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日米同盟とアーミテージ報告書 その3・・世界秩序と「中国管理」


     マイケル・グリーン.jpg


前回と前々回の続きです。

日米同盟とアーミテージ報告書 その1・・ジャパン・ハンド

日米同盟とアーミテージ報告書 その2
 ・・クリントン政権と同盟の漂流



今回は先日の2月16日に発表された、
アーミテージ報告書の第二弾について論評します。

この報告書の全文訳を探したのですがなかなか見あたらず、
しょうがないので各種報道からピックアップしたものを
以下に要約として掲載しておきます。
ちなみに項目はこちらで勝手につけたものです。


◆日米同盟-2020年を見据え、アジアを正しく導く

 
<日米同盟の強化>

 ◇日米同盟は2020年まで米国のアジア戦略の基盤であり続ける

 ◇日本によるインド洋やイラクへの自衛隊派遣を評価、
  ここ数年で、日米同盟は安全保障面で成熟した。

 ◇日本の安全保障面での貢献拡大のため、
  憲法改正論議や自衛隊の海外派遣を
  随時可能とする恒久法制定を歓迎

 ◇日本は自国防衛の領域拡大と防衛費増額が必要

 ◇日本は武器輸出3原則の撤廃検討が必要

 ◇米国は引き続き日本に「核の傘」を含む抑止力を提供


 
<安全保障>

 ◇日本のミサイル防衛の予算特別枠創設

 ◇日本のF22、F35など新型ステルス戦闘機の導入

 ◇日米による新型イージス艦の共同開発の検討

 ◇米軍と自衛隊の作戦面での連携強化。
  米太平洋軍司令部に防衛駐在官、
  統合幕僚監部に米軍代表がそれぞれ常駐。


 
<中国>

 ◇中国とインドという2つの大国が
  同時に台頭するという前例のないことがおきている。

 ◇中国は国内安定のためナショナリズムの利用を続ける公算が大きい

 ◇米中による地域の「共同管理」との考えも一部にあるが、
  これは米中関係を過大評価し、
  地域の同盟国、友好国との関係を損なう危険がある

 ◇東アジアの安定は日米中の3カ国関係の質にかかる。
  日米は中国に「責任ある利害保有者」となるよう促し、
  双方の利益となる分野で3カ国の協力を模索するべき。

 ◇中国の外交政策の重要課題はエネルギー資源の確保であり、
  その結果、海洋資源獲得競争などの摩擦を引き起こす。

 ◇日米は中国の増大するエネルギー需要により、
  原油価格の上昇などの影響を受ける。
  両国はエネルギーの効率化などでの協力する必要がある。


 
<台湾>

 ◇日米は2005年の2プラス2協議で
  「台湾海峡の争議は対話を通じて平和的に解決」を
  重要戦略目標の中に盛り込んだ。
  これは日米の2020年以前の指導原則であるべき。

 ◇米国は台湾の防衛を支援する義務があり、
  日本は米国の義務を理解し、同盟関係の下で
  台湾海峡の平和と安定を維持に協力する必要性がある。

 ◇台湾の民主化の成功は日米両国にとって重要なこと。


 
<朝鮮半島>

 ◇朝鮮半島で2020年までに南北統一が実現する見通しが高い。
  ただ、北朝鮮が核開発を続けている可能性もあり、
  日米はあらゆるシナリオに備えなければならない

 ◇北朝鮮の核開発問題は統一によってのみ、
  最終的に解決されるようにみえてきている。

 ◇韓国は日米両国と短期的には違いはあっても、
  共通の価値観や、経済的・安全保障上の利益も共有している。


 
<インド>

 ◇2020年にはインドが中国をしのぐ存在になる。

 ◇民主主義などの価値観を共有するインドと日米が
  戦略的パートナーシップを強化し、
  日米印3カ国の協力関係構築が必要。


 
<日本の常任理事国入り>

 ◇日本の国連安全保障理事会の常任理事国入りを支持する。
 
 ◇日本の常任理事国入りは、全ての側面での貢献なしに
  意思決定の主体になるのは不公平で問題があり、
  国連憲章第七章に基づく武力行使の責務を果たすべき。


以上です。

この第二弾報告書は今月の16日に発表されましたが、
本来、執筆者のアーミテージらは
去年9月の自民党総裁選の前に公表する予定でした。

しかし、アーミテージ自身が
CIA工作員漏洩事件で渦中の人となった結果、
ほとぼりがさめるまで発表を延期したことと、
安倍総理と親しいマイケル・グリーンが
総裁選前の安倍氏に無用のプレッシャーをかけるべきでないとして
アーミテージに進言し、
報告書の公表が遅れた経緯があります。

この第二弾報告書の特徴は、
第一弾が漂流していた日米同盟の再構築そのものを
訴えていたのに対して、
周辺諸国の状況とその対応にかなりの力点を置いていることです。

  日米同盟の再構築は成功した。
  今や、この同盟を用いてアジアや世界情勢を
  いかに安定させるかを考えるべき。

これが本題でしょう。

いわば前回が「基礎編」ならば
今回は「発展編」又は「応用編」というわけです。

さらにもっと端的に言うならば
この報告書の主題は「世界秩序の維持と中国管理」です。
大雑把に言えばそれ以外は枝葉といっていいでしょう。

以下、このメインテーマである「中国管理」の部分のみを
論評してみます。


台頭する中国をいかに「管理」するか?

この設問は日米の当局者が最も頭を悩ます問題でしょうし、
「国家戦略」を考える際に
これほど刺激的な知的遊戯はないでしょう。
いわば戦略家の腕の見せ所といった感じです。

報告書のこの命題に対する答えは、
ブッシュ政権の対中政策と
スタンスはほぼ同じと言っていいでしょう。

  日米は中国に「責任ある利害保有者」となるよう促す。

  と同時に、中国が「利害保有者」から逸脱する場合も想定し、
  常にリスクに備えておく必要がある。

責任ある利害保有者。
米国では「レスポンシブル・ステークホルダー」と言いますが、
これは2005年に当時のゼーリック国務副長官が
初めて使った言葉です。

  いかに中国を
  国際社会・現世界秩序の構成員に組み込んでいくべきか?

  クリントン政権時のような大甘な親中政策でもなく、
  かといって、中国封じ込めのような強硬策でもない。

  中国は敵でもないが、同盟国でもなく友好国でもない。
  さらに単なる傍観者であっても困る。

これがブッシュ政権の中国に対する見方ですし、
このアーミテージ報告書の発想です。

敵でもないけど、友好国でもない。
ハッキリしない発想ですし、
中道的といえば中道的ですが、実に分かりづらいですね。

たとえば、米国にとって台頭しつつある中国とは
かつてのソビエト連邦とどう違うのでしょうか?
この米中関係というものを
かつての冷戦期の米ソ関係と比較すると面白いです。

冷戦期の米ソ関係と現在の米中関係を比較するならば
大雑把に言えば2つのことが異なります。

 1,ソ連の政治力及び軍事力は世界を制するだけの力があった。
   さらに共産主義という世界秩序創設の理念をもっていた。
   しかし、中国にはそれがない。
   列強の一つ程度の政治力とアジアローカルの軍事力でしかなく、
   また、次の世界秩序を構成しうる理念を持っていない。

 2,冷戦が始まった当初、
   米国のGDPは全世界の70%を占めていた。
   しかし、現在は30%を切っている。

つまり、1「ソ連は巨大で強かったが中国はさほどでもない」
2「米国の力は冷戦期と比べて衰えている」

もし、米国が今でも圧倒的な国力を持っているならば、
中国を「責任ある利害保有者」などと生ぬるいことは言わず、
強硬的に米国流価値観への変革を強いるでしょう。

また、中国の力がかつてのソ連のように強大であるならば、
米国は眼前の脅威として積極的に対決姿勢を取るか、
あるいは逆に軟弱な融和態度になるでしょうね。
まあ、おそらく米国的価値観から言えば強硬対応となるでしょう。

いわば、かつての冷戦期と比較するならば
ソ連ほど中国は眼前の脅威ではなく、
また、米国も正面対決するほど力に余裕があるわけではない。

よって導き出される結論としては、

  中国に国際秩序の「責任ある利害保有者」となるよう促す。

  と同時に、中国が「利害保有者」から逸脱する場合も想定し、
  常に備えておく必要がある。

の、両面対応でいくということでしょう。

ただ、これは米国的発想であって、
日本も全く同一でいいのかというと
何とも言い難い部分があります。

私は、北米大陸に位置する覇権国家の米国と
アジアに位置する非核武装国家の日本では
自ずから中国に対する態度には温度差があっても
当然のことだと思っています。

ちなみに、このアーミテージ報告書が発表された際に
日本のマスコミ各社もいろいろと報じていましたが、
各社によって報じ方に違いがありました。

毎日・NHKなどは

 中国に対する「封じ込め策」などの強攻策は否定し、
 対話路線を重視する

これに力点をおいて報じていました。

しかし、アーミテージ報告書には
次のような一文もあります。

  米中による地域の「共同管理」との考えも一部にあるが、
  これは米中関係を過大評価し、
  地域の同盟国、友好国との関係を損なう危険がある

これはクリントン政権時の対中融和策、
日本頭越し外交の否定です。

アーミテージらのジャパンハンドは日米同盟の重視派であり、
これがあくまでもアジア政策の基本中の基本と考えています。

日米同盟をしっかりとさせ、
両国の緊密な関係を維持した上で
中国に対して利害保有者となるように促していく。
これがこの報告書の趣旨であり、
無原則な親中政策ではないということです。

それは「台湾」の項目を見ても明らかでしょう。

  米国は台湾の防衛を支援する義務があり、
  日本は米国の義務を理解し、同盟関係の下で
  台湾海峡の平和と安定を維持に協力する必要性がある。

日米両国による明確な台湾防衛宣言ですね。


さて、この報告書は
前回と前々回にも書いたように
日米両国に対する影響力は強大です。

一時期、猖獗したネオコンの力が衰えており、
次期政権が民主党になるにせよ共和党になるにせよ、
アーミテージらの中道的な発想が
米国のアジア政策の基本となっていくでしょう。



関連資料リンク

ジャパン・ハンド 春原 剛 (著)

日米同盟「深化の段階」 アーミテージ「予言」第2弾

空洞化する日米パイプ


関連過去記事

日米同盟とアーミテージ報告書 その2
 ・・クリントン政権と同盟の漂流


日米同盟とアーミテージ報告書 その1・・ジャパン・ハンド








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日米同盟とアーミテージ報告書 その2・・クリントン政権と同盟の漂流


         20060515n995f000_15.jpg


さて、前回の続きです。

日米同盟とアーミテージ報告書 その1・・ジャパン・ハンド


2月16日にアーミテージ報告書の第二弾が公表されましたが、
その第一弾は2000年10月に発表されました。

この時の執筆の中心メンバーは第二弾とほぼ同じで
リチャード・アーミテージ、ジョセフ・ナイ、
マイケル・グリーン、ジェームズ・ケリー、
ロバート・マニング、カート・キャンベル、
ポール・ウォルフォビッツ、などでした。

その時点では日本のマスコミ報道なども
さほど大きくは取り上げておらず、
注目したのは日米の政官界とよほどの事情通のみでした。

今から振り返ってみると
この第一弾の影響力の大きさが分かります。
ここに書いてあることはブッシュ政権の
対日政策の予言書みたいなものでした。

というわけで、
今回はこの第一弾の方を取り上げてみます。

まず、その内容を抜粋して載せておきます。


◇アーミテージ・レポート(INSS Special Report)

 日米-成熟したパートナーシップに向けて

 「総論」

 アジアは歴史的な変換期を迎え、
 米国の政治・経済、安全保障などに
 ますます大きな比重を占めることになる。
 世界人口の五三%にのぼるアジアは経済力もすでに二五%に達し、
 米国とは年間六千億ドルもの巨額の輸出入が行われている。
 しかし、政治的に見て日本、オーストラリア、
 韓国などが民主主義価値を表現しているのに対し、
 中国は社会、経済変動の最中にあり、その結果は不透明だ。

 現在の欧州では
 大きな戦争が少なくとも三十年ぐらいは予想できないが、
 アジアでは危機が去ったとは言い難い。
 米国を巻き込んだ紛争は朝鮮半島および台湾海峡で
 いつ起きても不思議でない状況だ。
 インド大陸も衝突が心配され、
 どちらの場合も核爆弾使用という危険をともなっている。

 日本は第二次大戦後、成熟した民主主義国家として
 地域安定と信頼醸成に大きく寄与してきた。
 そうした日本との関係は今までにないほど重要になった。
 われわれは二十一世紀においても継続する日米関係構築のため、
 双方に重要な六つの提案を行う。

 「冷戦後の日米漂流」

 日米はともに西側同盟の重要なパートナーとして冷戦に勝利し、
 民主主義新時代への扉をアジアにおいて開き、
 経済繁栄への手助けをした。
 しかし、同時に日米は(冷戦勝利で)ともに戦うべき相手を失い、
 実際にはまだ脅威や危険が去っていないのに漂流した。

