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ロシアVSベラルーシ:欧州向け送油の停止・・プーチンのエネルギー帝国主義


   ベラルーシ.gif



露も送油停止 東欧巻き込む「資源戦争」

 ロシアと隣国ベラルーシが
 エネルギー供給をめぐって対立している問題で、
 ロシア国営パイプライン会社、
 トランスネフチのグリゴリエフ副社長は9日、
 ロイター通信に「ベラルーシは違法に導入した関税分として
 原油を抜き取っている」と述べ、
 パイプラインへの原油供給を停止したことを認めた。
 
 ベラルーシは今月、ロシアが今年から天然ガス価格を
 2倍以上に引き上げたことへの報復として、
 自国領を通過するロシア産原油に大幅な関税を課す考えを表明。
 ロシアが応じる姿勢を見せないため、
 パイプラインから現物を抜き取る実力行使に出た可能性がある。
 
 送油が停止したのは「ドルージュバ」(友好)と呼ばれる、
 ソ連時代からの基幹パイプラインで、
 ロシアが輸出する原油の約3割が
 ベラルーシを通るルートで欧州に向けられている。
 
 一方、スロバキアやハンガリー、チェコでも8日夜、
 ベラルーシを経由して欧州に向かうロシア産原油の供給が停止した。
 8日朝にはドイツやポーランドへの供給も停止しており、
 ロシアとベラルーシ間のエネルギーをめぐる紛争は
 東欧にも大きな影響を与えている。
 
 スロバキアの石油備蓄量は約70日分、
 ハンガリーは約3カ月分、チェコは約3・5カ月分あるが、
 ハンガリー政府は、クロアチア経由で
 石油を緊急搬送する準備を進めている。

   (iza!)


この問題の経緯を簡単に書いておきますと、

 ◇ロシアがベラルーシに天然ガスの値上げを通告
        ↓
 ◇ベラルーシがこれに反発し、
  ロシアの天然ガスに高額の関税を課すと反撃
        ↓
 ◇ロシアは拒否、というか無視。
        ↓
 ◇報復としてベラルーシは
  領内を通過するロシアの石油パイプラインから
  原油を勝手に抜き取り。
        ↓
 ◇ロシア、怒ってパイプラインの石油供給を全面停止

こんな感じですね。

これが昨年の12月下旬から今日に至るまでの経過ですが、
一番馬鹿馬鹿しい思いをしているのは
ロシア産原油に頼っている欧州各国で、
両国の争いの巻き込まれ、石油を停止されて
「ふざけんなよ」というのが率直な気持ちでしょうね。

ちょうど一年前にも
ロシアはウクライナと同様の争いを起こし、
欧州向けのロシアの天然ガスの供給が一部ストップして
イタリアで25%、フランスで30%、ハンガリーで25%、
ポーランドで14%、スロバキアで30%の供給減となり、
欧州諸国は恐慌状態となりました。
中一年でこの状態が再現したわけです。

近年、ロシアは
「エネルギー帝国主義」と形容されるような、
天然資源を武器とした国家戦略を展開しています。

曰く、友好国には安く売り、非友好国には高く売る。
敵対すれば供給をストップし、
許しを請うて膝を屈すれば供給を再開する。

このやり方でウクライナを脅し、グルジアを締め付け、
今回はベラルーシを標的にしているわけです。

もともとロシアとベラルーシは友好国であり、
ソ連邦崩壊後も親密な関係にありました。
一時は両国が合体して連邦制国家となる構想すらありました。

しかし、2003年、
ロシアが提案したルーブル通貨のベラルーシへの導入を
ベラルーシのルカシェンコ大統領が拒否し、
ここから関係が悪化していきました。

もともと連邦制への移行は
ルカシェンコ自身が大いにノリノリだった話しで
何故、途中から手のひらを返したように
反対に転じたのかは分かりません。
着々と地盤を固めるプーチンのロシアと組んでしまうと
自分の座るイスが無くなるとの焦慮でしょうか。

今回のこのエネルギー紛争は
昨年のウクライナVSロシアの対立と基本的なパターンは同じですが、
その時とは違って
欧米ではベラルーシを擁護する論調はあまり見受けられません。
それはベラルーシのルカシェンコが
民主主義の皮をかぶった独裁者だからです。

そこらへんの機敏を
1月3日付のワシントン・ポストが書いています。


◇ベラルーシが自立を望むなら
 
 ベラルーシのルカシェンコ大統領は
 欧州最後の独裁者として知られているが、
 ベラルーシを併合しようとするロシアの圧力にも抵抗してきた。
 
 これを受けて、プーチン大統領は
 ベラルーシから自らが欲するものを引き出すため、
 「ガスの市場価格化」を利用。
 ルカシェンコ氏は新年の演説で
 「われわれはまたも経済制裁と孤立に直面している」と述べ、
 「理由はわれわれが独立を望んでいるからだ」と強調。
 さらに踏み込んで、ロシアの「反ベラルーシ感情」を非難した。
 ロシアに幻滅したルカシェンコ氏は
 西側との関係改善を希望するようになるかもしれない。
 しかし、欧州連合(EU)が最近も再度強調したように、
 そのためにはルカシェンコ氏が
 ベラルーシの民主化に踏み出す必要がある。

 独裁者の同氏はこれまで民主化とは無縁だったが、
 ベラルーシが本当にロシアから離れ、
 欧州の独立国家として生き残ろうとするなら、
 ガスに市場価格を払うだけでなく、
 ずっと大きな変革を受け入れることが不可避となるだろう。

   (ワシントン・ポスト 2007/01/03)


西側の支援がほしければ
まず民主化を行えということでしょうか。

ウクライナとグルジアには同情的な西側メディアも
ベラルーシに対しては実にそっけないです(笑)

