシア紙が報道した。

   (産経新聞:2005/11/13)


まあ、そんなこんなで
今回のロシアの強硬措置の背景には

 長期的:資源国有化

 中期的:ロシア資本の参入ごり押し

 短期的:これ以上のコスト増大を嫌ったロシア政府が、
      契約形態の見直しに圧力をかけようとしている。

この3つの観点が大事だと思います。


私は思うんですが、
ロシアのこの手のやり方ってのは、
短期的には自国に利益をもたらすのかもしれないけど、
長い目で見たら果たしてどうなのかな?

国際社会の評判を聞いてみればいい。
過去の歴史と現在の彼らの素行から見て
ロシアという国は信義に厚い国でしょうか?どうでしょうか?

各国は一斉に首を横に振るでしょうね。
ああいう信用できない国は珍しい、と。
約束は平気で破るし、言葉に重みが無いと。

これは国家だけではなく、企業も個人も同様だけど、
「評判」ってのは一朝一夕にできるものではない。
日頃の「信義」の積み重ねがその国の評判を増していく。
約束は守り、他国に極力迷惑をかけない。

しかし、ロシアは上記ニュースの如く、平気で約束を破る。
プーチンがどれだけ紳士面をしようとも
やってることは強盗と同じ。
君は子供の頃に「約束は守れ」と教えられなかったか?

このロシア政府のやり方は
長期的には自らの国の歴史に泥を塗ってるのと同じ。
子孫に「約束を守らないロシア人」という負債を負わせるも同じ。

君らはどこかで心を改め、
「国際信義」について学ばないと、
所詮は二流国家であり続けるでしょう。



関連資料リンク

ロシアの「サハリン2」承認取り消しは
 「極めて深刻」=欧州委員

米エクソン、ロシアに
 「サハリン1」の生産分与契約の尊重求める


サハリン大陸棚における石油・天然ガスの開発と環境


関連過去記事(本店ブログ)

対露外交と中国包囲網 その4
 ・・東シベリア石油パイプライン(前編)

対露外交と中国包囲網 その5
 ・・東シベリア石油パイプライン(中編)


対露外交と中国包囲網 その6
 ・・東シベリア石油パイプライン(後編)







このページのトップへ

ロシア:中国人の大量流入と摩擦・・モスクワの市場爆破事件

容疑者「アジア人排除が目的」 モスクワの市場爆発事件

 モスクワ東部のチェルキゾフ市場で
 爆発物により多数の死傷者が出た事件で、
 爆破犯がロシアで増大する中国人などアジア人排斥を目的に、
 自家製の爆発物で犯行に及んでいた事がこのほど明らかになった。
 ロシアの日刊紙ガゼータなどが報じた。

 モスクワの捜査当局は23日までに、
 同市内の大学で化学を学ぶ、
 20歳のロシア人男子学生2人を殺人容疑で逮捕。
 家宅捜査の結果、大学寮から重さ8キロの自家製爆弾と、
 ナチズムを称賛した書籍やバッチなどを押収した。
 
 21日の爆弾事件では、10人が死亡、45人が負傷したが、
 死者のうち5人は中国人で、1人がベトナム人だった。
 逮捕された2人は、捜査当局に犯行を認め、
 動機については同市場に
 「あまりにも多くのアジア人たちがいたからだ」と証言した。

 ロシアでは、中国との経済関係拡大に伴い、
 中国人が大量に流入するのを警戒する声が高まっているほか、
 かつての「弟分」が経済的にロシアより強くなることへのいらだち、
 中国人への「黄禍論」も出てきている。
 親プーチン政権派日刊紙イズベスチヤが
 23日報じたインターネット世論調査の結果でも、
 「ロシアの敵は何か」との質問に、
 6%が「中国人の増殖力」と回答した。

   (iza!)