 これによって日本は欧州連合のような機構を
 アジアに築くアジア化というアイデアにとりつかれ、
 米国も冷戦終了で経済問題だけを優先することになった。
 その結果が九〇年代の経済問題を中心にした日米の衝突だった。
 日米が両国関係の重要性に気づいたのは北朝鮮ミサイル実験であり、
 台湾海峡の緊張であり、九六年の日米安全保障宣言に結びついた。

 だが、米国は明らかに対中関係により重点を置き、
 日米ともにせっかくの安全保障宣言を
 フォローアップする努力を怠った。
 実際、日米が行った安全保障問題における対話は
 北朝鮮問題に限るものだけだった。
 こうした日米の無関心、不確実、方向性の無さから
 今度は日米同盟を活性化するときがやってきた。

 米国において
 「日本は脱落者でもう終わった」とする見方の人たちには、
 「八〇年代の米国を過小評価した当時の日本と
 同じ過ちを犯すことになる」と戒め、
 日本の潜在力を高く評価しなければならない。

 「政治」

 日本の政権政党である自民党は
 過去十年、党内分裂や伝統的な利権集団との衝突などを繰り返し、
 いまや衰える力を維持することだけに精力を尽くしている。
 これに対し野党も十分に練った信頼に足る政策提案ができず、
 結果として自民党が政権にしがみつくという状況になっている。

 しかし、容赦ない国際経済のグローバル化によって
 経済の構造改革を迫られた日本の政治は
 いずれ変革を余儀なくされるだろう。
 それは“鉄の三角関係”と呼ばれた政治家、企業家、
 官僚による支配構造を破壊し、権力の拡散を生み出すことになる。

 こうした権力構造の変動が
 日米関係を再活性化するチャンスを引き出す可能性がある。
 イデオロギー上の対決が軸だった政治は終わり、
 より現実的な視点を持った若い世代の政治家の登場によってのみ、
 新たな取り組みが可能だ。

 いまの政権指導部が改革に取り組むとは考えられない。
 長期的視野をもって短期的な苦痛を受け入れるという政治は
 いまの議会状況では難しいからだ。

 逆に若い世代は
 経済力だけで日本の未来は切り開けないと考えており、
 国家主権への新たな尊厳に目覚めている。
 今後の日米関係を考慮する場合、
 この意識の変化は大きな意味を持つ。

 「安全保障」

 二十一世紀に向けて日米は
 早急に安全保障の共通認識と対応を確立しなければならない。
 明確で実体ある日米関係こそが、
 アジアにおける紛争を未然に劇的に抑止するからだ。
 新たな「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)はその意味で、
 同盟における日本の役割拡大へのステップと見なすべきだ。

 日本の集団的自衛権否定は、同盟関係の制限となっている。
 集団的自衛権への制限を日本が無くすことで、
 緊密でより効果的な両国の協力は可能となるのだが、
 それはあくまで日本国民だけが決定できることだ。
 米国は日本の国内事情を考慮しなければならない。
 だが、日本がより平等な同盟関係を目指し、
 貢献することを歓迎すると、米国は明確にしなければならない。

 日米は、
 (大西洋における)特別な同盟関係である米英をモデルにすべきだ。
 そのために次のような点が考慮されなければならない。

 (1)米国は「尖閣諸島を含んだ日本防衛に
    強い責務を持つ」ということを明確にし、
    日本も対等な立場で同盟を支える
 (2)ガイドライン実施に向けて法制度を整備する
 (3)両国三軍はより緊密な協力体制をとり、
    国際テロや犯罪にも対応できるよう協力関係を具体的に定義する
 (4)一九九二年の国連平和維持活動協力法は
    日本の海外活動を制限しており、
    日本はその制限を排除し平和維持活動や人道的任務に参加する
 (5)危機対応能力を維持できるという条件で
    日本の米軍基地をできるだけ削減する。
    九六年の日米特別行動委員会(SACO)による沖縄合意を
    早急に実施する
 (6)米国の防衛技術(軍事機密)の日本提供を優先する。
    米政府は米軍事企業が日本企業と
    戦略的な同盟関係になるよう奨励する
 (7)日米ミサイル防衛協力の幅を広げる。

 こうした日米関係の強化については
 日米双方で健全な議論が行われるべきである。
 米政府、議会とも日本の政策が米国の政策と
 すべての面で同じではないことを理解しなければならない。
 「バードンシェアリング(負担の共有)」ではなく
 「パワーシェアリング(力の共有)」へと進化する時が来たのである。

 「情報」

 東アジアにおける、
 日米への脅威と危険の性格が変転するのにともない、
 両国の情報収集面での統合と協力が必要とされる。

 同盟国とはお互いの情報を持ち寄り
 それぞれの分析を交えてお互いの違いを確認するとともに
 政策において合意しなくてはならないからだ。

 情報協力面で米政府は次のような点を留意すべきだ。

 (1)国家安全保障担当の大統領補佐官は
    日本との情報協力を優先しなければならない
 (2)米中央情報局(CIA)長官は
    日本の国家安全保障問題に配慮して
    協力の幅を広げなければならない。
    例えば違法移民、国際犯罪、国際テロ面に対処するための
    両国の協力強化だ
 (3)米国は日本が欲しているスパイ(情報)衛星開発の
    手助けをすべきだ
 (4)米国は政策面で日本との情報網緊密を優先させる。

 一方、日本側は

 (1)極秘情報を守秘するための法制化に向けて国民の支持を得る
 (2)情報共有によって実施する政策決定のプロセスを
    明らかにする

 という点を留意する。

 「外交」

 米国は日本外交を
 単なるチェックブック外交というイメージで見るのはやめ、
 日本も国際的な指導力というのは
 援助者の役割を超えたリスクを伴うものであることを
 自覚しなくてはならない。
 米国は日本の国連安全保障理事会入りを支持するが、
 日本はそのさい集団安全保障には
 義務も生じることを念頭に置くべきだろう。

 「結論」

 ペリーの黒船来航以来、百五十年に及ぶ日米関係は
 善きにつけあしきにつけアジア太平洋の歴史を形成してきた。
 二十一世紀にはいってもそれは変わらないだろう。


以上です。

まず、これを見て思うのですが、
この報告書を作成した当時のアーミテージやナイが
90年代の「日米同盟の漂流」に対して
いかに危機感を抱いていたかが分かります。

総論の次に「冷戦後の日米漂流」という章を立ててますが、
ある意味、第一弾のアーミテージ報告書は
この「漂流期」に対する反省文と言ってもいいでしょう。

 日米は(冷戦勝利で)ともに戦うべき相手を失い、
 実際にはまだ脅威や危険が去っていないのに漂流した。

 これによって日本は欧州連合のような機構を
 アジアに築くアジア化というアイデアにとりつかれ、
 米国も冷戦終了で経済問題だけを優先することになった。
 その結果が九〇年代の経済問題を中心にした日米の衝突だった。

 だが、米国は明らかに対中関係により重点を置き、
 日米ともにせっかくの安全保障宣言を
 フォローアップする努力を怠った。
 実際、日米が行った安全保障問題における対話は
 北朝鮮問題に限るものだけだった。

日本は「東アジア共同体」のような幻覚を夢見て、
一方の米国は経済のみにしか目が向かず、
中国優先のアジア政策を行いました。

行間から見えるのは
クリントン政権の中国重視政策への批判ですね。

1998年にクリントン大統領は
日本を素通りして訪中し、
江沢民主席との首脳会談を行いました。
これが当時の日本の朝野にどれだけの衝撃を巻き起こしたことか。

この報告書が作成されたのは2000年10月。
まだクリントン政権末期の頃ですが、
ここに彼ら「ジャパン・ハンド」たちの
揺らぐ日米同盟への危機感がにじみ出ています。


次の「政治」という章では
80年代後半から90年代にかけての
日本政界のバタバタぶりを描写してます。

あの政治改革の嵐の時期ですが
今思えば、あれはなんだっただろうと思ってしまいます。

 イデオロギー上の対決が軸だった政治は終わり、
 より現実的な視点を持った若い世代の政治家の登場によってのみ、
 新たな取り組みが可能だ。

 若い世代は
 経済力だけで日本の未来は切り開けないと考えており、
 国家主権への新たな尊厳に目覚めている。
 今後の日米関係を考慮する場合、
 この意識の変化は大きな意味を持つ。

若い世代の政治家に期待していますね。

「より現実的な視点を持った若い世代の政治家の登場」
「若い世代は国家主権への新たな尊厳に目覚めている」
「この意識の変化は大きな意味を持つ」
ここらへんは同感としかいいようがありません。

商人国家・無ポリシー国家の時代は
終わったということでしょうか。


次に「安全保障」の部分です。
ここがこの報告書のメインです。

 明確で実体ある日米関係こそが、
 アジアにおける紛争を未然に劇的に抑止する

 日本の集団的自衛権否定は、同盟関係の制限となっている。
 集団的自衛権への制限を日本が無くすことで、
 緊密でより効果的な両国の協力は可能となる

 日米は、特別な同盟関係である米英をモデルにすべきだ。

 米国は「尖閣諸島を含んだ日本防衛に強い責務を持つ」
 ということを明確にする。

 国連平和維持活動協力法は日本の海外活動を制限しており、
 日本はその制限を排除する。

 米国の防衛技術(軍事機密)の日本提供を優先する。

 日米ミサイル防衛協力の幅を広げる。

この報告書で一番よく知られているのが
日本の集団的自衛権の縛りを批判した部分と
米英同盟を日米同盟のモデルに、という部分です。

「米英同盟をモデルに」は
米政界に対して、

  日本を同盟国として対等に扱え

  いつまでも小さい弟のように扱うな

との提議でしょうし、

日本政界に対しては、

  いつまでも子供のように米国の保護に甘んじるな

  引きこもりの時代は終わった。

と言うことでしょうね。

さらに、「米国は尖閣諸島を含んだ日本防衛に
強い責務を持つということを明確にする」とありますが、
これは1996年に当時のモンデール駐日大使が
「尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲外だ」と発言して、
日本の保守層を憤慨させたことへの反省です。

あの発言が中国を大いにつけ上がらせたのですが、
アーミテージ報告書では
あえて「尖閣諸島を含んだ日本防衛」という一文を入れて
尖閣諸島は日米同盟の守備範囲であることを明確に謳っています。


次の「情報」の章では
日米間の情報リンクの強化をうたってますね。
これはもう現実に進行中です。
いささか行き過ぎるほどに進行中です。

最後の「外交」では、

 米国は日本外交を
 単なるチェックブック外交というイメージで見るのはやめ、
 日本も国際的な指導力というのは
 援助者の役割を超えたリスクを伴うものであることを
 自覚しなくてはならない。
 米国は日本の国連安全保障理事会入りを支持するが、
 日本はそのさい集団安全保障には
 義務も生じることを念頭に置くべきだろう。

もう、そのまんまという感じです。
おそらく日本の保守層が書いても
全く同じ文言を使うでしょう。


全体を通して言えるのは
90年代の日米漂流期への反省と
今後の同盟堅実化、普通の国同士の対等な同盟関係、
そして同盟の機関化でしょう。

地政学的な位置づけ。
そして同じ自由主義・民主主義の理念を持つ国家と国家。
「利害」と「理念」を共有する日米同盟の堅持が
日米にとって最も良き選択肢であること。

まあ、ご覧のように
この報告書が提起した政策とその方向性は
2001年からのブッシュ政権でそのまま採用されています。
2000年初頭の日米関係を定めた報告書と言っていいでしょう。

さて、最後に、
当時の産経の正論欄を載せておきます。
田久保忠衛さんがこの報告書を論評しています。


◇【正論】田久保忠衛
 米大統領選 新しい日米同盟目指すとみていい

 クリントン政権の対中、対北朝鮮外交には
 随分と冷や冷やさせられた。
 クリントン氏自身がブッシュ元大統領の対中政策が
 生ぬるいと批判していたにもかかわらず、
 ホワイトハウス入りしてすぐ
 最恵国待遇(MFN)を中国に与えてしまった。
 日本を素通りして中国を訪れたのは怪しからんと
 腹を立てるのは大人げないが、
 それにしても大統領は先方の注文に応じて
 「三つのNO」を言うなど軽率すぎはしないか。

 そこで私が重視しているのは
 アーミテージ氏が中心になって作成し、十月に公表された、
 「日米-成熟したパートナーシップに向けて」と題する報告書だ。
 
 この報告書は欧州とアジアを対比し、
 欧州では向こう三十年間大規模な戦争はないが、
 アジアには朝鮮半島、台湾海峡、
 インド・パキスタンに軍事的危険が存在し、
 インドネシアは東南アジアの政治的混乱の
 引き金になるかもしれないと見る。
 ロシアの軍事的脅威は
 当分あり得ないとの前提に立っているのであろう。
 このような分析に立てば、
 アジアの安全弁になるのは日米関係でなければならぬ。
 報告書が強調しているのはこの点だ。

 特筆大書したいのは、
 この報告書が一九九六年の「日米安保共同宣言」を棚ざらしにした、
 日本の既成政治家に愛想を尽かし、
 「日本国民は国旗・国歌を法制化し、
 尖閣諸島の領有権といった領土的主張に関心を集中し、
 民族国家の主権と高潔さを改めて尊重する旨を明らかにしている。
 こうした変化から生まれる意味は大きい」と指摘している個所である。
 国家の基本である防衛を軽視し、
 自主独立の精神を失った日本に
 苦々しい思いを抱いてきた私は新鮮な驚きを感じた。

