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中国の宇宙開発と軍事利用 その4・・宇宙戦と制宙権


  北京航天員科研訓練中心にある宇宙飛行士訓練用のシミュレーター.jpg


中国の衛星破壊実験に絡めて
かの国の宇宙開発と軍事利用の現状について。

今回が最終回です。

中国の宇宙開発と軍事利用 その1・・衛星攻撃兵器(ASAT)

中国の宇宙開発と軍事利用 その2・・人民解放軍総装備部

中国の宇宙開発と軍事利用 その3・・ガリレオと北斗


中国外務省は23日の定例記者会見で、
ようやく衛星攻撃実験の事実を認めました。

やれやれ。
他国から指摘されないと
事実を公表しない国なんですね。

中国外務省は定例記者会見で、

  「中国は宇宙空間の平和利用を主張しており、
  宇宙空間の軍事化や軍備競争に反対するとの立場に変化はない」

  「この実験はいかなる国家に向けたものでもなく、
  いかなる国家にも脅威にならない」

  「中国は国際体制の積極的な参与者であり、
  国際社会の責任ある建設者である」

  「われわれは、宇宙は全人類の共通財産であり、
  平和目的に利用されるべきだと考えている。
  宇宙の平和利用に関する国際協力を各国と実施していきたい」

と述べました。

全世界が信用しないようなセリフを
しれっと言ってくれますね。
こういう国だと分かっていても呆れ果ててしまいます。

ここで、この実験に対する欧米紙の論調を2つ載せておきます。


◇宇宙の軍備管理に取り組め
 
 中国は先週、地上発射ミサイルで自国の人工衛星を破壊し、
 過去20年以上の間で初めて
 衛星攻撃兵器の実験に成功した国となって、
 各国の間に懸念と恐怖を広めた。
 こうした挑戦的な示威行動は、
 米国の軍事、情報衛星を危険にさらし、
 宇宙での軍拡競争の危険もはらむものだ。
 ブッシュ政権が、その好戦的態度と
 宇宙での軍備管理条約の検討さえ拒否することによって
 中国を責める資格を失っているのは残念なことだ。
 ブッシュ政権は方針を転換して、
 衛星攻撃兵器の実験や使用を禁止するための交渉に参加すべきだ。
 
 中国の実験では、
 約500マイルの高度で老朽化した通信衛星が破壊された。
 ミサイルが粉砕した無数の破片には
 今後10年かそれ以上の間、
 航空機や衛星に危険を及ぼす大きさのものもある。
 中国は今や、軍事偵察や核実験の探知、
 ハイテク兵器の誘導に用いられる米国の衛星を
 破壊できることを実証したことになる。
 情報機関高官は昨年8月、中国が地上発射レーザーで
 米国の衛星を照射したことを報道陣に明らかにした。
 これは衛星の目をくらますか、
 宇宙空間にある目標にミサイルを誘導する方法を
 開発し始めたことを示す可能性がある。

 ブッシュ政権も宇宙で力を誇示してきた。
 昨年10月に発表された国家宇宙政策は
 「宇宙での行動の自由は、
 空軍国、海軍国としての米国にとって重要である」と宣言した。
 宇宙で活動する米国の権利に対する、
 他国の干渉を阻止する必要性も主張している。
 この政策ではペンタゴンの一部が主張するように
 ワシントンが宇宙に兵器を配備するかどうかには触れていないが、
 政権はそうした可能性への制約に反対している。

 もちろんその反対の道を選び、
 衛星攻撃兵器の一切の実験といかなる使用も
 禁止することを目指す方が
 軍事的にも外交的にも道理にかなっているだろう。

 米国と旧ソ連は数十年前にそうした兵器の実験に成功しており、
 その改良型を開発する決定的な必要性はないのに、
 米国は明らかにそうした道を探っている。
 追いつくことに成功した中国は以前、
 3回の実験に失敗したと伝えられており、
 したがって中国にとっては追加実験が望ましいだろう。
 どの国よりも多くの衛星を軌道上に打ち上げ、
 衛星に対する軍事的依存度を高めている米国は、
 野放しの宇宙軍拡競争から失うものが最も大きい。

 専門家の間には
 今回の中国の実験が米国の真剣な交渉への参加を
 促すことを意図したものだとの見方がある。
 中国であっても、
 あるいは他のいかなる好戦的な宇宙開発国であっても、
 宇宙における新たな軍拡競争ではなく、
 軍備管理条約を通じてそれに対抗すべきである。

   (米紙ニューヨーク・タイムズ 2007/01/20)


◇地に落ちた中国の宇宙開発
 
 宇宙開発への中国の飛躍は、
 4年前の初の有人宇宙飛行成功以来、堂々と進んできた。
 しかし、その穏やかな宇宙開発計画は、
 弾道ミサイル搭載の弾頭で
 老朽化した気象衛星を破壊したという報道で、打ち砕かれた。
 報道は航空専門誌エビエーション・ウィークによってまず伝えられ、
 台北、東京、ワシントン、モスクワでパニックボタンが作動した。
 しかし、新人プレーヤーが宇宙軍拡競争に参加したことは、
 さほど驚くべきことではなかったのかもしれない。
 