ロシア国内でのロシア人と中国人のいざこざは
日本のマスコミはあまり報じてこなかった。
極東地方なんかは頻発してるんだけどね。

でも、さすがに爆破事件とあればニュースになる。
初めてじゃないかな、こういうロシア国内での
中国人絡みに人種摩擦が大きく報じられるのは。

このモスクワ郊外での中国人の進出に関しては、
TBSのサイト「ユーラシア新世紀」の以下の記事が詳しい。
一部、引用します。


中国人の侵略的拡張   

 ロシアの民芸品が並ぶモスクワ東部の観光名所、
 イズマイロボのそばに巨大な中国人市場が数年前から出現し、
 年々規模を拡大している。
 中国製の衣類や靴、日用品を安価で売り、
 収入の少ないロシア人の間で人気だ。

 そこでは甲高い中国語が飛び交い、ベトナム人商人の姿も目立つ。
 中央アジア系労働者を使用人に使い、ざっと1平方キロ近くが
 ロシアの領土とは思えない「中国人疎開」となっている。
 日本にいる中国人の多くは日本語を話すが、
 彼らはほとんどロシア語を解さない。
 中国東北部や南部など農村地帯の行商人が多い印象だ。

  実はこうした中国人街がロシア各地に次々誕生しつつある。
 労働力不足の極東やシベリアでは、
 中国人の季節労働者が農場や工場で働いており、
 中国との通商や労働者抜きには
 経済が成立しない状況になりつつある。

 中国人の不法滞在、密輸、犯罪も増加し、
 極東で発生する中国人の犯罪件数は年間1万件に上る。
 シベリアに生息するアムールトラ、
 ジャコウジカといった絶滅危惧種が
 中国人密猟者たちの標的になっている。

 ロシアの公式統計では、ロシア在住の中国人は45万人。
 しかし、実際には200万人以上に上り、
 500万人という非公式推定もある。
 中国人労働者や行商人らはロシアの国境検問所で、
 腐敗した係官に袖の下を渡し、難なく国境を越えているのだ。
 ロシアの新聞は2010年までにロシア在住中国人は
 8000万から1000万人に達し、
 民族別ではやがてロシア人に次ぐ第二の民族になると書いていた。

 プーチン大統領は数年前、極東を視察した際、
 「やがて極東・シベリアでは中国語が主要言語になるだろう」
 とジョークを飛ばしたが、ロシア指導部には
 中ロ同盟や中国との関係強化に伴う陥穽への危機感が希薄だ。

   (ユーラシア新世紀)


この「ユーラシア新世紀」というサイトは
とてもTBSの出店のサイトとは思えないほど良質な記事が多くて、
ロシアや中央アジア関連の情報源として重宝しています。

前々からロシアへの中国人の流入に関して
本店ブログなどに書いてきたけど、
これは終息の無い問題で
日を追う事に弊害が拡大し続けている。

人口希少で、少子化などで人口が減り続けているロシアと
膨大な世界最大の人口を擁する中国が
互いに隣国として長大な国境を接し、
友好国として人や物資の交流が盛んである。
しかも、国境の出入管理が実に緩い。

そうすると何が起きるかというと、
ロシアへの中国人の大量の流入である。
水が高所から低所に流れ込むように、
実に物理的現象を見るように
中国人が続々と国境を越えてなだれ込んでいる。

ロシアのマスコミなどは
この件を「人口浸透圧の問題」などと言って、、
なにやら物理の法則のように解説している。

特にロシア極東地方ではこの問題が深刻で
あの広大な極東地方の人口はついに700万を割り込み、
替わって中国人の不法移民が増え続けている。

この問題でロシア国内で警鐘を鳴らす声は
以前はマスコミや地方政治家などから上がっていたのだが、
最近はプーチン政権による統制の強化で、
問題の根は拡大しつつあるにも関わらず、
中国に対する警戒の声は封じ込められがちである。

しかし、中露同盟という短期的実利を貪るロシアの足元で、
国家を揺るがす長期的陥穽が少しずつ大きくなりつつある。

この上記ニュースの民族憎悪による爆破事件ですが、
この手の事件は今後ますます増加するでしょう。
減ることはなく、摩擦は年を追うごとに激しくなり、
大地を奪われそうなロシア人の悲鳴は
次第に大きくなっていくでしょうね。



関連資料リンク

ロシアにもチャイナタウン計画 中国人流入に警戒感


関連過去記事

ロシアの復活とプーチン様の2つの難問・・工業化と人口問題


関連過去記事(本店ブログ)

対露外交と中国包囲網 その2
 ・・極東地方への中国人移民の流入(前編)

対露外交と中国包囲網 その3
 ・・極東地方への中国人移民の流入(後編)








このページのトップへ

プーチンの「抹殺命令」:外交官殺害への報復・・こういうこと言っていいのかな (ーー;)