 アーミテージ報告は、
 米国と英国との関係をモデルにして
 同じような関係をアジアに構築しようではないかと提案している。
 まことに情けないことだが、
 米国からこのような呼び掛けを受けなければならないほど、
 我が祖国はだらしのない状態になっているのだ。

   (産経新聞 2000/12/17)


私自身、ブッシュ政権の対外政策は
いろいろと異論や批判したいことは多々ありますが、
こと対日政策に関して言えば
その前のクリントン政権と違って、実に安定感がありました。
安心して見てられました。

それは「小泉=ブッシュ」の個人的関係も寄与したのでしょうが、
このアーミテージ報告書と
それを作成した「同盟の庭師たち」の奮闘も大きいでしょう。


次回は、先日に発表されたアーミテージ報告書第二弾を取り上げます。



関連過去記事

日米同盟とアーミテージ報告書 その1・・ジャパン・ハンド









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日米同盟とアーミテージ報告書 その1・・ジャパン・ハンド


       アーミテージ前米国務副長官.jpg


日米同盟「深化の段階」 アーミテージ「予言」第2弾

 現代にも「予言」書と呼ぶことができる文書があるようだ。
 日本が今後、歩むことになる道を示す文書だ。

 リチャード・アーミテージ元米国務副長官ら、
 超党派の外交・安全保障専門家グループは16日、
 ワシントンで記者会見し、
 「日米同盟-2020年を見据え、アジアを正しく導く」
 と題した報告書を発表した。

 2000年10月のいわゆる「アーミテージ・ナイ報告」の続編だ。
 7年前の報告書は
 「日米同盟のモデルは米英同盟であるべきだ」として
 日米同盟の強化を提言した。

 「アーミテージ・ナイ報告」が注目されるのは、
 その提言内容が、実際の米国の対アジア政策に反映されるからだ。
 前回の報告書は、ブッシュ政権の対日政策の「青写真」となった。

 第2弾となる今回の報告書の執筆者には前回同様、
 米国を代表する日本研究者らが名を連ねている。
 共和党側からアーミテージ氏や
 マイケル・グリーン前国家安全保障会議アジア上級部長らが、
 民主党系では、クリントン政権で国防次官補を務めた、
 ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授らが参加した。

 ブッシュ政権が残り任期2年となる中、
 超党派の日本専門家らによって策定された報告書は、
 再び次期米政権の対日政策に反映される可能性が高い。

   (iza!)


アーミテージ報告書の第二弾が発表されました。
数回に渡ってこの提言について
春原剛氏の「ジャパン・ハンド(文春文庫)」という本を参考にしながら、
書いてみたいと思います。

まず、何故、この報告書がかくも重要視されるのか?
今日はこれについて書きましょう。

執筆の中心メンバーの4人、
リチャード・アーミテージ、マイケル・グリーン、
ジョセフ・ナイ、カート・キャンベル、
彼らは現政権の高官などではなく、今は在野の人物にすぎません。

しかしながら、新聞各紙が
この報告書についてこぞって報道し、
マスコミ以上に日米の政官界がこの報告書に注目するのは、
執筆メンバーが米政界における「ジャパン・ハンド」の大物だからです。

ジャパン・ハンド。
知日派とでも訳すべきでしょうか。
米国の対日政策を手中におさめる人物とでもいうべきでしょうか。

アーミテージとグリーンは共和党、
ナイとキャンベルは民主党ですが、
彼らは属する党派こそ違えど、それぞれに密接な関係にあり、
細かな差異こそあれど、その政策の根本は共通しています。

現在、米国の対アジア外交は党派の壁が急速に薄れつつあり、
民主・共和両党の政策に大きな違いがなくなっています。
アジア政策の超党派化です。

この4人を代表とするジャパン・ハンドの面々は
米国の対日政策に対して大きな影響力を持ち、
ある者は時の政権の高官となって政策を左右し、
ある者は在野のシンクタンクの属して活発な提言を行い、
また、それぞれが党派の壁を越えて
研究会などで意見の交換を行っています。

よって、この人物達の報告書は大きな注目を集めるわけです。
前回の2000年に提出された第一弾のアーミテージ報告書も
この7年間を振り返ってみるならば
日米両国の政策に大きな影響を与えています。


さて、個々の人物について解説しておきます。

まず、中心人物のリチャード・アーミテージ。
第一期ブッシュ政権の国務副長官です。
日本の報道番組のインタービューなどでもよく登場しますね。

第一期ブッシュ政権において米国務省のアジア外交を統括し、
パウエル国務長官の片腕的存在でした。
自他共に認める日米同盟の守護神的存在。
小泉=ブッシュの日米蜜月時代の立役者です。

アナポリス海軍兵学校を卒業後、
ベトナム戦争に従軍し、数々の武勇伝を残しています。
海軍特殊部隊(SEALS)の隊員だったという噂もありましたが、
後に米国務省のサイトで否定しています。

退役後は、後に大統領候補となったボブ・ドールの秘書を経て、
1981年にレーガン政権の国防次官補代理、
1983年からは国防次官補を務めました。

米共和党知日派の重鎮であり、
彼の徒党は俗に「アーミテージ・スクール」と呼ばれています。

在野の人となった現在も彼の影響力は大きく、
その人脈を駆使して日米関係に影響を与えています。

次に、マイケル・グリーン。
この人の経歴はかなり異色です。

1961年生まれ。
日本に留学し、静岡県の高校で英語を教え、
東大で学びました。

1986年に日本政界の研究のため再来日し、
5年間ほど日本に滞在しました。
まず、岩手日報の記者となり、
その後、椎名素夫議員の秘書を二年間務めました。

やがて、日米安保の専門家として米政界で頭角を現し、
クリントン政権では国防省の対日政策顧問として
「日米防衛協力のための新指針」の策定に関与しました。

ブッシュ政権では大統領補佐官、
国家安全保障会議(NSC)の上級アジア部長に抜擢され、
2005年12月に政権を去るまで
アーミテージ国務副長官やケリー国務次官補らと共に
ブッシュ政権の対日政策を仕切りました。

彼は大統領補佐官時代に
当時の安倍官房長官と親交を結び、
小泉政権末期での北朝鮮によるミサイル乱射事件などでは
シーファー駐日米大使らと共に
日米連携のパイプ役となりました。

また、グリーンは
安倍首相の政権公約「日本版NSC」の
米側の指南役でもあります。

三番目にジョセフ・ナイ。
「ソフト・パワー」なんて言葉が有名で
政治家と言うよりは学者として知名ですね。
民主党の知日派の大御所的存在です。

カーター政権で国務次官補、
クリントン政権では国防次官補と国家情報会議議長を務め、
1995年に「ナイ・イニシアティヴ」と呼ばれる、
「東アジア戦略報告」を作成しました。

この「東アジア戦略報告」が土台となり、
「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」が策定され、
クリントン政権下で漂流しかかっていた日米同盟の立て直しに
奔走しました。

2000年に発表されたアーミテージ報告書第一弾は、
米国では「アーミテージ・ナイ報告」と
二人の名前を並記しています。

最後に、カート・キャンベル。
ジョセフ・ナイの門下生的存在です。

元来は対ソ連政策の専門家でしたが、
ナイに見いだされ、対日政策の研究者へと舵をきりました。

クリントン政権では国防次官補代理となり、
ウィリアム・ペリー(国防長官)やジョセフ・ナイが政権を去った後、
唯一の日本専門家として対日政策を切り盛りし、
とかく日米関係が冷却しがちで、
中国重視派が幅をきかせていたクリントン政権において
孤軍奮闘していた人物です。

米国のマスコミからは
「クリントン政権下で唯一、
日本のことを気にかけている政治任命者」とも呼ばれました。

おそらく、次の大統領選で
民主党から大統領が誕生した場合は、
この人物が対日政策の中心となるでしょう。


この4人に共通するのは「日米同盟の重視」です。

価値と利害を共有する世界で最も重要な同盟関係。
それが彼らの日米同盟に対する見解です。

彼らジャパン・ハンドの面々は
しばしば自らを「庭師(Gardener)」に喩えます。
「同盟」という庭園を整備し、
丹念に土を耕し、肥料を与え、雑草が生えれば取り除き、
地道に作業をする日米同盟の庭師的存在というわけです。

春原剛著「ジャパン・ハンド」には
カート・キャンベルのコメントが載っています。

  「同盟には
  自動的に作動するスプリンクラーもなければ
  便利な芝刈り機もない。
  ただ、庭師による地道な努力が求められている」

戦後半世紀以上続いた日米同盟は
冷戦終結後にその存在意義を見失い、
「漂流」と呼ばれるまでの危機的状態となりましたが、
今や復活を遂げ、小泉政権下では最高の蜜月状態となりました。

それが日本にとって良きことなのか否か?
各人によって見解は分かれるでしょうが、
これを維持しようという熱意を持った人々の努力と奔走によって
同盟関係が支えられてきたのも事実です。


さて、次回はアーミテージ報告書の内容について論評します。



参考資料リンク

ジャパン・ハンド 春原 剛 (著)








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ネットと選挙戦術・・米国と韓国の事情


  cnn.hillary.jpg


今日は短めに書きます。

まずは先月末のニュースからどうぞ。


米大統領選 ネット選挙戦、到来?
  ヒラリー流戦術、対話にフル活用

 2008年米大統領選に向け始動した、
 ヒラリー・クリントン上院議員(民主)が、
 テレビや新聞など既存のメディアを使わず、
 インターネットを出馬表明の場に選んだことが、話題を呼んでいる。
 27日にはアイオワ州入りし、
 いよいよ遊説を開始したクリントン氏だが、
 長く選挙戦の行方を左右する、
 重要なメディアとして君臨してきたテレビに代わり、
 インターネットがその座につくかどうか。
 今回の選挙は、「ネット政治」の本格的な幕開けとなりそうだ。

 ジョン・エドワーズ元上院議員、
 バラク・オバマ上院議員が相次いで大統領選への出馬表明を行った後、
 クリントン氏の出馬表明に全米のメディアの注目が集まっていた。
 しかしクリントン氏は結局、
 記者会見や集会などの従来の形ではなく、
 自らのウェブサイトを使い、
 ビデオ声明を流す形で20日、出馬表明を行った。

 サイト上、赤いスーツ姿で登場したクリントン氏は
 「あなた(YOU)と会話を始める」と切り出した。
 米タイム誌が2006年の「今年の人」に選び、
 流行語ともなった「あなた」、
 つまりインターネットを介して発言し、
 行動を始めた個々の人々を強く意識したメッセージだった。

 同氏は引き続いて3日連続で、
 支持者からの質問に答える「対話集会」をネット上で開催。
 さらに、「ヤフー・アンサーズ」
 (質問を投稿し、不特定多数からの回答を得るウェブサイト)に、
 同氏の長年のテーマである医療保険改革について
 「医療改革のために米国は
 何をしなければならないと思いますか」と投稿し、
 約3万7000件の回答を集めた。

 AP通信によると、こうした一連の作戦で、
 すでに約15万人がウェブサイト経由で
 支持者として登録したという。

 エドワーズ、オバマ両氏ももちろん、
 インターネットに出馬のメッセージを流すなど、
 ネットへの対応には気を配っている。
 しかし、クリントン氏の場合、
 思い切って従来のメディアへの対応を切りつめ、
 ネット最優先の姿勢を示す。

 米紙ウォールストリート・ジャーナルはこうした戦略を、
 「大統領選での新たな、そして最も重要な戦場の一つ、
 “インターネット予備選”で成功を収めた」と評価している。

 米歴代の指導者は、
 いかにメディアを制するかに多大な努力を払う。
 フランクリン・ルーズベルト大統領は、
 「炉辺談話」と題した毎週のラジオ演説で国民の支持を獲得、
 1960年のケネディ大統領の当選を決定づけたのは
 テレビ討論会の印象だった。
 米国政治におけるインターネット戦略は、
 1990年代末から始まったとされ、
 04年大統領選では、民主党予備選に立候補した、
 ハワード・ディーン元バーモント州知事が、
 ブログ活用やネット経由での資金集めで
 一時旋風を巻き起こしている。

   (産経新聞)


ネットと政治の関係に関しては私は前々から興味を持ってまして、
何度か過去記事でも書いたことがあります。

米国:幻の構想「政策分析市場」・・実にWEB2.0的ではあるまいか?

