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ロシア強硬策「サハリン2」事業停止へ・・「生産分与契約」と国家の信義

「サハリン2」事業停止 エネルギー戦略見直しへ

 ロシア天然資源省は18日、
 三井物産、三菱商事が参加するロシア極東サハリン沖の
 石油・天然ガス開発事業「サハリン2」に対し、
 事業化の調査承認を取り消すとの声明を発表した。
 事実上の事業停止命令として、
 同計画が今後、大幅な見直しを迫られるのは必至で、
 日本のエネルギー安全保障戦略は、再考を余儀なくされるとみられる。
 
 インタファクス通信によると、
 天然資源省は、ロシア検察当局からの抗議を受け、
 事業化承認を取り消す決定を下した。
 同省は2003年7月、
 環境や採算性などの問題を検討した専門家による事業化調査をもとに、
 同計画を承認していた。
 
 また、同国天然資源監督局は今回の決定に先立ち、
 「自然保護法違反」でパイプラインの建設など
 サハリン2の業務停止を裁判所に申請していたが、
 同計画が事実上、停止に追い込まれることになったため、
 21日に予定されていた審理も中止されるという。
 
 事業はすでに8割方完成していた。

   (iza!)


この「サハリン2」に関しては
前に書いたことがありました。

サハリン資源プロジェクト・・足踏み状態にロシア苛立ち

あの懐かしき「樺太」ことサハリン島で、
日本の三井や三菱のお父さん達が
天然ガスの開発で黙々と働いてるわけですね。

一応、地図を載っけておきます。

     74.jpg


「サハリン1」と「サハリン2」は共に、
多国籍の企業による出資方式ですが、
特に「サハリン2」の特徴はロシア資本が入ってないこと。
英国・オランダ系のロイヤル・ダッチ・シェルと
三井物産、三菱商事の3社の出資。
これが今回のロシア政府の
ごり押しにつながっていると思われる。

たいした資源開発技術を持たないロシアは、
こういう形で外資を入れることで
国内各地の資源開発を行っている。

しかし、上記ニュースのように
外資に喧嘩を吹っかけるようなことをすれば
最終的に困るのはロシア政府自身ではないのかね?
おそらく、これが日本政府や三井・三菱の疑問ではあるまいか?

その疑問の答えに関しては
いろいろな報道で背景説明が行われている。

たとえば、


サハリン2 プロジェクトに黄信号 ロシア側の提訴で

 停止が長期化すれば、採算性が低下し、
 計画全体への打撃も避けられない。
 ただ、実際は「ロシア単独での開発や資源の販路開拓は無理。
 事業がストップして困るのはロシア自身」
 (大手商社幹部)との見方は強く、
 当局が本気で計画中止を望んでいる可能性は小さいとみられる。
 
 では、なぜ提訴したのか。
 ロシア問題に詳しい大和総研の井本沙織主任研究員は
 「資源は、ロシア政府が外資に
 主導権を取らせない戦略分野だから」と説明する。
 サハリン2は、現在はロシアからの出資がないが、
 ロシアの政府系企業、ガスプロムが25%の出資を求め、
 既出資企業と株式取得交渉を進めている。
 難航する交渉を一気に前進させるため、
 事業停止をちらつかせて揺さぶりをかけた、
 との見方には説得力がある。
 
   (毎日新聞)


おそらく、これも「ごり押し」の理由の一つなんだろうね。

ただ、私は、
ロシア政府がプロジェクトの主導権を握ろうとするのは
積極的に資源国有化を図ろうというよりも、
もっと目先の損得で動いている部分が大きいと思ってます。

実はこの「サハリン2」のプロジェクトは
当初の開発予定費は約95億ドルだった。
それが資材価格の高騰や自然環境保護の費用で
2倍以上の200億ドル(約2兆3000億円)に跳ね上がった。

あらら、それは大変ですな。
出資したシェルや三井・三菱も大損だね~と思うところですが、
実は、このコスト増大に伴う損は
出資した3社よりもロシア政府がかぶる仕組みとなっている。