プーチン氏「抹殺命令」、露外交官4人殺害犯に

 ロシアのプーチン大統領は28日、
 イラクで今月初めにロシア人外交官らを誘拐、
 4人を殺害した犯人グループを見つけ出し
 抹殺するよう同国の特務機関に命じた。
 露保安当局はこれを受け、どれだけ時間がかかろうと
 犯人らに「報復」するとの決意を示した。
 
 大統領府報道局によると、プーチン大統領は同日、
 クレムリンで行われたサウジアラビア王室の賓客との会談の席上で、
 「抹殺命令」を下したことを明らかにし、
 ロシアは「犯人たちに関するいかなる情報提供に
 感謝することになるだろう」と強調した。
 
 プーチン氏の出身母体である、
 旧ソ連国家保安委員会(KGB)の後継機関、
 連邦保安局(FSB)のパトルシェフ長官は、
 大統領の命令を受けて同国の特務機関が全力で犯人を探しだし、
 イラクでのロシア人外交官殺害の責任をとらせると約束した。
 
 イラクのバグダッドでは今月3日、
 ロシア人外交官らを乗せた自家用車が武装勢力の待ち伏せに遭い、
 1人がその場で死亡、残る3人もその場から連れ去られ、
 別の場所で殺害された。
 
 ロシアでは同事件後、
 米国だけにイラクの治安を任せてはおけず、
 独自の治安措置を講じなければいけないという意見が
 強くなりつつある。

   (iza!)


おいおい、「抹殺」たって
一応、イラクも主権国家なわけでしょ。
あの国の刑法とか法律の内容は分からないけど、
少なくとも殺人自由な国じゃないだろう。

「大統領府報道局によると」と書いてるから
ロシア政府の公式発表なわけで、
他国の主権を侵害するようなことを平気で言っていいのかな?

  うちの連中が貴国内で殺されたから、
  犯人を見つけ出して抹殺する。

こんなこと公式発表で言うなよって (^_^;)
抹殺なんて極秘にやってくれよ。
イラク政府、抗議しろ。

まあ、こういう武断な感じが、
ロシア国民には受けてるんだろうけどね。

 

このページのトップへ

ロシアの復活とプーチン様の2つの難問・・工業化と人口問題

ロシア軍拡…9年間で3000種の新型兵器配備計画

 石油好景気を迎えたロシアが、
 急速に膨らむ財政黒字を背景に兵器近代化の動きをみせている。
 来年以降、軍備調達費を倍増させ、
 9年間で実に3000種類もの新型兵器を配備する計画だ。
 ロシアでは軍事超大国・米国を念頭に置いた、
 軍拡競争が始まったとの見方が有力になっている。
 
 報道によると、ロシア政府の軍需産業委員会は今月2日、
 来年から2015年までの9年間に
 4兆9394億ルーブル(約20兆7460億円)を投じて
 軍備の近代化を進めることを決めた。
 プーチン大統領も出席した。

 ロシア軍は今年、前年比約30%増の
 2370億ルーブル(約1兆円)を軍備調達費に充てたが、
 計画では、軍備費は来年から年間平均で2倍強となる計算だ。
 しかも、今年は当初予算に加えて
 540億ルーブルの補正予算を組み、
 航空機分野への投資も開始するという。
 
   (産経新聞)


ロシアが復活しつつあります。
ひところの低迷期を乗り越えて、
酔っ払いエリツィンの低迷期を乗り越えて、
ようやく昔の威光の何割か程度を取り戻しました。

膨大だった外国からの借金も、

露、パリクラブ債務2.6兆円全額返済へ

こんな感じで気前よく返しています。

ただ、かの国には
長期的にシビアな課題が2つあります。

1、工業化

2、人口問題

以下、解説します。


<工業化>

いくら復活してきたからといって
それを支えてるのは石油をはじめとする天然資源の価格高騰。
それにプラスして武器の輸出。
これでガッポガッポと儲けて借金をチャラにしている。

でも、天然資源なんて
また、いつ値段が下落するか知れたものじゃない。

さらに天然資源に頼ってばかりの国は、
所詮はいつまでたっても真の意味において大国足りえず。
サウジしかり、イランしかり。

やっぱ工業国にならないと。
加工して輸出して付加価値で儲けないと。
いつまでも天然ガスと石油だけでは駄目。

ロシアという国から
「長大な国土」「豊富な資源」「軍事技術」
なんていう、いかにもロシアらしい要素を全く取っ払って、
ただの「工業化志望の途上国」という観点だけで見ると、
BRICsだ何だと言われつつも
この国がいかにも脆弱な基盤しか持ってないことが分かると思います。