ユーチューブが選挙を左右する!?・・米国の最新選挙事情

韓国:盧武鉉のネット操作と世論誘導
 ・・「ポータルは政権に掌握された」


上記ニュース中でも
2004年の米大統領選挙において
民主党予備選でハワード・ディーン候補が
ネットを駆使した選挙戦術を取ったことが触れられてますが、
ディーンの手法はあくまでも
サイトとメールを使って選挙資金と選挙ボランティアを
かき集めることに主眼をおいたものでした。

その意味では、2004年時点では
ネットは選挙戦術を補完するツールの一つに過ぎませんでした。

しかし、2008年の大統領選挙は違うと言われています。
もはや一部の新しい物好きが行う選挙戦術でも何でもなく、
選挙の主力兵器そのものになるでしょうね。

米国メディアは
「2008年はYouTube選挙の年になる」と予測しています。

動画を主体とし、サイト上の動画にて自らの主張を伝え、
また、対立候補へのネガティブ攻撃も
動画にて行うという手法です。

ヒラリー以外でも、同じ民主党のオバマなども
積極的にネットと動画を駆使しており、
自身の選挙用のSNSもすでに立ち上げています。

まあ、ここらへんの選挙事情は
日本とは全く違いますね。
日本政界はネットの選挙利用に関しては
かなり保守的ですから。
それが良いのか悪いのかは別問題ですが・・。


さて、米国と並んで
ネットが選挙に強大な影響を与えているのが韓国です。

現在の盧武鉉大統領の大統領選での勝利は
ネットのおかげといっても過言ではありません。
選挙戦術にネットを駆使しつつ、彼は大統領の座を射止めました。

盧武鉉政権:誕生前夜 その2・・ネットと選挙(前編)

盧武鉉政権:誕生前夜 その3・・ネットと選挙(後編)

その韓国も今年末に大統領選挙が行われる予定で
各候補者は早くもネット上でしのぎを削っています。

韓国でも主力兵器はやはり動画です。
韓国ではネット上の動画はUCCと呼ばれています。
User Created Contents(使用者製作コンテンツ)の略です。

韓国では動画サイトが大流行しており、
YouTubeのような投稿サイトも多く、
その中でも「パンドラTV」というサイトが人気です。

ちなみに、このパンドラTVには
ネットのことになると鋭い盧武鉉が
「希望チャンネル」という大統領公式動画コーナーを開き、
記者会見や公務の様子を撮影した映像を流しています。

この画像が「希望チャンネル」ですね。

    nomu.jpg


ノム氏はこういうとこは無駄に敏感な男ですから(笑)

先月下旬、ソウル市内で
「UCCを活用した第17代大統領選挙戦略説明会」が開かれ、
各大統領候補の選挙参謀や
各党の選挙関係者が多数つめかけました。

その説明会では動画サイト運営会社により、
以下のような講義が行われたそうです。

  「人の悪口を言ったり、
  駐車違反している場面が撮られたら10万票マイナス」

  「公の場で居眠りする場面は致命的。
  数百万人のユーザーが携帯とデジカメで
  あなたの活動を動画に収めてサイトにアップするだろう」

  「今度の大統領選挙は、
  一言でUCC選挙といっても過言ではない」

各選挙参謀達は熱心に聞き入っていたそうですね。


さて、米国と韓国の
選挙とネット事情について簡略に書いてきました。

今年末の韓国大統領選挙。
そして米国の大統領選挙。
いかなる「ネット・ウォーズ」が展開されるのか、
興味津々で観測していきたいと思っています。



関連資料リンク

米大統領選:ネット戦略を進化させる両陣営

FPN:大統領選における各候補者のインターネット戦略

韓国で動画投稿サイトが大ブーム・スター誕生&大統領も投稿


関連過去記事

中国:ウィキペディアの規制解除とその思惑

米国:幻の構想「政策分析市場」・・実にWEB2.0的ではあるまいか?

ユーチューブが選挙を左右する!?・・米国の最新選挙事情

中国政府:ネット上の動画も規制へ・・動画は「金盾」の盲点か?

政府:情報ポッドキャストの配信開始・・内容次第だね

韓国:盧武鉉のネット操作と世論誘導
 ・・「ポータルは政権に掌握された」










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六者協議と中東情勢・・米朝のパワーバランス


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米高官が北との合意を批判=政権内にも深刻な亀裂-Wポスト

 15日付の米ワシントン・ポスト紙は、
 エリオット・エーブラムズ米大統領副補佐官(国家安全保障担当)が
 北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議での
 合意内容を批判する電子メールを
 政権内の関係者に送付していると報じた。
 今回の合意をめぐっては
 強硬派から「米は譲歩しすぎた」との批判が強く、
 同紙の報道が事実とすれば
 政権内部にも深刻な亀裂が生じていることになる。
 
 同紙によると、同副補佐官は電子メールの中で、
 今回の合意が各省庁の担当者による綿密な精査を経ておらず、
 多くの主要な点が最高レベルで決まったと不満を表明。
 特に北朝鮮のテロ支援国家指定解除に触れた部分について
 懸念を表明しているという。  

   (時事通信)


昨日に続いて第二弾です。

六者協議の合意内容は世界に波紋を投げかけてますが、
おそらく一番これを批判しているのが
日本の世論じゃないかと思います。

特に北朝鮮が保有している核兵器の廃棄に関して
全く不透明なことが批判されています。

北朝鮮の十数個の核は
日本と米国では受ける脅威の度合いが違います。
地理的に近く、核という抑止力を持ってない日本にとっては
数個の核とて現実の脅威です。
ここが日本と米国の感覚の差でしょう。

さて、前日に今回の合意と米国の譲歩について論じましたが、

六者協議:北朝鮮の外交勝利と米国の譲歩

私はやはり、米国の譲歩の背景には
混沌の中東情勢があると思います。

現在、米軍がイラクにて泥沼にはまっていることは
ご存じの通りですが、
実はアフガン情勢も悪化しています。

現地の2万数千の米兵と
パキスタン側から越境してくる、
タリバン兵との争闘が激しさを増しており、
予断を許さない状態になっています。

アフガン駐留米軍はイラク情勢の悪化に伴い、
1200人をイラクへ移動させる予定ですが、
ゲーツ国防長官はその移動時期を遅らせる意向のようです。

まさに、こっちに兵力を回せばあっちが足らず、
あっちに回せばこっちが足らず、
米軍の兵力過小と国力の減衰が露呈したかっこうです。

そして、それにプラスしてイラン情勢の緊迫化です。
以下のようなニュースが流れてきました。


イランの核保有阻止は困難
 外交解決に懐疑的-EU内部文書

 13日付の英紙フィナンシャル・タイムズによると、
 イランの核開発問題で、
 同国の核兵器保有を阻止するのは困難だとの分析を
 欧州連合(EU)が内部文書の形でまとめたことが分かった。
 
 内部文書はまた、
 交渉による解決に懐疑的見通しを示すとともに、
 「経済制裁のみではイランの核問題は
 解決できないだろう」と指摘している。  

   (時事通信)


経済制裁による解決は困難。
じゃあどうすればいいのか?

結論は2つですね。
諦めるか、軍事力で叩くか、
このどちらかです。

イランの核開発に最も神経を尖らせている国はイスラエルです。
イスラエルは欧米による対イラン交渉が
望ましい結果をもたらさないと判断すれば
間違いなく爆撃や破壊工作等の実力行使にでるでしょうね。

イスラエルは1981年のバビロン作戦で
イラクのオシラク原子力発電所を爆撃で破壊しましたが、

イスラエル、イラク原子炉を空爆・・1981年「バビロン作戦」

イランはこの教訓に学んで核施設を複数に分散し、
さらに地下に堅牢に作っています。

これを破壊するとなると
一定規模の軍事行使が必要となり、
バビロン作戦の時のような14機の戦闘機で済むとは思えません。
下手をすると核攻撃すら行いかねません。

そうなれば中東情勢の混乱は必至であり、
制御不可能な事態に突入しないとも限りません。

また、イスラエルのみならず、
イランの核開発はドミノ倒しのように
周辺諸国の核開発に波及する可能性があります。
すでにエジプト・サウジ・ヨルダンがこれを表明しています。

米国はこれらの事態を恐れており、
また、国内の強力なユダヤロビーの政治工作もあって
イラン攻撃に傾きかけている徴候が見られます。

ここ数週間ほど、
イラク情勢へイランが介入しているとの報道が増え、
また米政府もこれを声高に非難しています。

どこまでが真実でどこまでが情報工作かは分かりませんが、
開戦への雰囲気は次第に醸成されつつあります。

とまあ、中東情勢がこんな調子です。
米国の本音としては、
「北朝鮮なんか後回しだ」ってとこでしょう。

前回も書きましたが
米国としては北朝鮮を適当にあやしつつ、
北が暴発して軍事力に訴えることは極力避けつつ、
数年単位で北朝鮮を「足止め」したいのでしょう。

この米国の思惑を北朝鮮が読んでいるとするならば、
彼らが交渉で強気になるのは当然です。
どれだけ無茶をしても米国は軍事行使しないと見透したのなら
有利に六者協議を進めていけます。

逆に青くなったのはイランでしょうね。
あの米国の譲歩。
裏読みすればイラン戦の合図じゃないかと
彼らは受け取るでしょう。


今回の合意内容はいろいろと議論されてますが、
5万トンの重油がどうのこうのとか、
60日以内に核施設を云々とか、
こういうのは枝葉に過ぎないと思います。

要は、米国と北朝鮮、
さらに言えば中国も含めた三ヶ国の力関係です。
力のバランスです。

米国が半島情勢に割ける力がごそっと抜け、
相対的に中朝の力が増した格好です。

北朝鮮は実利と力関係に敏感ですし、
ある意味、パワーバランスにこれほど素直な国もありません。

国家の外交において
最後の決め手はやはり軍事力です。
この能力が決め手となります。
それを米国が行使しがたい状況にあれば
北朝鮮の外交上の選択肢は広がるでしょう。

彼らは今後も外交戦略を有利に進めるべく、
あの手のこの手で合意内容を自国に有利にすべく、
攪乱やかき回しを行ってくるでしょう。

そして合意に従うことが自国に不利と判断すれば
他国を欺き、弊履の如くこれを捨て去るでしょう。



関連過去記事

六者協議:北朝鮮の外交勝利と米国の譲歩

六者協議:北朝鮮の核凍結と外交取引






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六者協議:北朝鮮の外交勝利と米国の譲歩


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6カ国合意 北、段階的に核放棄 米、テロ支援国解除協議

 北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議は13日夕、
 北京の釣魚台迎賓館で全体会合を開き、共同文書を採択して閉会した。
 北朝鮮が寧辺の核関連施設を停止・封印する見返りに
 他の参加国は重油5万トン相当の支援を行い、
 その後の措置履行に応じ、最大で重油100万トン相当を支援する。
 国交正常化に向けた日朝協議や、
 テロ支援国家指定解除のための米朝協議の開始も盛り込まれた。
 ヒル米国務次官補は13日夜、
 北朝鮮への金融制裁問題を30日以内に解決すると表明した。
 北朝鮮の核放棄をうたった2005年9月の共同声明の実現に向け、
 約1年半たってようやく第一歩を踏み出す。
 
 スノー米大統領報道官は13日、ワシントンで今回の合意を
 「北朝鮮の核放棄実現に向けた非常に重要な第一歩」と評価する一方、
 北朝鮮が合意を守らない場合は、
 国際社会を通じた制裁が継続される、と警告した。
 
 合意文書では、北朝鮮は寧辺の核施設の活動停止・封印を行い、
 国際原子力機関(IAEA)による査察も受け入れる。
 プルトニウムを含むすべての核計画に関し、
 5カ国と協議するとした。
 
 北朝鮮は60日以内に「初期段階の措置」を取り、
 各国は重油5万トン相当のエネルギー支援を行う。
 ただ、日本政府は拉致問題での進展が前提との立場から
 支援は行わない方針で、
 各国もこうした日本の意向を理解しているという。
 
 北朝鮮はすべての核施設の申告と既存の核施設の機能停止に応じ、
 最大で95万トンの重油に相当する、
 経済、エネルギー、人道支援を受ける。
 初期段階措置が実施された後に、
 6カ国は外相会談を行うとしている。
 
 また、個別の問題を協議するため、
 (1)朝鮮半島の非核化
 (2)米朝国交正常化
 (3)日朝国交正常化
 (4)経済、エネルギー協力
 (5)北東アジアの安全保障
 の5つの作業部会を設置し、30日以内に初会合を開く。
 ヒル次官補は13日夜、高濃縮ウランによる核開発は
 作業部会で論議すべきだと述べた。
 
 日朝関係では、
 「不幸な歴史を清算、懸案事項を解決」し、国交正常化を図る。
 日本側は懸案に拉致問題も含まれるとしている。
 12日午後には、今協議では初めての日朝協議が行われた。
 
 北朝鮮は200万キロワットの電力など、
 大規模なエネルギー支援を要求するなど調整が難航したが、
 議長国・中国は13日未明に
 合意文書の第2次草案を最終案として提示した。
 次回6カ国協議は3月19日に開催される。

   (iza!)


この合意内容ですが
日本国民は総じて複雑な気持ちでしょうね。
譲りすぎじゃないか、と。

私も先ほどからこの内容について考えているのですが
いまいちよく分からないのは

  何故、米国はここまで譲歩したのか?

ってことですね。
ここが実に不可思議ですな。

まさか、ヒルが思いつきで交渉した訳じゃないでしょうから、
何らかの合理的理由があるわけでしょう。
ここまで譲らなきゃいけない理由って何なのか?