 過去10年間、宇宙の軍拡化に
 最も声高に反対を主張してきたのは中国だった。
 9年前に発表された白書は、宇宙は人類全体に属し、
 平和目的のためだけに用いられると語っていた。
 以来、中国とロシアは、宇宙軍拡阻止の条約について
 国際的な拘束力のある法的手段の必要性で
 米政府と意見を異にしてきた。
 この問題のためジュネーブ軍縮会議は暗礁に乗り上げた。

 中国は米国の本土防衛ミサイル(NMD)の計画に
 不安を募らせてきた。
 それは核抑止力を無効にするだけでなく、
 台湾にも配備される可能性があるからだ。
 米国防総省が2001年、コロラド州で行った軍事演習は、
 「小さな隣国」を脅かしている敵に
 米国が対決するという想定で行われ、
 台湾問題とミサイル防衛の関連を明確にした。

 中国の数百発のミサイルは台湾に向けられている。
 それらのミサイルが、米国のミサイルや、
 宇宙にある米国の衛星が発射したレーザーで迎撃されるのなら、
 論理的に中国が次に出る措置は、
 それを撃ち落とせることを証明することになる。
 衛星は、衛星に狙われるミサイルと同様に危険ということになる。

 だから、中国も米国も定石どおりに互いに非難し合う際に、
 あまり誇らしげな主張ができない。
 ワシントンでは、国家安全保障会議の報道官が、
 そうした兵器のテストは
 両国が民間宇宙分野で切望する協力の精神に反すると述べた。
 何十年にもわたる弾道ミサイル制限交渉を
 危険にさらすという警告を無視し、
 NMDと宇宙配備兵器の研究に何十億ドルも注ぎ込んでいる国からの
 歯切れの悪い言葉である。
 中国の近隣である日本、韓国、台湾の懸念は本物である。
 しかし、国際的な条約が存在しない中で、
 どんな根拠に基づいて批判ができるのだろうか。

   (英紙ガーディアン 2007/01/20)


両紙ともに中国を非難しつつも
昨年10月に発表されたブッシュ政権の宇宙政策、

  米国の宇宙利用を禁止したり
  制限する法体系の構築には反対する

  宇宙での行動の自由は米国にとって重要である

これを批判しています。

確かに今回の中国の行為は
このブッシュ政権の宇宙政策、
つまり「米国は宇宙ではフリーハンドを握る」という、
独善的な主張に対する報復の意味合いもあるでしょうね。

こうして米国の「宇宙でのフリーハンド構想」は
中国という思わぬ伏兵により、
構想発表翌年に頓挫の危機にさらされたわけです。

さて、24日の産経には
この実験に関する軍事評論家の江畑謙介氏の
コメントが載ってました。

 イラク戦争について「半分は宇宙で戦われた」といわれるほど、
 現代の戦争は宇宙への依存度が高まっている。
 とくに米軍は高度なコンピューター・ネットワークと
 通信技術を駆使した戦争方法への変革を進めており、
 衛星などの通信手段が重要な機能を果たすことになる。
 
 中国が高度850キロの衛星を破壊できたということは、
 高度250~400キロの米国の偵察衛星、
 400~600キロの日本の情報収集衛星も
 破壊できることを意味する。
 さらに、中国が破壊した衛星の破片が他の衛星にぶつかり、
 機能が止まる可能性もある。
 
 日本には「宇宙の平和利用」というおかしな議論があるが、
 米軍は95%の情報を民間の通信衛星に頼っており、
 軍事用の衛星だけが攻撃の対象になるわけではない。
 宇宙戦争の時代になったと認識すべきだ。

仁義無き宇宙戦争時代の開幕というわけです。

歴史上では後から振り返れば
あれが時代の分岐点だったという事象がしばしば見受けられますが、
宇宙での軍拡競争という観点から考えると
この中国の行為は
宇宙開発史の分岐点と言われるようになるでしょうね。


今回の衛星破壊実験と宇宙の軍事利用の未来図について
航空機の歴史を例としてあげておきます。

ライト兄弟が初飛行したのが1903年ですが、
それから11年後の第一次大戦において
早くも航空機は戦場で使用されました。

まず、大空を飛行船や気球が飛び、
複葉の偵察機などが
空から地上の敵軍を偵察しました。

上空から敵情を把握できる利点は大きく、
敵味方双方が偵察機や飛行船を飛ばし、
地上軍はそれに対して何の手出しもできない時期がありました。

敵味方の偵察機同士は大空ですれ違うと
互いに手を振り挨拶を交わすような
そんな牧歌的な時代でした。

しかし、上空から
自軍の内情を俯瞰する航空機の存在はうとましいものです。
やがて偵察機同士の空戦が発生し、
最初はレンガを投げたり、拳銃を撃ったりと
実に原始的な戦闘でした。