所詮は、

  ロシア様、資源が無ければただの酔っぱらい

という感じで、
やっぱり資源があろうと無かろうと
それ以外の手段でメシを食っていけるように
ロシアは長期的に工業化の道を進まねばならないでしょう。

また、武器の輸出にしても然りです。

現在、ロシアの武器輸出は絶好調でして
本日の産経新聞にも以下の記事が載ってました。


◇露「反米諸国」に照準 武器輸出拡大
 得意先は中印、シリア、イラン… 世界一の米と拮抗

 ロシアの武器輸出がここ数年で急速な伸びをみせ、
 世界一の武器輸出大国・米国と比肩する水準に到達したと、
 ロシアのメディアが伝えた。
 大口顧客の中国やインドに加え、
 石油マネーで潤うシリアやイラン、ベネズエラ、ミャンマーなど、
 「反米諸国」との契約が伸びているためだ。
 ロシアは今後も攻勢を強めていく姿勢を示しており、
 欧米との摩擦も一層高まるものとみられる。

 ロシアの日刊紙、独立新聞によると、
 ロシアは2000~04年の5年間で
 227億ドル(約2兆6105億円)の武器を売却し、
 米国に次ぐ武器輸出大国となった。
 輸出高は毎年増大しており、05年は最終的に、
 当初予定より約20%増の61億2600万ドルを輸出したという。
 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の統計では、
 00年から05年の武器移転総額は
 ロシアが330億4600万ドルに対し、
 米国は352億9300万ドルと拮抗している。

   (産経新聞)


絶好調ですね。
もうバンバン売りまくってます。

私は基本的に「武器輸出」ってものに
反対する者ではありません。
倫理的拒絶感は持ってません。
日本も友好国や同盟国に限って輸出すべきだと思ってます。

ただ、このロシアのように
武器輸出によって国家経済の何割かを支えているという現状は
あまりにもいびつな構造だと思います。

武器の輸出ってのは普通の商品の輸出と違って、
多くの国際的な利害関係を呼び込む結果となります。

なんせ、各国の安全保障の根幹ですからね。
買った国は嬉しいし、そこと敵対する国は不快感をもつわけで、
国益的にプラスになるにせよマイナスになるにせよ、
多くの利害関係をロシアにもたらします。
テレビやパソコンの輸出とは意味が違うわけです。

さらに、この武器輸出に多くを頼っている現状は
国家の未来にとって危険と言わざるをえません。
何故ならば商売のために戦乱を欲するようになるからです。
それは政府指導者のみならず、
軍需企業とそれに関連する製造業が
一斉にその方向を指向し始めるからです。

米国に「軍産複合体」って言葉がありますが、
あれと同じですね。
なまじっか民主主義で
それぞれが一票をもっているだけに始末が悪い。
国家の進路がそれに引きずられるようになります。

まあ、資源と武器で
国家経済を潤しているロシアの現状は
現状は現状としてやむをえないとしても
長期的には工業立国の方向にシフトしなければいけません。


<人口問題>

これは2つの側面があります。

一つはロシア全体の人口減少。
純粋な少子化の問題です。

もう一つは、ある意味これはやっかいなんですが、
極東地方の人口減少問題です。

ロシア連邦国家統計局によると、
ロシアの人口は1993年の
1億4千8百60万をピークに毎年減少を続け、
2005年は1億4千3百50万人となりました。
毎年70万人の減少です。
これは頭の痛い問題。

さらに頭が痛いのが極東地方で、
バイカル湖以東の極東の人口は
1991年の800万人から
2001年には668万人にまで減少しています。
あの広大な極東地方に700万人以下です。

極東地方の人口減少率はロシア平均の四倍に上り、
人口減の理由として

 1,出生率の五倍に上る死亡率
 2,生活環境悪化による移住

が挙げられています。

さて、問題のポイントはここからなんですが
この極東地方における人口減少に反比例するかのように
同地方に流入する中国人不法移民の数が増え続けています。

詳しくは、この過去記事(本店)でも
読んでいただきたいのですが、

対露外交と中国包囲網 その2
 ・・極東地方への中国人移民の流入(前編)


対露外交と中国包囲網 その3
 ・・極東地方への中国人移民の流入(後編)


ロシアの非公式統計によると、
現在すでに二百五十万-五百万人の中国人が
合法・非合法に極東を中心とするロシア全域に浸透して
一定の労働力を担っているとされており、
年々その数は増大の一途を辿っています。