この「サハリン2」の開発に関しては
ロシア政府と出資元の3社の間では、
「生産分与契約(PS契約)」と呼ばれる契約形態が取られている。

以下を参照あれ。


石油/天然ガス用語辞典

 「
生産(物)分与契約 production sharing contract」

 1960年代前半からインドネシアにて普及し、
 その後、産油各国で採り入れられた、
 石油探鉱開発契約でサービス契約の一種。
 通常PS契約と略称される。

 インドネシアは1960年に大統領令により、
 石油産業の国有化を宣言したが、
 その建て前の下で外国企業の資金と技術を導入する、
 契約形態の模索が行われた結果、
 1960年代になって開発請負契約、PS契約が相次いで導入された。

 PS契約では従来の利益配分方式の探鉱開発契約と異なり、
 生産物自体を産油国と外国石油会社間で分けあう点が特徴的である。
 外国石油会社は産油国又は産油国国営会社の
 作業請負人(コントラクター)として作業を行い、
 併せて必要な資金と技術を提供する。
 探鉱の結果、商業規模の石油の発見があった場合、
 生産物から現物で投下資金を回収するが、
 通常、実費相当分はコスト原油として先取りすることができ、
 コスト回収後の原油を
 産油国と外国石油会社間で分けあう形式の契約である。


つまり、どれだけコストがかかろうが、
それは開発後の石油や天然ガスから支払われる。

で、コスト分を差し引いた石油と天然ガスを
今度は投資3社とロシア政府が山分けにする仕組み。

この「山分け率」は最初から契約で決まっている。

 ◇収益率17.5%未満の場合
   投資家の取り分 90%、ロシア側の取り分 10%

 ◇収益率17.5%以上、24%未満の場合
   投資家の取り分 50%、ロシア側の取り分 50%

 ◇収益率24%以上の場合
   投資家の取り分 30% 、ロシア側の取り分 70%

サハリン大陸棚における石油・天然ガスの開発と環境:
 サハリンプロジェクトの開発の利点

つまり、コストが増大し、その分利益が減れば減るほど、
ロシアの取り分がごっそり減っていき、
投資3社はそれほど打撃を受けない契約になっている。

だから、プーチンは怒ってるのさ。
「ざけんなよ!」ってね(笑)

以下、ロイターと産経の過去記事。


◇サハリン2超過コスト、露政府がほぼ全額承認へ

 ロシア・サハリン沖の
 原油・天然ガス開発事業サハリン2を手がける企業連合、
 サハリン・エナジーのクレイグ最高経営責任者(CEO)は、
 ロシア政府がプロジェクトの超過コスト100億ドルの
 ほぼ全額を承認する、との見方を示した。

 サハリン2の契約では、
 シェルやパートナーの三井物産、三菱商事は、
 コストをプロジェクトの収入から回収できることになっており、
 超過コストはロシア政府の怒りをかっていた。

   (ロイター:2006/03/23)


◇サハリン2事業費 負担増嫌う?
 露大統領 産業界、来日時の発言注視

 今月二十日のロシア・プーチン大統領の訪日を控え、
 サハリンなど極東のエネルギー開発に対する、
 産業界の関心が高まっている。
 プーチン大統領は、大手ガス・石油会社の首脳らと
 一緒に来日する予定であり、
 日本企業とも新たな協力関係を模索する見通しだ。

 とくにクジラ保護や資源価格の高騰で、
 総事業費が当初計画より倍増しそうな、
 原油・天然ガス事業「サハリン2」をめぐっては、
 プーチン大統領が事業費の増加を認めない意向を示したとされ、
 来日時の発言に関心が寄せられている。
 
 プーチン大統領は今月初旬のオランダ訪問で、
 サハリン2の事業主体の国際石油資本(メジャー)、
 ロイヤル・ダッチ・シェル首脳と会談。
 その中でプーチン大統領は、
 サハリン2で約二百億ドル(約二兆三千億円)に
 倍増する見通しとなった事業費を認めない意向を示した、
 とロシア紙が報道した。