そして機関銃を搭載した戦闘機が登場し、
優雅に空を舞っていた偵察機や飛行船は
脅威に曝されるようになります。
その戦闘機を撃墜しようと
敵味方双方による空戦が発生します。
「制空権」という概念の始まりです。

さらに爆撃機と攻撃機の登場。
空から敵部隊と敵都市に爆弾を降らせ、
海上の敵艦に爆雷撃を加えるようになりました。

やがて第二次大戦の発生と共に
それまで戦闘の優雅な脇役だった航空機が
戦争の主役の座を奪い取り、
戦いの勝利には「制空権」の確立が不可欠となりました。

太平洋で日本海軍はその事実を敗北と共に味あわされ、
欧州ではドイツの機甲師団が
大空を乱舞する連合軍機に前進を阻止され、
両国共に都市を爆撃により破壊されてしまいました。

現在の宇宙空間での軍事的様相は
この航空機史に喩えるならば
「牧歌的な飛行船と偵察機の時代」に相当します。

宇宙の高みから
他国の軍事施設と軍事行動を逐次監視する米軍の偵察衛星。
米国大統領はこの衛星のもたらした写真を片手に
イランや北朝鮮の核開発を声高に非難します。
これに対して両国は何の対抗手段もなく、
天空を恨めしく見つめるのみです。

少数の主要国のみが宇宙に偵察衛星を飛ばし、
他国を上空から好き勝手に観察する時代。
限られた「宇宙クラブ」のメンバーのみがこの利益を享受し、
それぞれが暗黙の了解で他国の偵察活動を阻害しない時代。
これが今回の中国の実験で終わりを告げようとしています。

さて、きたるべき時代は何か?
それは偵察行為の阻止と破壊、
衛星を破壊する地上からのミサイル攻撃と
宇宙空間にて敵の衛星を破壊する「攻撃衛星」の登場。
そして攻撃衛星同士の戦闘と
「制宙権」という概念の誕生です。

やがて宇宙から地上や海上への攻撃も行われるでしょう。
地表にミサイルやレーザーを打ち込む時代も来るでしょう。
ここに至れば
宇宙空間を制する者が地上を制するようになります。

それは決して遠い未来のSF物語ではなく、
半世紀単位の予想される宇宙の様相です。

おそらく各国の軍関係者も
この未来図を当然の類推の結果として
思い描いていると思います。

しかし、この宇宙における軍備の拡大は
莫大な費用と高度な科学技術が必要なため
一定の国力を持った国以外では不可能です。

それに参加できるプレーヤーは
米国・欧州・ロシア・中国・日本、
そして宇宙開発に急速に目覚めつつあるインドなどです。
それ以外の小国はこれらの大国と連携することにより、
その軍事能力の一端を得るしかありません。


今回の中国の衛星破壊実験は
牧歌的な宇宙開発時代の終わりを示しています。

空を舞う飛行船や偵察機が
大空で優雅に挨拶を交わした時代は終わりを告げ、
戦闘機の銃弾による破壊と撃墜の時代が始まりました。

宇宙での戦争の時代の幕開けです。



関連資料リンク

宇宙戦争の時代 中国衛星攻撃兵器実験、商業ロケットを転用?
 米専門家分析、軍事利用裏付け

衛星破壊実験:「中国、昨年11月に米国に警告」

宇宙軍縮問題で波乱も ジュネーブ軍縮会議が開幕


関連過去記事

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コメント

薄っぺらな大儀

これで、核兵器を持たなければならない積極的な理由が日本にも出来たと言うことになりましたね。日本の世論はついて行けません(^^;。

宇宙の戦いを宇宙だけで収束させるのはそもそも無理です。地上あっての宇宙であり、地上での力関係が宇宙に反映されているわけですから。

しかし、ヨーロッパが長年かけて築き上げた平和を維持するシステムを、米中両幼稚国家が破壊するという皮肉な状況に陥っている昨今、イスラムにアクセスするというオプションを日欧に期待したいものです。

あの「新書」の影響がまだ続いております(^^;。薄っぺらな大儀の使い方が非常に上手な北鮮、中共両政府の言い分に腹を立てるのではなく、薄っぺらな大儀で対抗出来るようになりたいですね。

  • 2007/01/28(日) 09:24:36 |
  • URL |
  • クマのプータロー #-
  • [編集]

佐藤氏

最近、あの本は
店頭で平積みになってますね。
よく売れているようです。
まあ、内容のレベルが高いですもんね。

日本も情報機関の必要性が声高に言われてますし、
これは時代の必然なんでしょうが、
なんだかんだ言いつつ、
組織の要諦は金と人材と権限でしょう。

佐藤氏みたいな人材を掘り起こしてほしいものです。
探せば在野には優秀な人物はいくらでもいると思いますよ。

  • 2007/01/30(火) 22:03:03 |
  • URL |
  • ケイ@管理人 #-
  • [編集]

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