ロシアの有力紙「独立新聞」によると
ロシアにおける中国人の数は2010年までに800万から1千万人に達し、
民族別ではロシア人に次いで第二位になる可能性があるとのこと。

まあ、中露国境で交易と人の移動が盛んになれば
人口過多の中国から人口まばらなシベリアへ、
開拓民の如く喜び勇んで、
不法移民が進出するのは自然の勢いってものです。
なんせ中国には十数億の人口がひしめいてますからね。

ただ、これを放置すれば
ロシア極東地方がいずれかの将来に
中国人に乗っ取られてしまうのは間違いなく、
プーチン政権はそうとうこの問題に頭を悩ませています。

ロシア全体の人口減少も問題ですが、
それ以上に極東地方の人口減少は安全保障に直結する問題です。

それは遠い未来の課題ではなく、
10~20年程度の近未来の脅威です。


さて、ロシアの長期課題として2つを書いてきました。

1,工業化

2,人口問題

この2つはけっこう難問ですよ~

プーチン様の手腕を見物と致しましょうか。




このページのトップへ

サハリン資源プロジェクト・・足踏み状態にロシア苛立ち


   TKY200603060074.jpg


露が国家統制強化 サハリン石油プロジェクト、 
  背景に欧米への反発

 ロシア天然資源省は二十五日、
 日本も参画し欧米諸国主導で共同開発が進む、
 サハリンの石油・天然ガスプロジェクトへの
 国家統制の強化を検討していることを明らかにした。
 ロシア側が国際的な巨大プロジェクトを
 「国営化」することには多大な困難が伴うが、
 豊富なエネルギー資源を背景にした、
 排他的なロシア民族主義が高まる中、
 欧米側は、ロシア当局による不気味な圧力に警戒感を強めている。
 
 ロシアの英字紙モスクワ・タイムズによると、
 同省のギタズリン報道官は
 「(ロシアは)富を失っている」と強調し、
 同プロジェクトへの政府の対応を
 見直すことを検討していると語った。
 
 ロシア自然科学アカデミーはこのほど、
 欧米投資家の非効率的な運営と計画の遅れで
 ロシアが百億ドル(一兆千五百億円)もの損失を受けているとして、
 ロシア政府が欧米ら投資家との間で、
 利益の分配法などを明確に定めた生産物分与協定を見直し、
 ロシア企業に開発主導権を与えるべきだとする報告書をまとめ、
 同省に提言として提出した。
 
 米エクソンモービル主導の「サハリン1」には、
 ロシア国営石油ロスネフチが12%参画し、
 欧州のロイヤル・ダッチ・シェルによる「サハリン2」では、
 ロシア国営ガスプロムが25%参画をもくろみ、交渉中とされる。
 ロシア側は、これら欧米主導の有力プロジェクトへの
 国家統制を強化したいというわけだ。

   (フジサンケイ ビジネスアイ)


北海道のさらに北、
昔は南半分を日本も領有していたサハリン。
日本名は昔懐かしの「樺太」。

ここに豊富な石油・天然ガスが埋蔵され、
こいつの開発プロジェクトとして
サハリン1からサハリン9までの9つの校区で
大型の採掘プロジェクトが進行中。

そのうち、サハリン1とサハリン2は
ロシア政府と欧米と日本企業出資の共同プロジェクト。
ともに投資額は100億ドル(約1兆円)を超す。
サハリン1は米国のエクソンモービルや石油公団、伊藤忠商事、
丸紅などが参加する国際コンソーシアムが事業主体。
サハリン2は英国・オランダ系のロイヤル・ダッチ・シェルと
三井物産、三菱商事の3社が出資している。

日本のお父さん達がこの極寒の島で
黙々と開発プロジェクトに携わっていることは
案外知られてないんだよね。

資源貧乏国の日本にとっては
近隣でこの手の開発プロジェクトが進行中であることは
実に心強い話し。
ところが、ところが、この2つのプロジェクト、
あまりうまくいってないんですな。

まず、サハリン1。
推定可採埋蔵量は
◇原油:約23億バーレル
◇天然ガス:約17兆立方フィート

この開発プロジェクトは、
日本政府が石油公団などを通じて
1千億円を上回る巨額の税金を投じ、
将来、パイプラインを首都圏まで引いて
石油と天然ガスを送るという構想。
だが、パイプライン敷設にともなう費用分担をめぐって
官民が連携をとれず、プロジェクトは足踏み状態。
 