   (産経新聞:2005/11/13)


まあ、そんなこんなで
今回のロシアの強硬措置の背景には

 長期的:資源国有化

 中期的:ロシア資本の参入ごり押し

 短期的:これ以上のコスト増大を嫌ったロシア政府が、
      契約形態の見直しに圧力をかけようとしている。

この3つの観点が大事だと思います。


私は思うんですが、
ロシアのこの手のやり方ってのは、
短期的には自国に利益をもたらすのかもしれないけど、
長い目で見たら果たしてどうなのかな?

国際社会の評判を聞いてみればいい。
過去の歴史と現在の彼らの素行から見て
ロシアという国は信義に厚い国でしょうか?どうでしょうか?

各国は一斉に首を横に振るでしょうね。
ああいう信用できない国は珍しい、と。
約束は平気で破るし、言葉に重みが無いと。

これは国家だけではなく、企業も個人も同様だけど、
「評判」ってのは一朝一夕にできるものではない。
日頃の「信義」の積み重ねがその国の評判を増していく。
約束は守り、他国に極力迷惑をかけない。

しかし、ロシアは上記ニュースの如く、平気で約束を破る。
プーチンがどれだけ紳士面をしようとも
やってることは強盗と同じ。
君は子供の頃に「約束は守れ」と教えられなかったか?

このロシア政府のやり方は
長期的には自らの国の歴史に泥を塗ってるのと同じ。
子孫に「約束を守らないロシア人」という負債を負わせるも同じ。

君らはどこかで心を改め、
「国際信義」について学ばないと、
所詮は二流国家であり続けるでしょう。



関連資料リンク

ロシアの「サハリン2」承認取り消しは
 「極めて深刻」=欧州委員

米エクソン、ロシアに
 「サハリン1」の生産分与契約の尊重求める


サハリン大陸棚における石油・天然ガスの開発と環境


関連過去記事(本店ブログ)

対露外交と中国包囲網 その4
 ・・東シベリア石油パイプライン(前編)

対露外交と中国包囲網 その5
 ・・東シベリア石油パイプライン(中編)


対露外交と中国包囲網 その6
 ・・東シベリア石油パイプライン(後編)







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コメント

後出しじゃんけん

モービルとトータルがそれぞれ開発するサハリン1も中止の要請があったようだ。トータルについてはソ連の言うとおりPSにサインしたとはあったが、詳しい説明は無く、モービルについても触れていない。しかしサハリン2は詳細に報じられていた。

日本もモービルやトータルと外資としてソ連に抗議したほうが効果が大きいと思ったのに、連携はできないのでしょうか? ソ連のダブルスタンダードにより分断作戦かな?22日、プーチンは渡仏してシラクと会談する予定と言うのも気になる。

2流どころか3流とおもいますけど。。。

  • 2006/09/21(木) 20:50:06 |
  • URL |
  • ジャポネーズ #-
  • [編集]

同意です

1に比べて2の方が詳細に報道されていたわけは、
結局、1は売り先が見つからず難航していたからでしょう。
半ば事業的に失敗の気配が漂ってました。

当初予定していた東京ガスが買おうとしないため、
エクソンの会長が小泉首相に
「このままだと中国に売るぞ」と恫喝したのは有名な話しです。

日本の失敗は、政府が強硬姿勢を取らないことと、
欧米メジャーの政治力をあてにし過ぎたことでしょうね。

安倍総裁誕生の陰に隠れてしまって
さほど大きく報道されてませんが、
この事業の頓挫は大きな問題ですよ。
1と2を合わせれば日本の輸入エネルギーの
1割はサハリンでまかなえるはずでした。

> 2流どころか3流とおもいますけど。。。

同意します(笑)

  • 2006/09/22(金) 02:34:48 |
  • URL |
  • ケイ@管理人 #-
  • [編集]

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