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米国:幻の構想「政策分析市場」・・実にWEB2.0的ではあるまいか?

今さらながら、
梅田望夫さんの「ウェブ進化論」を読みました。
ゾクゾクするほどの快感を覚えましたが、
この本の後半に「予測市場」なる概念が出てきます。

これは未来の事象を予測して
その結果を先物取引するという人工市場です。

「ウェブ進化論」では以下のように書いています。

  もともと市場メカニズムには
  不確実な将来事象の期待値を
  現時点の価格に置き換える機能が内包されている。
  事実、市場の動向はものごとの将来をよく当てる。

  ならば、ありとあらゆる未来の重要テーマについて
  ネット上で人工市場をつくればいいじゃないか。
  これが予測市場の考え方である。

そして、これの具体例として
米国の「アイオワ電子市場」なる、
仮想市場プロジェクトがでてきます。
米アイオワ大学が研究目的・非営利で運営しているもので
当局の許可を得て現実の通貨で取引が行われています。

この市場では各種の未来予測を取引していますが
2004年の米大統領選の結果予測も取引の対象となりました。

正式には「2004年米大統領選先物市場」といいまして、
多くのトレーダーが「未来予測」を
あれこれと金銭目的で先物取引した結果、
驚く無かれ、ブッシュの僅差での勝利を
この市場ではピタリと正確に予想したそうですね。

さて、前置きが長くなりましたが、
私はこの「予測市場」の部分を読んだ時、
数年前の2つのニュースを思い出しました。


米国防総省、将来のテロ攻撃などについて
 賭け金を集める市場を構想

 ワシントン発米上院軍事委員会のジョン・ワーナー委員長は、
 米国防総省がテロリスト攻撃の予測を推進するために、
 いわば予測の先物市場を設立する計画について、
 これを破棄することになると明らかにした。

 バージニア州選出の
 上院議員(共和党)でもあるワーナー委員長は、
 このプログラムを監督する国防総省の
 国防高等研究計画庁(DARPA)の
 トニー・テザー長官と電話で会見した結果、
 「これは中止するべきだということで、双方が同意した」
 と述べている。

 ほとんど表沙汰にされてこなかった国防総省の計画は、
 将来のテロリスト攻撃や
 特定の指導者に対する暗殺の起こる可能性について、
 投機家がインターネット上から賭ける方式の
 先物取引市場を設置する構想だった。
 同計画を促進するためのウェブサイトは、
 すでに運用を開始していた。

 2名の民主党上院議員によって
 この計画が明るみにされた28日、
 国防総省は、実行される可能性のあるテロの計画について
 情報を入手する新しい方法だと弁明した。

 「残虐行為とテロリズムに関する、
 連邦政府公認の賭博場というアイディアは馬鹿げており、
 グロテスクだ」と28日に計画を明かした議員の1人、
 ロン・ワイデン上院議員(オレゴン州選出、民主党)は語った。

 このプログラムは
 『政策分析市場』(Policy Analysis Market)と呼ばれている。
 DARPAでは、
 「テロリストの攻撃を防止するためにできる限り幅広く、
 新しい諸方法を調査する」研究努力の一環だと説明している。

 トレーダーは、
 ちょうどエネルギー資源を扱うトレーダーが
 現在や将来の原油価格に値を付けるように
 先物契約を売買するはずだった。
 しかしこの場合の先物契約は、
 たとえば、経済、市民および軍の行動、
 あるいはテロリストによる攻撃のような
 特定の出来事といった条件を考慮して、
 中東で何が起きるかという予想シナリオに基づくものなのだ。

 自分の予想が実際に起きた場合、
 その先物契約をしていた投機家は、
 市場に賭け金を出していたが予測が外れたトレーダーから
 上がりを集める仕組みになるはずだった。

 28日に同市場のウェブページに掲載されていた図では、
 先物取引の例として、パレスチナ自治政府の指導者、
 ヤセル・アラファト議長が暗殺される可能性と、
 ヨルダンのアブドラ2世が国王の座を追われる可能性という、
 架空のシナリオが掲載されていた。
 ウェブサイトでは、このプロジェクトの市場は
 中東とすると謳っていたにもかかわらず、
 北朝鮮によるミサイル攻撃の可能性を示す図も含まれていた。

 ドーガン上院議員は問題の市場について、
 「信じられないほど愚劣だ」と述べている。

 「米国の政治界の要人の暗殺や、
 あれやこれやの組織を転覆させるといった筋書きに賭け金を張る
 ……そんな賭博場を他の国が開設して
 人々に賭を勧めることなど、想像できるだろうか?」