開発を主導するエクソンのレイモンド会長は
2005年11月に小泉首相と会談、
「このままでは中国に全量を売ることになる」と
最後通告を突きつけた。

確か、買い手は東京ガスを見込んでいたんだけど、
膨大なパイプライン建設費用に
東京ガスがビビって話しが流れかけている。
膨大な1千億の国費がすっ飛んでしまいそうな気配。

資源戦略の観点から
こんなことでいいのか日本政府よ!と言いたくなるね。

次に、サハリン2。
推定可採埋蔵量は
◇原油:約11億バーレル
◇天然ガス:約18兆立方フィート

サハリン北端の採掘現場から
サハリン南端まで約800キロのパイプラインを敷設、
そこから液化天然ガス(LNG)にして日本へ船で送り出す。

なかなか素晴らしい計画に見えるが
資材価格の高騰や自然環境保護の費用で
事業費が当初予定より
2倍近い200億ドル(約2兆3000億円)に跳ね上がった。

サハリン1と2ともに
プロジェクト推進はもたもたしていて
欧米や日本の企業はもとより、
ロシア政府の苛立ちはつのっている。

1は作ったと思ったら買い手が見つからず、
2は費用が2倍に跳ね上がった。

たとえば、2005年11月にこんなニュースが。


◆サハリン2事業費 負担増嫌う?
 露大統領 産業界、来日時の発言注視

 今月二十日のロシア・プーチン大統領の訪日を控え、
 サハリンなど極東のエネルギー開発に対する、
 産業界の関心が高まっている。
 プーチン大統領は、大手ガス・石油会社の首脳らと
 一緒に来日する予定であり、
 日本企業とも新たな協力関係を模索する見通しだ。

 とくにクジラ保護や資源価格の高騰で、
 総事業費が当初計画より倍増しそうな、
 原油・天然ガス事業「サハリン2」をめぐっては、
 プーチン大統領が事業費の増加を認めない意向を示したとされ、
 来日時の発言に関心が寄せられている。
 
 プーチン大統領は今月初旬のオランダ訪問で、
 サハリン2の事業主体の国際石油資本(メジャー)、
 ロイヤル・ダッチ・シェル首脳と会談。
 その中でプーチン大統領は、
 サハリン2で約二百億ドル(約二兆三千億円)に
 倍増する見通しとなった事業費を認めない意向を示した、
 とロシア紙が報道した。

   (産経新聞:2005/11/13)


さらに、2006年3月にはこんなニュースも。


サハリン2超過コスト、露政府がほぼ全額承認へ

 ロシア・サハリン沖の
 原油・天然ガス開発事業サハリン2を手がける企業連合、
 サハリン・エナジーのクレイグ最高経営責任者(CEO)は、
 ロシア政府がプロジェクトの超過コスト100億ドルの
 ほぼ全額を承認する、との見方を示した。

 サハリン2の契約では、
 シェルやパートナーの三井物産、三菱商事は、
 コストをプロジェクトの収入から回収できることになっており、
 超過コストはロシア政府の怒りをかっていた。

   (ロイター:2006/03/23)


ってなわけで、ロシア政府の苛立ちは頂点に達し、
プーチン大統領は腸捻転すら起こしかねない怒りで(笑)、
今回の国家統制強化の流れと相成ったわけですな。

このサハリンの開発プロジェクトは
完成して日本に輸入が始まれば
日本の石油と天然ガス輸入の1割はまかなえる量で
資源戦略の観点からは、かなり貴重なネタです。

いずれ、本店ブログの方で
特集でも組もうかと考えています。


関連資料リンク

天然ガス開発計画「サハリン2」、成功へ自信

資源エネ庁:サハリンプロジェクトの概要について


関連過去記事(本店ブログ)

対露外交と中国包囲網 その4
  ・・東シベリア石油パイプライン(前編)

対露外交と中国包囲網 その5
  ・・東シベリア石油パイプライン(中編)





テーマ:環境・資源・エネルギー - ジャンル:政治・経済

このページのトップへ

FC2Ad

プロフィール

ケイ

Author:ケイ
憂国と好奇心の30代男

マイブログ・メルマガ

 待避禁止!

 宇宙開発ニュース β版

 メルマガ:古今東西の名言

サイトマップ

 過去記事一覧

 過去記事一覧(本店ブログ)

最近の記事

カテゴリー

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。