短く斬れ

ニュース・短評・データ・資料を怒濤の如く。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
このページのトップへ

ロシア:愛国主義の光と影 その2・・プーチン政権の紅衛兵「ナーシ」



   p_67357.jpg



前回の続きです。

ロシア:愛国主義の光と影 その1・・ネオナチの急増


2005年5月15日。
突如、モスクワの街頭を6万人の若者が集団行進し、
市民らを驚かせた。

この統一したコスチュームに身を包んだ、
高校生を主体とする若者の集団は
プーチン政権が作った青年組織「ナーシ(Nashi)」のメンバー。
彼らはこの日、ロシア全国の30の支部から集まり、
「旗揚げ」の街頭行進を行った。

ナーシ。
ロシア語で「私たちの」という所有代名詞を指し、
意訳すれば「わが祖国」「わがロシア」という意味。

そのスローガンは「ファシズムからの祖国防衛」であり、
厳格な規律を持った20歳以下の青少年で構成されている。
彼らは政権与党以外の全ての政治勢力を敵視し、
しばしば街頭にて政権擁護の政治運動を行っている。

このためナーシは、ロシアのマスコミや野党政治家からは

  「クレムリンの紅衛兵」

  「政権のヒットラーユーゲント」

と揶揄されている。


ナーシの前身は「共に行く人々」という青年団体。
2004年頃に創設されたらしい。

当時、グルジア・ウクライナなどの旧CIS諸国において
米国を主導とする民主革命が勃発し、親露派諸国は次々と脱落、
この流れはロシア国内にも波及しそうな勢いだった。

また、ソ連崩壊後、
コムソモールなどの全国的な青年教育システムが消滅し、
折からの経済危機や治安の悪化により、
青少年層にネオナチや極左などの急進主義思想が浸透していた。

この国内外の情勢に危機感を強めたプーチン政権は
民主革命の波及やネオナチの拡大を防ぐために
官主導による青少年組織を創設することを決意。
大統領府副長官のウラジスラフ・スルコフの発案により、
プーチン支持の若者を数千人単位で組織化し、
「共に行く人々」という団体を作った。

スルコフはプーチンの懐刀。
政権与党である「統一ロシア」の発起人の一人であり、
政権のイデオロギーや政治戦略を担当している。

ロシアの政治家の影響力についての世論調査では、
プーチンに次ぐ第二位を占めており、
この41歳の少壮政治家は
「クレムリンの灰色の枢機卿」とも呼ばれている。

プーチン政権の基本政策は
国権に管理された民主主義であり、
ロシア国内では「主権民主主義」という名称で呼ばれているが、
これの名付け親がスルコフである。

スルコフは「共に行く人々」の組織を
さらに数万人単位に拡充し、
腹心である連邦委員のワシーリー・ヤケメンコを指導者とし、
「ナーシ」と改名した。


スルコフはこのナーシを
かつてのソ連共産党の青年組織「コムソモール」のような
将来の政治エリートを養成する組織に育てようと考えた。

しかし、発足当初に集った若者達は玉石混淆であり、
その多くはイデオロギー教育に警戒感を示し、
政治組織化するナーシから距離を置こうとする者も出始めた。

そこでスルコフは方向転換を行う。
彼はプーチンに進言し、
プーチンのモスクワ郊外の公邸や黒海の別荘に
ナーシの青年幹部を招待した。
ここでプーチンは若者達と親しく会談し、
それがマスコミに大きく報じられた。

このパフォーマンスにより
ナーシが政権のエリート候補を育てる機関であることが周知され、
将来の出世を求める優秀な若者らが殺到した。

今年の夏、モスクワ郊外のセリンゲル湖畔で
ナーシの教育キャンプが開催された。
そこには競争率十倍の枠を勝ち抜いた優秀な青少年が
約五千人も集った。

講師陣は著名な教授や外交官、政治学者、
哲学者、知事などのそうそうたるメンバーであり、
参加費から往復交通費などはすべて無料で、
政権はこのキャンプに
約200万ドルの費用を投じたとされる。