マスコミ報道を見ていると2つほど説がありまして、

◇イラクの泥沼がよっぽどこたえている。

◇中間選挙での敗北などを受けてブッシュ政権は
 取りあえず「外交的な成果」がほしかった。

後者はありえないと思います。
何故ならばブッシュ政権は
クリントン政権時での1994年のジュネーブ合意を
今まで散々非難してきたわけで、
「そういうお前がなんなんだ!」と逆批判されるのは明白だからです。

実際、早くもニューヨークタイムズ紙などは
批判の論調を掲げてますし、
米国民や米議会はこれを「成果」とは受け取らないでしょうね。
まあ、ブッシュ政権もそれは分かっているでしょう。

で、残るのは前者ですが、
私はこの可能性が高いと思っています。

要は、イラク以外ではビタ一文たりとも戦争をしたくないのでしょう。
戦争はイラクだけでたくさんですよ、と。

さらに言えば
ブッシュ政権が北朝鮮以上に重視しているイラン情勢が
今後、さらに混迷を深めていく可能性があり、
その際に「いざ、イランと開戦へ」となれるように
フリーハンドを握っておきたいのでしょう。

だから、北朝鮮が戦争へと暴発する可能性は少しでも削っておきたい。
それが数年程度の短期的なものでもいい。
米国にとって長期的に大きなマイナスになる合意内容であっても
取りあえず数年だけ、北朝鮮を足止めできればいい。
おそらくこれがブッシュ政権の思惑ではないでしょうか?

逆に言えば、北朝鮮も
この米国の思惑を読めているからこそ、
あそこまで強硬に押せるのかもしれませんね。

2月11日に朝鮮総連の機関誌が
先月にベルリンで行われた米朝交渉で
米国が北朝鮮に「30日以内に金融制裁を解除すると保証した」として
交渉での取引内容を暴露しました。

これは恐らく北朝鮮側の意図的なリークでしょうが、
ここまでルール違反をやられても
米国は怒ろうともせず、実におとなしいものでした。

たぶん、このリークは
いろいろな含みがあったのでしょうが、
一つは北朝鮮が米国の強硬度を測ろうという、
探索射撃の意味があったのでしょうね。

私はあのリークは
北朝鮮としては一種の賭だったと思います。
果たして米国が硬化するか?
それとも弱気に黙認するか?

結果は「弱気」の方でした。
米国の交渉代表であるヒル国務次官補は
べつに激怒するわけでもなく、態度を硬化させるわけでもなく、
淡々と六者協議を続けました。

あれを見て北朝鮮は
いけいけどんどんで押しまくれると
ふんだのではないでしょうか?


さて、この合意内容については
また後日じっくりと検証したいと思います。



関連資料リンク

米、対北支援は「義務履行」が条件 ウラン濃縮も対象に

6カ国協議:北朝鮮が米国との「裏取引」内容を公開

北が現在保有する核兵器はどうするのか=NYタイムズ紙

6カ国協議:北、核廃棄前に巨額の経済的メリットを手に

ほくそ笑む北 履行に疑問符 6カ国協議合意


関連過去記事

六者協議:北朝鮮の核凍結と外交取引








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胡錦涛のアフリカ行脚・・資源外交と力の空白


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一応の結果が出たらしい六者協議については
また明日にでも書くとして
今日は胡錦涛のアフリカ歴訪について書きます。


「貢献」「配慮」で存在感=アフリカ歴訪終え帰国-中国主席

 中国の胡錦濤国家主席は11日、
 アフリカ8カ国歴訪を終えて帰国した。
 資源獲得のため、人権改善など条件を付けずに
 援助や債務免除を展開する中国のアフリカ外交に
 国際社会の批判が高まる中、
 スーダンではダルフール紛争解決への貢献を強調。
 また、アフリカでも高まる対中警戒論に配慮した発言を繰り返すなど、
 資源外交を脱却し、責任ある大国として
 存在感を確立させることに全力を挙げた。
 
 「友好の旅、協力の旅」と位置付けられた今回の歴訪で、
 スーダンでは「紛争の政治解決」、ザンビアでは「経済協力」、
 南アでは「国連などを通じた国際連携」など、
 国ごとに対アフリカ政策の重要テーマを体現。
 李外相は「人類の文明進歩に向けた新たな重要な貢献」と強調した。  

   (時事通信)


胡錦涛のアフリカ行脚の旅が終わりました。

中国がアフリカの資源取り込みに本格的に乗り出したのは
ここ数年の話しですが、
世界的な対中警戒感の盛り上がりと共に
ようやく日本のマスコミも
この種のニュースを活発に取り上げるようになりました。
数年前と比べて隔世の感がありますね。

さて、胡錦涛のアフリカ行脚の詳細な内容は
下記のニュースを参照されてください。
こちらに詳しく書いてあります

資源確保へ中国流“援交" アフリカ行脚まとめ

計12日間に渡って
カメルーン・ナミビア・モザンビーク・セイシェル諸島・スーダン・
南アフリカ・ザンビア・リベリアの8ヶ国を訪問したわけですが、
今さらながらに中国の狂ったような対アフリカ外交には驚かされます。

ここ一年間だけを見ても、

◇2006年1月:李肇星外相、6ヶ国訪問

◇2006年4月:胡錦濤主席、3ヶ国訪問

◇2006年6月:温家宝首相、7ヶ国訪問

◇2006年11月:「中国・アフリカ協力フォーラム」を開催。
          アフリカ48ヶ国の首脳が北京に参集。

◇2007年1月:李肇星外相、7ヶ国訪問

◇2007年1月:胡錦濤主席、8ヶ国訪問

こんな調子で、
こうやって一覧にしてみると壮観ですね。
狂奔してると言っていいと思います。

今回のアフリカ歴訪で注目されたのは
ザンビアに「中国経済貿易協力区」を設立したことと、
スーダンのバシル大統領に
ダルフール問題をいい加減に解決するように釘をさしたことでした。

ザンビアと言えば
前に記事にしたことがありますが、

ザンビア:野党候補の「中国排除」発言
 ・・アフリカの一角で嫌中を叫ぶ

ここの最大野党の党首が大の嫌中派で
去年8月の選挙戦時に中国資本の追い出しを呼号し、
これに与党と中国政府は神経をピリピリさせてました。

ザンビアでは去年7月に
中国人経営者の賃金未払いで労働者のデモが起き、
これを制圧する際に中国人監督官が労働者らに発砲、
46人が死亡するという事件が起きました。

今回、胡錦涛が訪問した国の中でも
一番反中感情がわき上がっている国と言えそうです。

そして、スーダンですが
ここの大統領と中国政府は資源絡みで持ちつ持たれつの関係にあり、
同国のダルフール地方での大虐殺でも
国際的非難や制裁論の高まりに対して
その都度、中国政府はブレーキ役を任じてきました。

ダルフールの虐殺と中国の罪・・犯罪と資源外交

最近ではダルフールの虐殺に関して
スーダン政府とセットで中国も非難されることが多くなり、
さすがに胡錦涛もスーダンのバシル大統領に
この問題の解決を強く要請せざるを得ませんでした。

今、アフリカ諸国では
中国の援助に対する歓迎や期待と同時に
警戒の声もチラホラと上がり始めるようになりました。
上述のザンビア以外では
南アフリカなどでも対中警戒論がわき起こっているようですね。

南アはアフリカ諸国の中では比較的工業化が進んだ国ですが
それだけに安い中国製品と競合することが多く、
実際に繊維製品などは中国に市場を奪われているようです。

以下は去年6月のニュースです。


◇安価製品が地場産業直撃 アフリカ進出を南ア警戒
 
 エネルギー資源と繊維製品を中心に
 中国のアフリカ進出が加速する中で、
 同様に新興国として目覚ましい経済成長を遂げてきた南アフリカは
 中国への警戒感を示している。
 中国との経済関係の強化は期待しても
 中国の進出がアフリカ市場を重視する南ア企業の成長を
 妨げる恐れがあるからだ。
 南アのムベキ大統領は好ましい関係構築に向けて
 中国と話し合う必要があると訴えている。 

 中国とアフリカの関係構築は1950年代にさかのぼるが、
 急速な関係拡大に入ったのは2000年に
 「中国・アフリカ協力フォーラム」が北京で開催されてからだ。
 フォーラムは3年ごとに中国とアフリカ諸国で交互に開かれている。

 それ以降、中国の対アフリカ貿易額は一気に増え、
 2004年には約294億5000万ドルと、
 1999年の約64億8000万ドルから4・5倍以上に伸びた。
 中国の対外貿易全体での比率は2%強にとどまっているものの、
 03年以降は輸出入ともに30%以上の伸びを示し、
 その傾向は今後も変わらないとみられる。

 こうした中国のアフリカ進出に
 ムベキ大統領は5月下旬にブレア英首相との会談で訪英した際、
 英紙フィナンシャル・タイムズとの会見で、
 中国企業が南ア市場に関心を持つことは歓迎しつつも
 安価な中国製品の流入は
 地場産業には打撃になるとの懸念を表明した。

 ムベキ大統領は
 「南ア国内での中国企業への反発や脅威を解消させるために
 2国間で協議することが必要だ。
 中国が資源開発で南アに投資し、
 インフラ整備を進めるのは南アにとっても利益になるが、
 それ以外に検討しなければいけない課題がある」と語った。

 貧困にあえぐアフリカ諸国では
 消費面で中国からの多様な安い製品の流入に助けられているとはいえ、
 地場産業は中国との激しい競争をしいられることになった。
 中産階級層を狙った通信機器やハイテク機器も中国から輸入され、
 とくに南アへの影響は大きいようだ。

 南アには小売業や建設業から携帯電話事業と、
 有力企業が数多く、市場開拓で国外に目を向けてきた。

 金融や通信、小売りでは
 他のアフリカ諸国に進出して業績を上げている。
 アパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃後は
 とくに外資との競争に勝つため、国外志向を強めているという。

 中国がアフリカに広範囲に進出してくると、
 南ア企業はアフリカ市場で中国企業と対峙することになるわけだ。

 一方で、アフリカには
 独裁的で非民主的な体制を残している国が多く、
 海外企業との提携も
 欧米よりは中国の方が都合がいいとの見方がある。
 アフリカの民主化を象徴する南アには
 アフリカの将来に不安を抱かせる状況ともいえる。

   (FujiSankei Business i. 2006/6/22)


中国からの援助を受けるアフリカ諸国の中では
南アは「民主主義」と「工業化」の進捗という面において
異質な国でもあります。

この南アの、

  「中国からの投資と援助は歓迎する」

  「でも、工業製品の市場を奪われるのは困る」

という二律背反な感情は、
工業化が進んでいる国ならではの悩みです。
大半の貧困なアフリカ諸国は
前者「投資と援助を歓迎」の部分の方が大きいわけです。

今、中国はアフリカ諸国にとって
米国・フランスに次ぐ第3位の貿易相手国となり、
アフリカに進出した中国企業は800社に達しました。

また、中国とアフリカ諸国は30以上の石油協定を結び、
2005年の時点で中国の原油輸入のほぼ3分の1が
アフリカからとなっています。

この中国の狂ったようなアフリカ進出は
ある意味、力の空白地帯を突いたと言えるでしょう。

アフリカは大半が貧困国家の途上地域であり、
域内にパワーを及ぼす大国が存在しません。

世界の他地域と見比べると、
アジアはすでに発展・成長の途上にあり、
先進国・日本や中国・インドという強国が存在します。
また、中南米もブラジルという「域内大国」があり、
アフリカと比較すれば貧困の度合いは少ないでしょう。

パワーという観点からすればアフリカは空白地帯であり、
長年ここを支配していた欧州諸国も
決定的な影響力を持っているわけではありません。

また、米国は
90年代のソマリア介入の失敗から
アフリカへに対して積極的に関与してきませんでした。

まさに中国は、この隙に乗じてきたわけです。
彼らから見たアフリカは
資源が多く、力は弱く、
人権や政治制度絡みで西側諸国が深く関与できない、
路傍の宝石の如き存在でしょう。

中国が一定の金額を投資しても、
経済成長著しい国相手ならば大して感謝もされないでしょうが、
アフリカの貧困弱小国ならば干天の慈雨に等しく、
同じ額でも投資効率が違います。

世界の中で一番取り残された地域であるアフリカに
「新興覇権国家」である中国が浸透するのも
歴史の必然なのかもしれません。

これはアジアと比較すれば一目瞭然ですが、
アフリカを貧困のただ中に取り残し、
経済成長へのモデルケースを提示してやれなかった、
欧米諸国の罪でもありましょう。



関連資料リンク

3年連続で3回目のアフリカ諸国訪問を行う胡錦濤・中国国家主席

<胡主席>アフリカ歴訪終了 各国には中国への警戒と活用論

中国「アフリカ支援」のウラ

なぜ今アフリカで反中感情が…?