 しかし28日の声明でDARPAは、
 市場が「分散していた情報や、
 さらには隠されていた情報さえも」
 明らかにする可能性があると述べていた。
 「選挙結果を予想するような
 場合における先物市場の優秀性は証明されている。
 専門家の意見よりも優れている場合もしばしばある」

 政策分析市場のウェブサイトは、
 投資家がどれほどの金額を市場に投じるか明らかにしていないが、
 「利益を得る可能性と、損失の痛手」があるため、
 アナリストたちは正確な予測を立てるよう、
 動機づけられるはずだとしている。

 取引は10月1日に開始が予定されていた。
 市場は当初、トレーダーを1000人と限定し、
 来年の1月1日までには少なくとも1万人に増やす見込みだった。

   (WIRED NEWS 2003/07/29)


賭け金を集める「政府運営の政策分析市場」、支持派が反論

 テロ攻撃の予想に役立つとして
 先物取引市場を設立するという計画が物議を醸し、
 米上院が計画を破棄させたことに対し、
 29日(米国時間)、批判の意見が出はじめた。

 ロン・ワイデン上院議員をはじめとする議員たちは、
 米国防総省の『政策分析市場』(PAM)プロジェクトを
 「グロテスク」だと感じたかもしれない。
 しかしこの「アイディア市場」を支持する側は、
 計画の即時中止は、米国の情報機関から、
 正確に将来の出来事を予測することで
 定評のあるツールを奪いとることになると主張している。

 政策分析市場を発案したのは、
 プライバシーを踏みにじると悪名の高かった、
 『テロ情報認知』(TIA)データベースを編み出した頭脳集団、
 DARPAの情報認知局(IAO)だった。
 この事実は、テロに関する先物取引市場を開くという、
 試みに対する反感を、さらに高めた。

 しかし、このプロジェクトを支持する側からの指摘によると、
 機密情報の収集活動とは、多くの場合厄介なもので、
 いかがわしい人物に金を渡したり、
 敵対する可能性のある人物を排除したりすることもあるという。
 アイディアを取引対象とする先物市場というコンセプトを
 ごく初期のころから支持しており、
 PAMプロジェクトにも関わっているロビン・ハンソン氏は、
 先物市場というと響きはよくないかもしれないが、
 このコンセプトには倫理を犠牲にする行為を
 強いられる要素は何もないと述べる。
 これは人々の叡智を結集するための、
 1つの方法にすぎないというのだ。

 「われわれは諜報活動のために
 さまざまなことを行なっているが、
 これはその中でもいちばん良心の呵責が少ない方法だ。
 よからぬことを教えてもらうために人々に金を払う。
 諜報活動のプロセスとは、本来そういうものだ」
 とハンソン氏は説明する。

 また、取引市場を開くほうが
 密告者に金を払うよりも高い効果を得られる可能性がある。

 取引市場は、
 「誰一人として答えがわからない場合情報が、
 異なった知識基盤を持つ多数の人々に分散している場合には、
 非常に的確に出来事を予想できる傾向がある」と
 アイオワ大学のジョイス・バーグ教授は述べている。
 バーグ教授は、PAMプロジェクトの作成に協力した。
 「市場は、このように分散した情報を統合することにかけては、
 非常に優秀だということが判明している」

 また、ハンソン氏によると、
 市場は、第一級の識者にも不可能な方法で、
 特定の主題に関する情報を持った人々を
 集めることもできるという。

 「その題材について知識はあるが、
 発言の資格がない人たちを集められる。
 (中東内の)地域に実際に住んでいる人たちの意見も集る」
 とハンソン氏。

 また、市場は政策に関する論議と比較して
 「空回りする傾向が少ない」とハンソン氏は指摘し、
 「人々が口にすることではなく、
 実際に考えている情報が手に入る」と語っている。

 それでも、上院議員たちは懸念を寄せている。
 中東での事件に関する金融市場を作ることで、
 テロリスト本人が自分に賭け金を出して、
 自身が行なった攻撃から
 利益を手にする可能性が出てくるというのだ。

 上院では少数派である民主党のリーダー、
 トム・ダシュル上院議員(サウスダコタ州選出、民主党)は、
 数人の同僚議員の感情を代弁して、
 PAMを「テロ行為の実行を誘発するものだ」と糾弾した。

