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中国:経済紙と大企業の壮絶なバトル・・「iPodの城」と低賃金労働

中国の労働環境の酷さはよく知られた話で
前に一度、記事にしたことがあります。

中国:世界で最も過酷な労働搾取国家
 ・・広東省玩具工場の暴動事件

実は、あのiPodの製造工場が中国の深センにありまして、
台湾系企業が経営している巨大工場なんですが
これが信じがたいほどの低賃金搾取労働で有名でした。

それに対して外国メディアが批判の声を上げ、
地元の経済紙がこれに追随し
これに企業側が訴訟を起こして反撃するなど、
時ならぬ騒ぎが勃発しました。

最終的に両者は和解で手打ちをしたのですが、
なんとも奇っ怪な幕切れで終わりました。

以下、この顛末について書きましょう


現代版「女工哀史」? iPod工場の実態を英紙が報道

 アップルコンピュータ(以下、アップル社)の
 主力製品であるiPodの生産拠点を舞台に、
 思わぬ問題が持ち上がっている。
 同製品の中国での代理生産を行っている、
 富士康の工場における労働状況を
 英国紙が大きく報じたもので、報道が事実ならば
 富士康はアップル社製品の製造資格を剥奪される可能性もある。

 事の発端は先日、英国のサンデー・テレグラフ紙が
 「iPodの城」と題する記事を掲載し、
 「iPod nano」の中国での生産拠点である、
 富士康深セン龍華工場の労働状況を報じたことに始まる。
 深セン龍華工場を取材した同紙の記者によると、
 20万人の従業員の多くは女性で、
 敷地内の宿舎で生活する彼女たちの労働時間は
 1日15時間にも及び、
 その月収はわずか27ポンド(約387元)だという。

 また、「iPod shuffle」の
 生産を行っている蘇州工場では、
 従業員の平均月収は54ポンド(約774元)だが、
 宿舎は提供されておらず、家賃や食費を自己負担するため、
 収入の約半分が消えてしまうという。

 この記事を受け、アップル社の中国担当者は
 「もし報道が事実であるならば、
 労働環境や従業員の人格を尊重するという、
 代理製造業者としての代理商の条件を満たしておらず、
 その資格を失う可能性もある」とし、
 近く富士康の生産工場を調査する方針だ。

 これに対し、富士康と
 その親会社である鴻富錦精密工業は、
 深セン龍華工場に大勢の報道陣を招き、
 労働環境に問題がないことをアピール。
 富士康科技集団の李金明・副総裁は、
 従業員の月収が深セン労働・社会保険局が規定した、
 最低賃金水準の580元(2006年7月1日から700元)を
 下回る金額だと報じられたことに対し、
 「月給300-400元というのは、
 給料システムや計算期間を誤解したのではないか」とし、
 最低水準の580元を守っており、
 7月からは700元に引き上げると語った。

 また李副総裁は、労働時間が
 アップル社が規定した週60時間を大幅に上回る、
 1日15時間であるとの報道については、
 「従業員が自主的に残業するケースが多いからだ」とし、
 会社側は週休1日を守っており、
 残業の場合は1.5倍、週末は2倍、
 祝日は3倍の賃金を支払っていると述べた。

 だが、深セン龍華工場のある女性従業員は
 「条件面でも環境面でも問題があるのは間違いない」
 と訴えている。
 彼女は「基本給が低いため長時間残業をせざるを得ず、
 毎週20時間以上残業して
 やっと月収が1000元に達する」と主張している。
 最低賃金についても「会社側は580元だと言っているが、
 この金額には皆勤賞や報奨金なども含まれている」と
 怒りを露わにしている。

   (中国情報局)


この「iPodの城」という記事は
国際的にも反響を巻き起こしましたが、
それ以上に中国国以内での波及効果がすごかったです。

この記事が出て4日後に
地元広州の大手経済紙「第一財経日報」がこの問題を取り上げ、
「iPodの城」における搾取労働の数々が
多くの中国人の間に知れ渡りました。
特にこの一件は、ネットを通じて
あっという間に中国全土に情報が流れました。

だが、ここから企業側(富士康)の反撃が始まります。
この部分は産経の記者:福島香織さんのブログが詳しいのですが、

北京趣聞博客:中国報道のあした3

企業側は、この記事を書いた王記者と
編集した翁宝編集委員の二人を名誉毀損で訴え、
賠償金3000万元(4億5000万円)を請求しました。
中国の物価から言えば、これは法外な額でしょう。

この訴えに対して裁判所(法院)は
原告の権利を保護するとの名目で
記者と編集長の自宅や車、
はては預金通帳までを差し押さえました。

まあ、無茶苦茶な話しで
この国の司法が実にい加減であるかが分かりますし、
差し押さえをするにしても
新聞社ではなく、記者個人の財産を押さえるとは
あからさまな圧力です。
裁判所がこういう措置を取った背景には
富士康と癒着した地元政界からの圧力がありました。

しかし、「第一財経日報」は
これを言論に対する弾圧であると大々的なキャンペーンを開始。
これに他の中国のマスコミも雷同し、
ネットを通じて中国世論も沸騰し、
「iPodの城」富士康は猛烈な非難にさらされました。

これにビビった現地の鴻富錦精密工業と
親会社の富士康は譲歩に走ります。


iPod工場、名誉毀損も「賠償は1元で良い」

 アップルコンピュータの製品である、
 iPodの代理生産を行っている、
 
中国の工場に対する告発報道を行った記者2人が
 損害賠償を求める裁判を起こされた問題で、
 訴えた工場側は要求する賠償額を
 3000万元(約4億4000万円)から
 1元(約15円)に引き下げる方針を明らかにした。
 31日付で新華社が伝えた。