関連過去記事

中国:北京でのアフリカ首脳会議・・覇者と「会盟」

ダルフールの虐殺と中国の罪・・犯罪と資源外交

ザンビア:野党候補の「中国排除」発言
 ・・アフリカの一角で嫌中を叫ぶ







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ロシア:新移民法の施行と中国人不法移民の一掃


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温暖化の影響で全く冬らしい気がしない今日この頃です。
日課の散歩などに出かけても
あまりのポカポカ陽気に拍子抜けしてしまいます。
そういえば今年の東京はとうとう雪が降らなかったとか・・。


さて、話しは全然変わって
今日はロシアの移民事情について書きます。

当ブログでは何度か
ロシア極東地方での
中国人不法移民の増大について書いてきましたが、

ロシア:中国人の大量流入と摩擦・・モスクワの市場爆破事件

ロシアの復活とプーチン様の2つの難問・・工業化と人口問題

さすがにプーチン政権も危機感が増してきたようで
これに対処すべく
去年の11月に移民法の改正を行いました。

その概要は以下のとおりです。

◇ロシア全土に1200万人いる不法移民・不法滞在者の一掃。

◇正規の手続きを経て一定の枠内で外国人労働者を受け入れる。

◇年ごとの外国人労働者の受け入れ枠が設けられる。
 2007年は600万人の受け入れ予定。
 その大半がロシアと査証免除協定を結んでいる旧ソ連邦諸国から。

◇市場や売店などの小売業の労働者はロシア国民だけに限り、
 外国人は認めない。

つまり不法な1200万人を一掃し、
旧ソ連邦諸国からの600万人のみを認めるというわけですね。

この法律は去年の11月に制定され、
今年の1月15日から施行、
小売業からの外国人労働者の排除は
一定の段階を経て今年4月までに完全実施となります。

これによって大打撃を受けたのは
東北三省からロシア極東地方に
蟻の如く流入している中国人不法移民です。

彼らは最初は安価な中国製品を肩に担いで国境を越えて
ちまちまとした商売を行いつつ、
年を経るごとに極東地方の小売市場の大半を牛耳るようになりました。

この中国人不法移民が
今、ロシアの政策の変化によって悲鳴を上げています。

下記の報道をご覧あれ。
中国東北地方の朝鮮系住民のニュースサイトから。


'涙の袋包み' 険しいロシアでの商売の道

 ロシアでの商売の道は
 私たち朝鮮族たちにとって、ごく卑近な事だ。
 旧ソ連の解体末期、中露関係が解氷を迎え、
 朝鮮族のロシアドリームがおこり始めた。
 朝鮮族の村ごとに誰がロシアで商売をし、いくら稼いだ、
 貿易をして金持ちになった等々、町内の話題になっていた。

 しかしロシア政府が頒布した法令により、
 今年 4月 1日からロシア市場で外国人の小売業を全面的に禁止し、
 ロシア全域の 115の露天市場を全て閉鎖し、
 シベリアの寒風の中を転々とした朝鮮族にも
 直撃弾を当てることになった。

 今度、ロシアで出帆した法令は、
 ロシアで長年間商売をして来た朝鮮族には '青天の霹靂' で、
 あっという間に多くの人々が山のように持ちこんだ商品が
 処分品になってしまった。
 そして大部分の人々が元手だけでも回収しようとの思いから、
 商品のダンピングをしながら経営を続けている。

 ウラジオストク‘都市商売センター’で経営する、
 2000人余りの中国商人たちは半分以上が破産の危機になっている。
 現地の中国人たちも
 「不法経営者もいるが、
 大部分の合法商人たちは長年間ロシア政府に納税し、
 現地の経済にも一定の寄与をしたが、
 追い出すとなると直ちに手を下すロシア人たちの横暴が、
 ロバを使ってから食う行為とまったく同じだ」と憤慨した。

 東寧県三岱口朝鮮族鎮三岱口村の李ギョヒさんによれば、
 自分が商売をしていたハバロフスク・ウィブルスカ市場だけでも
 衣服、履物、家電製品、日用品などの商売に携わる中国人が
 少なくとも 3千名に達するのに、警察がうるさくまとわりつくので、
 結局耐えられずに陽暦の正月から次々に撤収し、
 今残っている人は何十人にしかならないという。
 彼らも、売台一つにつき、
 3万ドル以上払って購入したのを売却出来ない人、
 ロシア人に掛けで売った品物の代金をもらうことができなかった人、
 病気に入院して身動きさえできないなどの人々だと言う。

 外国人たちが大挙撤収するため、
 ロシア市場では中国製品の値段が暴落、
 服一着 2000ルーブルしていたものが、
 3~400ルーブル、ひいては工場価格よりも安いといい、
 倒産に追いこまれた荷担ぎ商人たちの血の涙を読み取ることが出来る。

 「ロシアで 10年余りも言葉を学び、根も下して、
 生計がようやく成り立つようになったが、こんな目に逢って、
 悔し涙を流しながら帰郷につきました。
 もはや他の道を選ばなければならないようです。」
 すっかり落ち込んだ李ギョンヒさんの言葉だった。

 大きなかばんを担いで肩を落として
 東寧税関を通って来る遼寧省撫順出身の崔さんに会うと、
 彼はモスクワで日用品を売っていたが、
 今日は旅券検査、明日は営業証検査、身体合格証検査、
 税金検査といいながら、煩くまとわりつく上、
 またある夜中にはならず者に踏み込まれるのではないかと心配で、
 鼠のようにぶるぶる震えながら生きている状況だといい、
 撤収のために 5万6万元損しながらも、
 残った品物と売台を他の人に売却処分し、
 家に帰って来る途中だと述べた。

 ロシアがこのような超強気になった理由は、
 中国商人の極東市場蚕食に対する危機感のためだ。
 プーチンロシア大統領は昨年末、
 中国人の極東地域商圏蚕食に対する力強い対策を注文した事がある。
 国会の外国商人小売業禁止法案制定は
 これに対する即刻の反応というわけだ。

 ロシアが危機感を持つほど、
 中国人は極東経済をほとんど占領している状況だ。
 ロシア沿海州ウスリースクにある、
 極東ロシア最大の在来市場にある2000店余りは
 皆中国人が運営しているか、
 中国人の委任したロシア人が運営しているほどだ。
 野菜や肉類などの場合も、安い中国産が
 ロシア現地人が栽培して育てた食材料を
 市場からほとんど駆逐した状態だ。

 電子製品市場や建築市場も中国業者が荒している。
 新華通信は中国内のロシア専門家たちの言葉を引用して
 "外国人がロシア市場を主導し、
 ロシア商人たちの不満が大きくなったので、
 ロシア政府が自国民の利権保護のために
 今回の政策を導入したものと見られる"と分析した。

 現在、ロシア沿海州に合法滞留している中国人は25万名ほどだが、
 不法滞留者まで含めば
 沿海州の人口650万名の10%に迫るものと推算されている。

   (朝鮮族ネット)


と、こんな状態になっております。

確かに地道に苦労して商売をしてきたのに、
ロシア政府の政策一つで追い払われてしまうのは
悲痛のような気もしないではありませんが、
中国人がロシア極東地方の経済を牛耳りつつある現状、

 ロシア沿海州ウスリースクにある、
 極東ロシア最大の在来市場にある2000店余りは
 皆中国人が運営しているか、
 中国人の委任したロシア人が運営している。

 野菜や肉類などの場合も、安い中国産が
 ロシア現地人が栽培して育てた食材料を
 市場からほとんど駆逐した状態。

 電子製品市場や建築市場も中国業者が荒している。

 不法滞留者まで含めば
 沿海州の人口650万名の10%に迫るものと推算されている。

まあ、これを見ていると
こりゃ追い払われてもしょうがねえだろうと
思っちゃいますね。


さて、この法改正と並んで
今年ロシア政府は新しい人口政策を打ち出しています。


露、人口減少に即効薬!? 「離散の民」帰国のススメ 
 
 人口の減少に悩むロシアが今年、
 旧ソ連圏諸国を中心に居住するロシア人の引き揚げを支援し、
 国内の戦略的要地への居住を奨励する政策に乗り出した。
 ソ連崩壊後、それまで補助金で
 居住を促していた極東など辺境地域から人口流出が続いてきたが、
 財政が回復基調のため、ロシア人を呼び戻すことで
 広大な“版図”を立て直す狙いがある。

 対象となるのは、ソ連時代の構成共和国に残留していたり、
 ソ連崩壊期などにロシアから国外移住したロシア人。
 旧ソ連圏だけで1600万~2000万人、
 欧米やイスラエルも含めると
 2000万~3000万人は存在するとされ、
 今年は46億ルーブル(210億円)の予算で5万人、
 以後の3年間で30万人の帰還をめざす。

 具体的には、移住費を支援し、
 国境沿いの戦略的要地である「A地域」の帰還者に
 6万ルーブル(約27万円)と家族1人あたり2万ルーブル、
 労働力が不足する「B地域」への帰還者には
 それぞれ4万ルーブルと1万5000ルーブルを支払う。
 A地域への帰還者には失業中の補助金支給や免税なども検討中で、
 すでに近隣国に露移民局の出張所も開設された。

   (産経新聞)


現在、ロシアは人口が年間70万人のペースで減少中で
それに輪をかけて、生活条件の悪い極東地方などは
人口が急激に流失・減少しつつあります。

旧ソ連邦時代は給与や年金の割り増しというアメと
中央政府の有無を言わさぬ命令というムチで
極東地方に人口を送り込んでいたのですが、
ソ連崩壊後はこのアメとムチが揃って消えてしまい、
こんな極寒の田舎は嫌だと
人口の流失に歯止めがかからない状態になっています。

その間隙を埋めるように
中国人がどっと国境を越えて不法流入してきたわけですが、
ロシア政府は極東地方の経済が
中国との交易と中国人労働力なくしては立ちゆかない状態を前にして
手をこまねいていました。

また、ロシアのみならず他国もそうですが、
急激な他国からの移民の増加は
民族の摩擦と憎悪、過激な排外主義を生み出します。

ロシアは近年、極右組織が台頭しており、
特にネオナチが若年層を吸収して勢力を増しつつあります。

ロシア:愛国主義の光と影 その1・・ネオナチの急増

去年12月に「全ロシア世論調査センター」が
ロシア人を対象に行った調査によると、
「ロシアはさまざまな民族の共通の家」との回答は
44%で前年度比9%減。
「ロシア人はロシアの多数派民族なのだから、
より多くの権利を与えられるべき」との回答が
36%で前年度比5%増。
ネオナチのスローガンでもある「ロシアはロシア人のもの」との回答が
15%を占めるという結果になりました。

今、ロシアの政治状況は
今年12月の下院選、来年3月の大統領選を睨み、
外交から内政の季節へと内向きにシフトしつつあります。

このプーチン政権の打ち出した、
不法移民の一掃とロシア系住民の回帰奨励策は
極東地方が中国化されつつあった状況の転換点であり、
国内の排外主義の横行に歯止めをかけるものでしょう。

また、ロシアは
内政の安定と石油高騰による収入増によって
経済状況は好転しつつあり、
極東地方の経済を左右する中国人不法滞在者の追い出しという、
荒療治を行えるだけの体力が身に付いてきたのでしょう。



関連資料リンク

選挙控え露政府、市場から移民締め出し

ロシアが新移民規制導入 不法滞在者の一掃ねらう


関連過去記事

ロシア:中国人の大量流入と摩擦・・モスクワの市場爆破事件

ロシアの復活とプーチン様の2つの難問・・工業化と人口問題


関連過去記事(本店ブログ)

対露外交と中国包囲網 その2
 ・・極東地方への中国人移民の流入(前編)

対露外交と中国包囲網 その3
 ・・極東地方への中国人移民の流入(後編)








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六者協議:北朝鮮の核凍結と外交取引


   北朝鮮の金桂冠・外務次官.jpg


今日の2つ目の記事です。


核凍結とエネルギー支援、2カ月内に同時履行

 北朝鮮の核問題に関する6カ国協議の議長国である中国が
 協議初日の8日夜、参加国に対して、
 北朝鮮が寧辺の実験用黒鉛減速炉などの
 5カ所の核関連施設の稼働停止・閉鎖を2カ月以内に行うと同時に、
 残る5カ国が同期間内に、エネルギーの提供などを開始するとの
 「同時履行」の原則を提示していたことが分かった。
 韓国の聯合ニュースが9日、北朝鮮の核廃棄に向けた、
 「初期段階措置」に関する合意文書草案の内容として報じた。
 
 同ニュースによると、草案はA4サイズ1枚で、
 核廃棄を原則合意した2005年9月の共同声明の履行のための
 5つの作業部会の設置が明示されているという。
 
 5つの作業部会は
 (1)非核化(核廃棄)
 (2)エネルギー、経済支援
 (3)北東アジア安保協力
 (4)米朝関係正常化
 (5)日朝関係正常化-という。
 草案の項目は9・19共同声明と似ているといわれる。
 
 また、同ニュースは外交筋の話として、
 8日の全体会合などで北朝鮮は
 マカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア」の金融制裁解除問題や
 軽水炉支援要求には触れていないと伝えている。
 この報道について、韓国政府は「コメントしない」との立場だ。
 
 一方、草案は
 北朝鮮の核関連施設凍結による具体的な見返りについて触れていないが、
 米MSNBCテレビ(電子版)は8日、米政府当局者の話として、
 北朝鮮は1億ドルの燃料支援のほか、米朝両国間の外交関係の樹立、
 国連制裁の解除を求めていると報じている。

   (iza!)