おそらくプーチンも
このベラルーシの事情を見越した上で、
天然ガスの値上げを吹っかけたのでしょうね。


さて、このロシアの資源エネルギー戦略について
過去に本店ブログの方で詳述したことがあります。

対露外交と中国包囲網 その6
 ・・東シベリア石油パイプライン(後編)

その中から一部抜粋します。


 ロシアのプーチン大統領は
 KGB(ソ連国家保安委員会)の出身であることは有名である。

 そのプーチンは旧ソ連崩壊後、KGB自体が無くなり、
 故郷のサンクトペテルブルグに舞い戻り、失意の日々を送った。

 1994年、彼はサンクトペテルブルグの副市長に抜擢される。
 その時、彼は一つの論文を執筆した。
 タイトルは「ロシア経済発展のための鉱物資源戦略」。
 この論文が現在、
 ロシア・ウォッチャーの間で興味の対象となっている。

 内容はずばり、

   ロシアを豊かな資源によって再興させる!

 そして、それを実現すべき方法論について書かれている。

 曰く、

  ◇石油やガスなどの資源産業を国有化。
         ↓
  ◇国有企業群の経営を欧米並みに効率化。
         ↓
  ◇金融機関の機能を併設して「金融産業企業群」となる。
         ↓
  ◇世界からロシアの資源開発への投資資金を集める。

 と、こういう内容。

 今のプーチン政権のエネルギー戦略を見ていると
 この1994年執筆の論文の内容を
 忠実に実行しているのが分かる。


 エネルギーの輸出とは
 そこに供給国と需要国の依存関係を作り上げる。

 今年1月4日の英フィナンシャルタイムズ紙に
 1980年夏の英独首脳会談での
 サッチャー英首相と
 西独のシュミット首相のエピソードが書かれていた。

 シュミット首相が
 ソ連との間で天然ガス供給契約を締結したことを話すと、
 サッチャー英首相が愕然とし、
 「それはとても危険なことだ」と言った。
 しかし、シュミット首相は
 「危険なんてことはない。ソ連はガスを売りたがっている。
 実際、オーストリアのように
 もっと依存している国もある。」と語ったため、
 サッチャー首相は同席していたエネルギー相に
 「英国を絶対に同様の事態にしないように」と諭したとのこと。

 この恐れが現実となったのが、
 今年初めのロシアとウクライナの天然ガス紛争である。

 ロシアのガス値上げ要求をウクライナが拒否し、
 怒ったロシアは今年元旦、
 ウクライナ向けパイプラインのガス圧力を下げ、
 供給を削減する措置を断行した。

 このガス紛争の背景には
 去年の民衆革命により、親露派から脱落し、
 急速にEUと米国に急接近するウクライナへの
 ロシアのエネルギー懲罰戦略発動といった側面があった。

 ロシアは資源エネルギーというものを
 単なる輸出製品や外貨獲得の手段として見てない。
 彼らはこれを国策上の武器と考えている。
 英ガーディアン紙はロシアのエネルギー政策を
 「現代版エネルギー帝国主義」と呼んだ。


昨年の12月27日、ロシア上院は

  「大統領がいかなる国家や個人に対しても
  経済制裁を課すことができる」

という法案を可決しました。

おそらく今回の石油供給の全面停止も
プーチンが早速この新法を適用し、
合法的に行った可能性が高いと思われます。

12月26日付けの英紙デーリー・テレグラフは
「プーチン氏が創造したロシア」と題して
このロシアのエネルギー戦略を批判しています。


 約7年前、大統領代行になる直前にプーチン氏は、
 マニフェストを発表した。
 共産主義の崩壊、エリツィン時代の混乱を受けて、
 ロシアの偉大さを取り戻すための青写真だった。
 信用を失墜したボリシェビキでもなく、
 西欧の自由民主主義でもない第3の道を追求するもので、
 そのカギは、国家権力を回復することにあった。
 国家による軍事力・警察力の独占は1990年代に、
 マフィア、政治的野心を持つ新興財閥、メディア貴族、
 地方知事の混合体によって脅かされていた。
 
 2期目の半ばをすぎたこの時点でプーチン大統領は、
 そのプロジェクトを達成したのも同然と感じていることは間違いない。
 新興財閥は無力となり、メディアは検閲の対象となり、
 州知事たちは従順になった。
 経済面では、ユコスを解体したり、
 ロイヤル・ダッチ・シェルと日本の2企業を
 環境保護に関する刑事責任追及で脅したりして、
 石油とガスの生産をコントロールすることによって、
 国家権力は再確立された。

 クレムリンがエネルギーを政治の武器として使っていることは、
 西側へのエネルギー供給源としての信頼性に疑問を生じさせている。
 記者のポリトフスカヤさんや、
 元国家保安委員会(KGB)工作員リトビネンコ氏の殺害は、
 ソ連時代の陰謀の暗黒世界を思い出させる。
 プーチン氏のロシアにはギャングの側面がある。
 ボリシェビキが戻ってくる訳ではない。
 しかし、陰気な左翼主義は、
 21世紀に偉大さを追求する権力にはふさわしくない。

   (デーリー・テレグラフ 2006/12/26)


今回、供給停止となった「ドルージュバ」というパイプラインは
日本語に訳せば「友好パイプライン」となります。
なんとも皮肉な話しですね。



関連過去記事

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 ・・「生産分与契約」と国家の信義



関連過去記事(本店ブログ)

対露外交と中国包囲網 その4
 ・・東シベリア石油パイプライン(前編)
 
 
対露外交と中国包囲網 その5
 ・・東シベリア石油パイプライン(中編)

対露外交と中国包囲網 その6
 ・・東シベリア石油パイプライン(後編)








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