   (中国情報局)


ところが、この「賠償は1元で良い」という安直な譲歩は
かえって「なめんとんのか!」と世論の怒りを買い、
ついに両者は和解に至ります。


iPod工場訴訟:和解成立、ネット賛否両論

 アップルコンピュータ製のiPodなどの
 代理生産を行う工場に対する告発報道を行った、
 記者2人と所属する新聞社に対して、
 工場側が損害賠償を求める裁判を起こした問題で、
 和解が成立し、訴訟は取り下げられた。

 工場を保有する富士康科技集団の公式サイトにおいて
 3日付で和解声明が発表された。
 記者が所属する第一財経日報、富士康、同集団傘下の
 鴻富錦精密工業(深セン)有限公司の連名で掲載された。

 まず第一財経日報が「台湾企業の子会社である富士康が、
 大陸の経済発展に貢献していることに敬意を表する」と明言。
 一方で富士康も第一財経日報に対して尊敬の意を表し、
 告発報道は善意から行われたことを認めるとしている。
 富士康がこれまで通り、
 マスコミと良好な関係を保っていくことも表明された。
 また富士康が3日付で訴訟を取り消し、
 互いに謝罪することも盛り込まれた。

 告発報道を行った同紙の翁宝・編集委員は3日、
 もう一人の記者とともに開設したブログの中で心境を語った。
 この中で翁編集委員は
 「こうしたことが2度と起こらないでほしい」と呼びかけた。
 更に「問題の核心は『法的にジャーナリストをどう守るか』
 『メディアはどのように企業を監視したらいいのか』
 という2点だった」と主張。
 その上で「ジャーナリストに対する法的な保障を得るためには、
 我々が一致団結してジャーナリストとしての考え方を
 法律界など各界に訴え、支持を獲得する必要がある」と述べた。

 これに対して同ブログのコメント欄には
 「穏便な方法で事を収めたことに感謝したい」
 「中国のメディアは弱腰だ」など
 賛否両論の書き込みが見られる。

   (中国情報局)


この和解に対しては賛否両論あったものの
総じて中国世論の多数の反応は、

  「中国のマスコミが
  大企業とそれにつるんだ当局の圧力に勝って
  言論の自由を守り通した」

という賛辞でした。

確かに徹底抗戦とまではいかず
やや腰砕けの感がしないでもないですが、
まあ、これは日本のマスコミの権力の強大さに慣れた、
日本人的な発想なのかなとも思ってました。

ところがところが。
この後に一つのニュースが飛び込んできます。


中台関係懸念の共産党が指示

 台湾資本の大手電子機器メーカー、
 「鴻富錦精密工業」(広東省深セン)が、
 同社の強制的な長時間労働を告発した中国有力経済紙、
 「第一財経日報」記者を名誉棄損で提訴した問題で、
 同紙が一転して記事の非を認め、和解に応じた背景に、
 共産党中央宣伝部の強い指示があったことが8日、分かった。

 関係筋が明らかにした。

 同筋によると、
 宣伝部は「台湾との政治、経済関係の悪化は
 避けたいという中央政府の意向」との理由で和解を指示。
 同紙はそれに従い、3日、
 「今回の件で双方が被った迷惑についてお互いが謝罪する」
 とする和解を受諾したという。
 同紙編集者は紙上で「勝訴の自信はあるが、
 記事には一部誇張があった」と非を認めた。

   (読売新聞)


う~ん、このニュースが事実だとするならば
あれほど大企業と地元政界の圧力に抗した「第一財経日報」も
マスメディアを管轄する本家本元の
「共産党中央宣伝部」の指示には逆らえなかったということですね。

また、興味深いのが
政治的に台湾を叩き続ける中国政府が、
台湾系企業の進出・出資に
異様なほど敏感になっているという事実です。

確かに外資によって経済発展を成り立たせている中国、
さらに台湾系外資は中国にとって「人質」に意味合いもあります。
ここに逃げられちゃあ困るということでしょうか。

また逆に、この読売の報道が
中国政府筋の意図的なリーク、又は偽情報ならば、
あからさまな「第一財経日報」の信用失墜を狙った工作ですね。

  お前ら、調子に乗るなよ

という警告でもあるのでしょう。


言論の自由に目覚めつつある中国のマスコミ、そして中国世論、
それをネットが後押しする構図。
しかし、最終的には
官の統制から逃れられないマスメディアの現実。

この「iPodの城」の一件は、
中国社会の現状の一端をよく現しています。



関連資料リンク

iPod工場の疑惑めぐり訴訟、Appleも介入

Apple、中国のiPod工場での労働環境調査を報告






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テーマ:中国問題 - ジャンル:政治・経済

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コメント

追跡報道、ありがとうございます。メディアの意識がかわったとしても、やはり中央宣伝部の圧力は別格なのです。これは「中国映画のあした」でもふれましたが。

  • 2006/09/13(水) 20:52:44 |
  • URL |
  • 福島香織 #-
  • [編集]

ああいう統制政治の国ってのは

> 中国映画のあした

拝見させていただきました。

http://fukushimak.iza.ne.jp/blog/entry/35874/

実は映画の話しは
あまり興味ないのですっ飛ばしてましたが、
読んでみたら当局による映画規制に触れた内容でした (^_^;

例の「東京裁判」の記事も
興味深く読ませていただきました。

http://fukushimak.iza.ne.jp/blog/entry/36871/

ああいう統制政治の国ってのは
映画などの表現・芸術の分野に弱さがでますね。
アニメなども振興策を当局が打ち出してるようですが
かけ声だけで内容が伴ってないみたいですし。

  • 2006/09/14(木) 02:28:30 |
  • URL |
  • ケイ@管理人 #-
  • [編集]

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