夏にNHKの番組でも紹介されていたが、
彼らは非常に厳格な規律で知られており、
街頭での政治運動の終了後は酒の代わりにミルクで乾杯する。
 
飲酒・喫煙は御法度であるが、
セックスは許可されており、それも避妊無しが奨励されている。
その理由は「ロシアの少子化対策」ということで、
多くの子供を産み育てることを義務と教えられている。

ここらへんの潔癖さと規律と、そして権力に対する従順さは、
かつてナチスにより組織された、
「ヒットラーユーゲント(ナチス青年団)」に似ており、
暗然とした気持ちにさせられてしまう。

自らを「プーチンの親衛隊」と呼ぶナーシの若者達は、
左右の政治勢力を敵視し、
特にネオナチのような極右勢力と
かつての共産主義の流れをくむ左翼を蛇蝎のように捉えている。

ここらへんは創設者であるスルコフや
オーナーのプーチンの思惑がズバリ当たったと言えて、
彼らは政権を守る「若い牙」を手にしたといえるだろう。

ナーシの総帥ワシーリー・ヤケメンコは
マスコミのインタビューに以下のように答えている。

  ネオナチの若者は、デモを通して、
  自分たちが多数派で急進的だという幻想を世間に抱かせた。
  
  ナーシは、ファシストと似非リベラリストの協力関係を
  何度も批判してきた。
  野党勢力がファシズムを合法化する危険性があると警告した。
  このままではファシストとリベラリストのつながりが強化され、
  拡大してしまう。

  いまこそ、治安維持機関がネオナチ現象に対し、
  法律に則って正しい判断を下すときなのだ。
  そうなって初めて、我々はこの伝染病と
  まともに闘うことができるようになる。

ナーシの存在が世間に周知されたモスクワの行進から
まだ一年と半年に過ぎないが、
この組織は徐々に存在感と影響力を広げつつあり、
やがてそれ自体が小さな権力機構と化す可能性を感じさせる。



関連資料リンク

ナーシ(公式サイト)


関連過去記事

ロシア:愛国主義の光と影 その1・・ネオナチの急増

ロシア:過激「反日報道」とプーチン政権の思惑
 ・・対露外交の譲歩論と原則論

ロシア強硬策「サハリン2」事業停止へ
 ・・「生産分与契約」と国家の信義

ロシア:中国人の大量流入と摩擦・・モスクワの市場爆破事件


関連過去記事(本店ブログ)

対露外交と中国包囲網 その1・・盟友の条件









スポンサーサイト
このページのトップへ

コメント

昔も今も

日本でも「かむろ」とか、「草の者」とかいうのがありましたね・・・。

今も昔も独裁者の治安対策は「密告網」であることには変わりないようです。原始的なヒューミントという見方の方が正しいと私は思いますが・・・。

  • 2006/11/27(月) 22:44:56 |
  • URL |
  • クマのプータロー #-
  • [編集]

プーチンの近衛連隊

「かむろ」って
ずいぶんマニアックですね (^_^;)
平家物語でしたっけ?

ナーシの場合は密告というより、
もろに親衛隊組織ですね。
プーチンの近衛連隊です。

問題はこれの資金の出所ですが、
いろいろ資料を読みましたが、
どうも国費から出してるようで、
ここらへんは日本の常識で図りかねます。

この連中が青年海外協力隊みたいに
途上国でボランティアでもやるんだったら
多少は認めてやらんではないんですがね・・。

ただ、その政権の紅衛兵的側面はともかくとして、
エリート教育という発想は羨ましい限りです。
本当は日本もそういう機関が必要なんですけどね。

  • 2006/11/30(木) 02:39:25 |
  • URL |
  • ケイ@管理人 #-
  • [編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

プロフィール

ケイ

Author:ケイ
憂国と好奇心の30代男

マイブログ・メルマガ

 待避禁止!

 宇宙開発ニュース β版

 メルマガ:古今東西の名言

サイトマップ

 過去記事一覧

 過去記事一覧(本店ブログ)

最近の記事

カテゴリー

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。