六者協議で
「北朝鮮の核廃棄に向けた初期段階措置」とやらが
俎上にのぼっております。

単純に整理すると、

 <北朝鮮>

 寧辺の実験用黒鉛減速炉などの
 5カ所の核関連施設の稼働停止・閉鎖を2カ月以内に行う

 <日米中韓露>

 北朝鮮にエネルギー援助を開始

この外交取引というわけですね。

まあ、この措置は「初期段階」などと銘打っているわけで
この後の本格的取引、
つまり米国の金融制裁の解除、
日本の制裁解除、中韓による大規模援助再開、
こういうのを念頭に置いているのでしょう。

どういう結果になるのか予断は許しませんが、
この「初期段階」の外交取引に関して、
メルマガ「モーニング・コリア」の2月2日号に
興味深い解説が載っていたので引用しておきます。


◇【北朝鮮】北、寧辺核施設凍結しても核兵器は放棄せず

 北朝鮮は北核6者会談で
 戦略的価値が減少した5メガワット級原子炉など、
 寧辺核施設は交渉カードとして活用するだろうが、
 核兵器計画で得た10個余りの核兵器や
 プルトニウムは放棄しないだろうと、
 アメリカ国内の韓半島専門家が31日展望した。

 クリントン政府とブッシュ政府初期の国務省対北朝鮮特使を務めた、
 ジャック・プリチャード韓米経済研究所(KEI)所長はこの日、
 ワシントン特派員懇談会で
 北朝鮮は核兵器計画の施設に対する交渉と、
 核兵器計画の結果のプルトニウムおよび核兵器に対する交渉を
 区分して協議に入るだろうとして、このように主張した。

 プリチャード所長は
 「寧辺原子炉で抽出したプルトニウムから
 既に10個余りの核兵器を持っている北朝鮮に、
 核兵器1、2個をさらに持つことは重要ではない」とし、
 北朝鮮が寧辺核施設凍結を示唆したという観測が出されているのは、
 「戦略的価値が減少した寧辺核施設を
 交渉カードに使おうとするものだ」と分析した。

 彼は「寧辺核施設は、
 単に1年に核兵器1個を作れるプルトニウムを生産できる程度で、
 品質に対する疑問もずっと提起されてきた」として、
 「北朝鮮は米国から経済的利益を得られるなら、
 寧辺核施設凍結問題で協議に入り、
 成功すれば、北朝鮮としては上出来の取引だ」と明らかにした。

 彼はしかし
 「北朝鮮は核兵器やプルトニウムに対しては
 絶対に放棄しないようだ」との見通しを示した。

    (モーニング・コリア 2007/02/02)


だそうです。

つまり、

 <北朝鮮>

 戦略的価値が減少した核関連施設の稼働停止・閉鎖

 10個余りの核兵器はそのまま。

 <日米中韓露>

 北朝鮮にエネルギー援助を開始

と、こういう取引になるわけですね。

日本はこれに明確に反対すべきでしょう。
ここで手を打たなければならない必要性など日本にはありません。
現状の困窮に頭を抱えているのは北朝鮮であって
日本が譲歩する必要はないでしょう。

日本が解決すべきは核と拉致であり、
「肝心の核兵器はそのまま」「拉致には言及せず」、
これで譲歩なんざ冗談じゃねえよという感じですね。


メルマガ:モーニング・コリア







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台湾:李登輝は転向したのか否か?・・原則論と政治家


       ritouki.jpg


え~、皆様、ご無沙汰しておりました。
今日から更新再開でございます m(__)m

まだまだ引っ越し後の段ボールが
あちこちに転がっている状態でして
雑然とした雰囲気の中でキーボードを叩いております。

しかし、一週間もニュースチェックを怠ると
なんだか世の中に取り残された感じで
遅れを取り戻すのに大変ですね。
今日も数時間、ニュース記事とにらめっこしていました。

さて、再開初日の今日は
ほんのジャブ程度の内容ですが、
気になる事が2つあるので
別々に2つの記事を上梓します。

まずは、台湾の李登輝のニュースから。


「台湾独立、主張したことない」 李登輝氏発言に波紋

 中国が「台湾独立派の大親分」と
 一貫して非難している台湾の李登輝前総統が、
 「私は台湾独立を主張したことはない」など、
 従来の立場を百八十度ひっくり返す発言をしていたことが
 31日明らかになった。
 その真意をめぐって台湾政界は大揺れになっている。

 31日に発売された大手週刊誌「壱週刊」の29日の取材で語った。
 李氏は「台湾は事実上主権が既に独立した国家だ」としながら、
 「このうえ独立を求めることは後退であると同時に、
 米国や大陸(中国)との多くの問題を引き起こして危険」と断じた。
 そのうえで「私は台湾独立派ではない」と明言した。

 また「大陸の多くの団体や個人が私の大陸訪問を希望している。
 うまくいけば孔子が巡った道を私も歩いてみたい」とも述べた。

 李氏に近い筋によれば、
 昨年後半から中国側から李氏への訪中要請が積極化しているという。
 08年の北京五輪開催などをにらんだ、
 中国の「微笑戦術」の一環とみられ、
 李氏が「台湾独立」を表立って主張しなければ、
 中国要人との会談さえ現実味を帯びてきそうだ。

   (asahi.com)


こいつには驚かされました。

この件に関しては毎日や日経も書いてますが、

台湾:李登輝発言で波紋 独立方針転換?

台湾の李登輝前総統「台湾独立追求せず」

内容的には似たり寄ったりで
李登輝氏が従来の主張を後退させたとの論調です。

では、李登輝氏のインタビュー記事が載っている、
週刊誌「壱週刊」の内容は具体的にどういうものなのか?

メルマガ「台湾の声」に載っていたのでここに転載します。
かなりの長文です。


 台湾『壱週刊』2007年2月1日号

 〔李登輝単独インタビュー〕

 ●私は大陸(中国)を訪問したい。
 台独を棄て、中国資本を引き入れる

 前総統李登輝はこれまでずっと
 「台湾独立のゴッドファーザー」と見られてきたが、
 1月29日に本誌の単独インタビューを受けたとき、
 彼は「自分は台独のゴッドファーザーではない。
 統一か独立かの論争は台湾ではすでに『ウソの問題』となりはて、
 ブルーとグリーンの陣営の闘争工具と成り下がっている」、
 「私はこれまで一度も台独を主張したことがなく、
 台独を追求する必要も、もはやないと考える」と公開で表明した。

 4時間にわたるインタビューのなかで、
 彼は「私の中国訪問を望んでいる人が、じつは中国にはたくさんいて、
 もし行ければ5千年前(訳注:2千5百年前の間違い)に
 孔子が列国を周遊した道をたどってみたい」ともらした。
 李登輝は、自ら統独(統一と独立)と
 両岸の問題に対する見方を新たに方向付けただけでなく、
 陳水扁は「ウソをつく人間」、「現在こそ黒金(腐敗社会)だ」、
 馬英九は「肝っ玉なし、迫力不足」だと、そっけなく評した。

 去年12月の台北、高雄市長選挙で台聯が大敗したので、
 前総統李登輝の国内政界に対する、
 影響力はほとんどなくなったと見られたが、
 2ヶ月もたたない間に
 彼は元総統府秘書長の黄昆輝に台聯党主席を継がせ、
 党再編を行い、路線を中間左寄りに向かわせ、
 また党名も「台湾民主社会党」に改め、出直すつもりでいる。

 ●大陸に行きたいが、実現は簡単でない

 1月29日午後、李登輝は自宅の翠山荘で本誌の取材を受けた。
 「台独のゴッドファーザー」李登輝は、
 「じつは大陸(中国のこと)にはたくさんの団体と個人が、
 彼に中国を見に来て欲しいと誘っている。
 大陸に行ければ、5千年前に孔子が列国を周遊したルートを
 一通り回ってみたいな」と初めてもらした。
 「私が大陸に行けば、捕まえられるかどうかわからない。
 まあ、捕まえないだろう」と冗談を言うのだ。

 李登輝は続けて言う。
 「出エジプト記のルート、シルクロード、孔子の周遊ルート、
 日本の奥の細道は、いずれも世界に知られたロードだ。
 これらを生涯に機会があったら、まわってみて感想を書いてみたいな」。
 彼はこれらのルートを書いた日本語の写真つき解説書を持っていた。
 「孔子公の列国周遊ルートには詳しいよ」。

 大陸訪問は、彼の84歳の体が耐えられることの他に、
 現実の考慮もしておく必要があることはよくわかっているので、
 「現在、たくさんの人々が大陸を訪問しているが、
 もし個人の権力のための大陸訪問なら、私はしたくないね」と話した。

 ●台独を否認、中国資本に開放

 李登輝は本誌の取材中、
 世間の彼に対する反中国の印象を大幅にひっくり返した。
 彼は統独(統一か独立か)の立場を明白に示した。
 「私は台独ではないし、これまで一度も台独を主張したことはないよ」。
 両岸の関係については「大胆に中国資本の台湾導入を開放し、
 大陸の客に台湾を観光させるべきだ」、
 「大陸の人たちはみな特務だと見るべきではない」と主張した。

 統独と両岸の問題の他に、
 李登輝は政治指導者の人物についても品定めをした。
 総統陳水扁は「ウソつき人間」、
 国民党主席馬英九は指導者としては「肝っ玉がなく、迫力も不足だ」、
 彼が12年近くも相手にした対岸の前指導者江沢民は
 「言葉多く、やった仕事は少ない」、
 現任指導者の胡錦涛は
 「言葉少なく、黙々と仕事をやる」と、それぞれを評した。

 しかし、国民党名誉主席連戦は直接批評しなかったが、
 彼が政務委員のとき
 連戦の父親の連震東と事務室をともにしたことを思い出し、
 「この台湾人は官途につくのがうまくてね、
 私も見習うに値するんだよ」と笑った。

 彼が執政していたとき、
 本誌も世間が彼の黒金(腐敗)政治を批判していることに
 言及したことがあると言ったら、
 彼は「黒金は当時と現在、どっちがひどいの。
 現在の黒金のほうがひどいじゃないか」と反問した。
 「国安(国家安全局)の機密帳簿」に言及すると、
 彼はすぐ「実際は、国安に機密帳簿はないよ。
 帳簿はすべて一つ一つはっきりしている」と話し、
 陳水扁がこの件と国務機密費とを同列に論じているのを退けた。
 
 ●統独の問題はすべてウソ

 彼は台湾の生き残りを非常に心配している。
 藍と緑(ブルーとグリーン)両陣営の泥仕合が
 市民に禍を及ぼしていることについて、
 「早急に解決しないとダメ」、一つの危機だと認識している。
 彼の話のなかで、黄昆輝が改組する、
 「台湾民主社会党」が演じる中間力に対する期待、
 そして同時に自分が政界の超然的地位を取り戻し、
 両岸関係および年末の立法委員選挙と08年の総統選挙における影響力を
 もう一度掌握することをほのめかした。

 李登輝はインタビューが始まるとすぐ、
 「台独のゴッドファーザー」と見られていることについて訂正した。
 「多くの人たちは私に対してそのような見方が非常に強いが、
 見てくれよ、わたくし李登輝の言論集25篇のどこに、
 私が台独を強調した文章があるのか」。
 言論のいくつかが台独に言及したことがあるとしても、
 主として台湾の民主化に関心をもつことにあっただけだ」と釈明した。

 「私が台独を追求する必要はない。
 台湾は事実上すでに一つの主権独立した国家だからだよ」。
 李登輝はさらに、執政当局が現在も
 「台独」を追求する主張をしていることにも反対している。
 「台独追求は後退であるだけでなく、危険なやり方だ。
 このようなやり方は、台湾を降格して未独立国家にさせ、
 台湾の主体性を損なわせるだけでなく、
 アメリカや大陸方面から多くの問題を引き起こすからだ」。

 李登輝は率直に話す。
 「民進党が『台湾独立を追求する』ウソの問題を製造すると、
 国民党は『反台独』の御旗を祭りあげる。
 実際は両陣営とも、統独を利用しているだけだ。
 毎日、統独をしゃべるが、どれもウソだよ。
 どちらも権力闘争に夢中だ。
 いまの台湾は民主化が停滞している。
 みな争いに夢中、これでは一番かわいそうなのは庶民だよ」。

 ●台湾新憲法、票だましのワザ

 「国民党は外来政権だ」とかつて言ったことはあるが、
 と李登輝はインタビューで初めて強調する。
 「いわゆる『外来政権』は事実上もはや存在しなくなった。
 現在は『台湾主体意識』の問題しかない。
 『本土』の問題も、もはやない。
 外省人や台湾人も、もはやない。
 台湾には族群問題はないのだ」。

 両岸関係の方面についても話す。
 「特殊な国と国との関係」が「両国論」と省略化され、
 はなはだしくは「台独」に間違えられたことについても、
 李登輝ははっきりさせた。
 「もともと両国論は私の本意ではなかった。
 私の言い方は『特殊な国と国との関係』であって、
 これは台独を主張しているのではさらさらない」。
 
 「国際法上の台湾の主権の位置づけは過去に判例のない、
 はっきりしない状況だったので、蔡英文を英国に行かせ、
 9名の国際法専門家に
 『台湾はいったい一つの国家なのか』を教えてもらった。
 その結果、半数がそうだ、半数がそうではない、
 という分かれた答えだったので、
 台湾と大陸にある二つの独立政治実体の間の
 特殊な関係を説明するために、
 当時のインタビューで『特殊な国と国との関係』と言ったのである。