 しかし市場専門家のペノック氏によれば、
 これは全くの誤りだという。

 「テロリストが(攻撃に金を投資する)
 行為に出るという事実そのものが、
 手の内を見せることになる」とペノック氏。
 テロリストが金を投じれば、先物価格は上昇する。
 その事実が指導者たちに
 テロ攻撃の可能性を警告することになる。

 「市場によって、他の手段では知り得ない、
 何かが起きそうだという予兆がわかる」とペノック氏。

 PAMシステムには問題もあると、ペノック氏は認めている。
 市場は、あらかじめ想定したアイディアに対してしか
 賭けられない仕組みになっている。
 誰も思い付かなかったようなテロの計画は、
 実行に移されない限りPAMの取引の場には登場しない。
 したがって、2001年9月11日の同時多発テロ攻撃で
 飛行機をミサイルとして使うというアルカイダの手口を、
 この市場のトレーダーが予測できた可能性は低い。

   (WIRED NEWS 2003/07/30)


今は更新が止まってしまったワイアードニュースが
2日連続で報道したこの記事を読んだ時の驚きは
今でもハッキリと覚えています。

「政策分析市場(PAM)」。
なんという破天荒な発想でしょうか。
これを考えた人は大したやつだと思いました。

その大したやつとは、
米国防省内の一角で怪しげな兵器やプロジェクトを考案している、
国防高等研究計画庁という組織で、
通称「DARPA(ダーパ)」と呼ばれています。

知る人ぞ知る組織で
わりと兵器マニアなんかは知ってる人が多いと思います。
米軍の未来戦兵器などを続々と生み出してる部署ですから。

また、この組織はITの歴史の中にも登場します。
即ち、インターネットの元祖である、
「アーパネット」を作ったのは、
このDARPAの前身の米高等研究計画局「ARPA」です。

さて、この「政策分析市場」ですが、
上記の「予測市場」と発想は全く同じで
要は「未来予測」を市場取引の材料にしようという試みで、
衆知を集めることで、
結果的に精緻な予測結果がはじき出せるだろうというのが眼目です。

これに対する肯定的意見を
ニュース中からピックアップすると、

  市場が、分散していた情報や、
  さらには隠されていた情報さえも
  明らかにする可能性がある。

  選挙結果を予想するような場合における、
  先物市場の優秀性は証明されている。
  専門家の意見よりも優れている場合もしばしばある。

  「利益を得る可能性と、損失の痛手」があるため、
  アナリストたちは正確な予測を立てるよう、
  動機づけられるはず。

  誰一人として答えがわからない場合情報が、
  異なった知識基盤を持つ多数の人々に分散している場合には、
  非常に的確に出来事を予想できる傾向がある。

  市場は、このように分散した情報を
  統合することにかけては非常に優秀だ。

  市場は、第一級の識者にも不可能な方法で、
  特定の主題に関する情報を持った人々を
  集めることもできる。

  その題材について知識はあるが、
  発言の資格がない人たちを集められる。
  (中東内の)地域に実際に住んでいる人たちの意見も集る。

  市場は政策に関する論議と比較して
  空回りする傾向が少ない。
  人々が口にすることではなく、
  実際に考えている情報が手に入る。

  市場によって、他の手段では知り得ない、
  何かが起きそうだという予兆がわかる。



う~ん、無茶苦茶面白そうですね!

この構想、政治的にも面白い試みですが、
それ以上に、WEB2.0的な意味で興味が湧きますね。

以下、「ウェブ進化論」から引用。

  果たして世の中の誰が
  「正しく判断する能力」を持つのか。
  誰がどのように重要な意思決定をすべきなのか。

  「個」が十分に分散していて
  しかも多様性と独立性が担保されているとき、
  そんな無数の「個」の意見を
  集約するシステムがうまくできれば、
  集団としての価値判断のほうが正しくなる可能性がある。

  米国が圧倒的に進んでいるのは、
  インターネットが持つ、
  「不特定多数無限大に向けての開放性」を大前提に、
  その「善」の部分や「清」の部分を
  自動抽出するにはどうすればいいかという視点で、
  理論研究や技術開発や新事業創造が
  実に活発に行われているところなのだ。


結局、この「政策分析市場」構想は
米上院の猛反対、
「倫理にもとる」という非難で潰れてしまいました。

しかし、はたしてこれが実現していれば
その後の米国の国策はどうなったのでしょうか?
倫理的な問題を除外するならば
一考の価値がある構想ではないでしょうか?



ウェブ進化論:本当の大変化はこれから始まる





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