 「台湾はとっくに主権が独立しており、
 目下の重点は台湾を如何に国家として正常化させるかにある。
 たとえば、憲法第4条の国家固有の国境などの問題を改正するには、
 憲法修正または公民投票の方式を通して解決せねばならないが、
 現在はほとんどやれないでいる。
 民進党は『言うこととやることは別』で、
 憲法修正を使うと敷居が高すぎ、公民投票も困難累々、
 それでまだ『新憲法』を叫んでいる。それでは庶民だましだよ」。
 
 ●疎通する場がないから、両岸は解決難

 李登輝は、
 両岸が目下疎通する場が全然ない状況を非常に心配している。
 「私の執政時、両岸の疎通を制度化させるために国統会を成立させ、
 国統綱領をつくり、双方の交流を始めた。
 後に綱領に基づいて陸委会、海基会を設立し、疎通の場をつくった。
 そのほかに辜汪会談があって、両岸が対話した。
 これは両岸の最もよい場だった」。

 そこで李登輝は批判する。
 「しかし政権交代後、両岸にはコミュニケーションの場が一つもない。
 以前は政府間の交流が密接だったが、
 今は民間が自分達で密接に交流している」。

 「2001年以後、両岸は一つの交流の場であるWTOを使えた。
 たとえば、タオル、タイルなどの貨物の
 反ダンピングはWTOで話し合いができる。
 しかし、執政党はこの場を利用せず、
 中国の役人がいかにも怖くてたまらない。
 これでは台湾人民の生き残りのチャンスを確保できないではないか」。
 
 「両岸疎通の場が欠けているから、人民の経済生活にも影響している。
 私の12年の執政時、両岸の政治と経済活動は相当安定し、
 経済成長も少なくとも7,8%はあった。
 人民はその12年間で少なからず金を儲けたが、
 両岸の疎通が途絶えると、人民は金を儲けられず、
 あの12年間に儲けた金を使い出している」。

 ●積極開放、出る一方

 実際の両岸政策の方向について李登輝は話す。
 「民進党政府がとった『積極開放』は
 『出て行くロードを一本開放したが、戻ってこない』。
 しかも彼らの政策はしょっちゅう変わる。
 積極開放が積極管理に変わる。あきれるよ。
 台湾全体が一桶の水のように、
 水は流れてゆくばかりで、入ってこない。
 これで人民は生活できるのか」。

 李登輝は話す。
 「在任中に出した『戒急用忍』は
 大陸と関係を持つなということではない。
 経済はもともとツーウエイなのに、
 民進党はそれをワンウエイに変えてしまった。
 台湾の中国への経済依存度が
 アンバランスをもたらしたことに直面している今、
 退くのはもはや実質的に困難だ。
 だから中国との経済貿易アンバランスは、
 改めて検討しなくてはならない。
 このままワンウエイに資金、人材、技術を流失させてはならない。
 中国の資金を如何に引き入れるかの問題も、考えなくてはならない」。

 彼は香港を例に取った。
 「香港は1997年の主権返還後、経済情況は非常によくなかったが、
 2003年と翌年に中国と香港の双方が関係を結び、
 大勢の大陸の観光客を香港に来させて、物を食べ、物を買い、
 株式も香港で上場させたら、経済はよくなった」。

 李登輝はそこで、「大胆に中国資本を引き入れ、
 大陸人民を観光に来させるべきだ」と主張する。
 「大陸からの人間をみな特務と見てはいけない。
 そんなに肝っ玉がないようでは、何がやれるの。
 開放して彼らを来させて消費させ、
 台湾も世界のブランドが集まる場所にすればいい」。

 ●江沢民を批判、胡錦涛を持ち上げる

 李登輝の中国に対する態度が批判から開放に変わったことが、
 中国の現在の指導者の胡錦涛に対する評価にも具体的に反映した。
 胡錦涛は水利を学んだから、比較的に実務的だと言う。
 「言葉少なく、無駄話せず、黙々とやる。
 対台湾の統戦はソフトで強引な行動はとらず、台湾人民を崩れさせる。
 江沢民のように、言葉が多く、やることは少ない」とは違う。
 江沢民の『江八点』は何をやったのか。
 何もやってないよ。脅かしだけだ」。

 李登輝は分析する。
 「胡錦涛は08年の北京オリンピックと10年の上海博の前には、
 台湾に極端な手段はとらないはずだ。
 しかし、12年になると胡錦涛は交代させられる。
 その次の中国指導者がどう出てくるかはわからない。
 そのとき、両岸にまだ利用できる疎通の場がないと、
 非常に危険なことになる。
 08年に新しく就任する台湾の総統が、
 すばやく疎通するパイプと場をつくることを期待するしかない」。

 国内の経済政策について、李登輝は話す。
 「執政当局は目下経済政策に方向性がないから、
 投資者には投資できる新しい事業がない。
 今、銀行にはカネがジャブジャブだぶついている。
 1,2千万元のカネを銀行に預金しに行くと、
 銀行は要らないというのだ。
 その意味は、台湾には投資するチャンスがなく、方向がないからだ」。

 しかし、実際に台湾は材料とバイオテク方面で
 非常に大きな空間を発揮できると、彼は指摘する。
 「たとえば、母校のコーネル大学には
 私の名義で設立したナノ研究所があり、政府もカネがあり、
 投資して株主になれるが、利用の仕方がわからないでいる。
 政府は新しい産業投資奨励法を制定し、
 台湾の企業家が中国大陸で儲けたカネを戻らせて、
 はじめて台湾人民の生活を改善できる」。

 李登輝は、蒋経国時代に国内の石油化学のなかの下流の工場の
 整理再編を助ける仕事をしたことがあるので、
 石油化学工業にも詳しい。
 「たとえば、台湾プラスチックの6工場に
 政府は20万トンの水を供給したことがあり、
 現在は80万トン使っている。
 濁水渓ダムは供給十分であり、用水価格も一般水価格の三分の一だ。
 台プラは一年に何億も儲かっている。
 政府が台プラを助けたから、
 台プラはいま大いに儲かっているのだから、
 社会にお返しをするべきだ」。

 ●陳水扁はウソつき、受けて立たない

 国内の政治情勢に話が及ぶと、
 李登輝は昨年3月からずっと台湾が現在直面している、
 危機存亡の問題を考えてきたと話す。
 「藍緑陣営の泥仕合の情況下では、
 今年から来年までに何か中間力が出現することを期待するしかない。
 黄昆輝が引き継いだ台聯が改組後、中間左寄り路線に移動し、
 台湾の新しい中間力になることに希望を寄せる」。

 陳水扁に話が及ぶと、李登輝の批判は遠慮しない。
 陳水扁はウソつきだとはっきり言う。
 どうしてかというと、扁・宋会合のあと扁が批判を受けると、
 それは李登輝が提案したから
 宋に会いに行ったと言い訳をしたからである。
 「非難されると、一人の老人のせいにする。
 事実でないし、受けて立つこともしない」。

 李登輝は今、扁と連絡がないことを否定しない。
 「彼が三立テレビのインタビューで何を話したか、
 私は聞きたくもない。
 人をよこしても、私は相手にしない」。
 本誌記者が彼に陳水扁執政7年の評価を求めると、
 「いや、いや」と断った。

 ●公義を堅持、扁支持は拒絶

 国務機密費について、李登輝は語る。
 「国務機密費事件を、阿扁は機密外交だと弁解する。
 しかし、外交は総統と関係があるが、
 総統府とは全然関係がないのだから、
 どうして国務機密費まで持っていけるのか。
 彼は当初、一審判決が有罪であれば降りると言ったが、
 後に危ないと見るや、任期終了後に自己弁護すると言い出す。
 今、彼はまた機密外交の内情は死んでも言えないと言い出す。
 これでは、どうやって自己のために弁護するのか」。

 李登輝は、自分は陳水扁と違うと言う。
 「私には神があり、神の思し召しには背けない。
 昨年、扁打倒ブームが起きたとき、
 一部の長老教会の台独派牧師が扁支持を公にしたので、
 ある家庭礼拝で彼らに話した。
 神の目には、牧師も信者も同じだ。
 生前に公義の精神を本当に維持するかどうかは、
 死ぬ前にだれでも審判を受けるのだと」。

 ●馬は肝っ玉がないので高く出る

 国民党主席を担ったことがある李登輝は、
 08年に総統選挙に出る可能性が高い馬英九を評す。
 「馬は確かに肝っ玉がない。
 馬は仕事を最後まで堅持しなくてはならないときに、
 批判を受けると、最後まで堅持できなくなる。
 気迫不足だね。
 これではいずれ、彼は問題を引き起こすよ」。

 「馬先生のいい点はクリーンだが、
 高すぎる話はせず、高すぎる標準はつくらない方がいい。
 降りられなくなるからだ。
 クリーンは当然やるべきだが、話さない方がいいときもある。
 馬については、彼がどうやり抜くかを見なければ、
 彼がいい指導者になれるかどうかわからない」。

 彼はまた、「馬英九はカリスマをやりすぎている」と言う。
 「総統になるにはカリスマづくりに凝る必要はない。
 あんなテレビや新聞には構わず、誠心誠意に自分の仕事をやり、
 正直に庶民と向き合えばいいし、
 庶民と政治のことを話せばいいのだ」。

 ●蘇・謝と会い、書を贈る

 民進党の蘇貞昌、謝長廷なども続々、
 彼に教えを乞いにきて彼の支持を求めている。
 「彼らはいずれも私に支持を求めたいが、
 私は彼らを支持するとは言えないから、
 彼らとは、指導者の条件について話すしかない。
 彼らに何冊かの本を上げ、家に帰って読めというだけ」。
 李登輝がいう本当の新世代の台湾の指導者の条件とは、
 国家観念を持ち、国家のために働きつづけ、
 次代のために努力する考えがなければならず、
 選挙の勝敗のためではないのである。
 しかし、新しい指導者には、
 このような考え方がどうも欠けているのだ。

 李登輝は言う。
 「多年政治に携わってきたが、最も満足に感じないのは、
 台湾が民主化したあとも、
 台湾人はどうも幸せを感じていないようだということだ。
 そして、執政当局が終始両岸の危機を正視していないことについて、
 「総統府の連続ドラマが面白いから、
 それを考える時間がないのだろう」と笑った。
 
   (台湾の声:2007/02/08)


以上です。

実は、この記事が出た後で李登輝氏は
自由時報紙の単独インタビューに応じ、

 「あの記事は、実際のインタビューから
 都合の良いところだけを拾い、
 部分的な発言を歪曲した報道だった」

と反論をしています。

しかし、全否定はしておらず、
その部分を割り切って読むと非常に興味深い内容ですね。

私の感想を言うと、
正直、彼の真意は非常に読みにくいです。

私はマスコミ論調のように「李登輝は転向した」とも思いませんが、
逆に李氏の熱狂的な支持者が言うが如く、
「やはり李登輝の主張に全く変化はない」とも思いません。

 「多くの人たちは私に対してそのような見方が非常に強いが、
 見てくれよ、わたくし李登輝の言論集25篇のどこに、
 私が台独を強調した文章があるのか」。
 言論のいくつかが台独に言及したことがあるとしても、
 主として台湾の民主化に関心をもつことにあっただけだ」

 「私が台独を追求する必要はない。
 台湾は事実上すでに一つの主権独立した国家だからだよ」。

 「台独追求は後退であるだけでなく、危険なやり方だ。
 このようなやり方は、台湾を降格して未独立国家にさせ、
 台湾の主体性を損なわせるだけでなく、
 アメリカや大陸方面から多くの問題を引き起こすからだ」。

彼の主張はこの数行に凝縮されていると思います。

 台湾独立を追求する必要はない。
 台湾はすでに主権独立した国家だから。

このロジックですね。

ある意味、安倍総理の対中曖昧戦術に似てるような気もします。
争点をぼかして、原則論的な対立を避けようということでしょうか。

台湾政界の現状、
即ち、独立派VS反独立派の原則論真っ向対立の状況は
台湾の政治に危機をもたらすと見ているのでしょうか。

この八方ふさがりの状況を
自らの手で打開したいと考えているのでしょうか。

李登輝という人物は政治家です。
政治家ゆえに、
その発言は政治的影響・波及効果を計算した発言でしょう。

かつて蒋経国からバトンタッチされた国民党独裁政権を
自らの手で解体し、民主国家へと変化させた人物ですから、
黙すべき部分は黙し、語って益有る部分のみを語り、
曖昧にすべきは曖昧にする。
過程はどうであれ、良き結果さえもたらせばいい。
ここらへんは彼の芸の領域だと思います。

結論として、彼の政治的信念には変化はないものの、
戦術の部分において修正を施しつつあるように感じました。

さらに、彼の発言で面白かったのは
陳水扁に対する評価が辛い点ですね。
非常に辛辣です。

逆に、陳水扁のライバルである国民党の馬英九に対しては
「肝っ玉が小さい」などと言いつつも
それほど厳しく批判していません。
さらに胡錦涛に対する評価もさほど悪くはありません。

彼の真意をハッキリと読み取れている自信はありませんし、
マスコミのフィルターでどこまで歪曲されているのか分かりませんが
この発言内容は非常に興味深いです。


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