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日米同盟とアーミテージ報告書 その3・・世界秩序と「中国管理」


     マイケル・グリーン.jpg


前回と前々回の続きです。

日米同盟とアーミテージ報告書 その1・・ジャパン・ハンド

日米同盟とアーミテージ報告書 その2
 ・・クリントン政権と同盟の漂流



今回は先日の2月16日に発表された、
アーミテージ報告書の第二弾について論評します。

この報告書の全文訳を探したのですがなかなか見あたらず、
しょうがないので各種報道からピックアップしたものを
以下に要約として掲載しておきます。
ちなみに項目はこちらで勝手につけたものです。


◆日米同盟-2020年を見据え、アジアを正しく導く

 
<日米同盟の強化>

 ◇日米同盟は2020年まで米国のアジア戦略の基盤であり続ける

 ◇日本によるインド洋やイラクへの自衛隊派遣を評価、
  ここ数年で、日米同盟は安全保障面で成熟した。

 ◇日本の安全保障面での貢献拡大のため、
  憲法改正論議や自衛隊の海外派遣を
  随時可能とする恒久法制定を歓迎

 ◇日本は自国防衛の領域拡大と防衛費増額が必要

 ◇日本は武器輸出3原則の撤廃検討が必要

 ◇米国は引き続き日本に「核の傘」を含む抑止力を提供


 
<安全保障>

 ◇日本のミサイル防衛の予算特別枠創設

 ◇日本のF22、F35など新型ステルス戦闘機の導入

 ◇日米による新型イージス艦の共同開発の検討

 ◇米軍と自衛隊の作戦面での連携強化。
  米太平洋軍司令部に防衛駐在官、
  統合幕僚監部に米軍代表がそれぞれ常駐。


 
<中国>

 ◇中国とインドという2つの大国が
  同時に台頭するという前例のないことがおきている。

 ◇中国は国内安定のためナショナリズムの利用を続ける公算が大きい

 ◇米中による地域の「共同管理」との考えも一部にあるが、
  これは米中関係を過大評価し、
  地域の同盟国、友好国との関係を損なう危険がある

 ◇東アジアの安定は日米中の3カ国関係の質にかかる。
  日米は中国に「責任ある利害保有者」となるよう促し、
  双方の利益となる分野で3カ国の協力を模索するべき。

 ◇中国の外交政策の重要課題はエネルギー資源の確保であり、
  その結果、海洋資源獲得競争などの摩擦を引き起こす。

 ◇日米は中国の増大するエネルギー需要により、
  原油価格の上昇などの影響を受ける。
  両国はエネルギーの効率化などでの協力する必要がある。


 
<台湾>

 ◇日米は2005年の2プラス2協議で
  「台湾海峡の争議は対話を通じて平和的に解決」を
  重要戦略目標の中に盛り込んだ。
  これは日米の2020年以前の指導原則であるべき。

 ◇米国は台湾の防衛を支援する義務があり、
  日本は米国の義務を理解し、同盟関係の下で
  台湾海峡の平和と安定を維持に協力する必要性がある。

 ◇台湾の民主化の成功は日米両国にとって重要なこと。


 
<朝鮮半島>

 ◇朝鮮半島で2020年までに南北統一が実現する見通しが高い。
  ただ、北朝鮮が核開発を続けている可能性もあり、
  日米はあらゆるシナリオに備えなければならない

 ◇北朝鮮の核開発問題は統一によってのみ、
  最終的に解決されるようにみえてきている。

 ◇韓国は日米両国と短期的には違いはあっても、
  共通の価値観や、経済的・安全保障上の利益も共有している。


 
<インド>

 ◇2020年にはインドが中国をしのぐ存在になる。

 ◇民主主義などの価値観を共有するインドと日米が
  戦略的パートナーシップを強化し、
  日米印3カ国の協力関係構築が必要。


 
<日本の常任理事国入り>

 ◇日本の国連安全保障理事会の常任理事国入りを支持する。
 
 ◇日本の常任理事国入りは、全ての側面での貢献なしに
  意思決定の主体になるのは不公平で問題があり、
  国連憲章第七章に基づく武力行使の責務を果たすべき。


以上です。

この第二弾報告書は今月の16日に発表されましたが、
本来、執筆者のアーミテージらは
去年9月の自民党総裁選の前に公表する予定でした。

しかし、アーミテージ自身が
CIA工作員漏洩事件で渦中の人となった結果、
ほとぼりがさめるまで発表を延期したことと、
安倍総理と親しいマイケル・グリーンが
総裁選前の安倍氏に無用のプレッシャーをかけるべきでないとして
アーミテージに進言し、
報告書の公表が遅れた経緯があります。

この第二弾報告書の特徴は、
第一弾が漂流していた日米同盟の再構築そのものを
訴えていたのに対して、
周辺諸国の状況とその対応にかなりの力点を置いていることです。

  日米同盟の再構築は成功した。
  今や、この同盟を用いてアジアや世界情勢を
  いかに安定させるかを考えるべき。

これが本題でしょう。

いわば前回が「基礎編」ならば
今回は「発展編」又は「応用編」というわけです。

さらにもっと端的に言うならば
この報告書の主題は「世界秩序の維持と中国管理」です。
大雑把に言えばそれ以外は枝葉といっていいでしょう。

以下、このメインテーマである「中国管理」の部分のみを
論評してみます。


台頭する中国をいかに「管理」するか?

この設問は日米の当局者が最も頭を悩ます問題でしょうし、
「国家戦略」を考える際に
これほど刺激的な知的遊戯はないでしょう。
いわば戦略家の腕の見せ所といった感じです。

報告書のこの命題に対する答えは、
ブッシュ政権の対中政策と
スタンスはほぼ同じと言っていいでしょう。

  日米は中国に「責任ある利害保有者」となるよう促す。

  と同時に、中国が「利害保有者」から逸脱する場合も想定し、
  常にリスクに備えておく必要がある。

責任ある利害保有者。
米国では「レスポンシブル・ステークホルダー」と言いますが、
これは2005年に当時のゼーリック国務副長官が
初めて使った言葉です。

  いかに中国を
  国際社会・現世界秩序の構成員に組み込んでいくべきか?

  クリントン政権時のような大甘な親中政策でもなく、
  かといって、中国封じ込めのような強硬策でもない。

  中国は敵でもないが、同盟国でもなく友好国でもない。
  さらに単なる傍観者であっても困る。

これがブッシュ政権の中国に対する見方ですし、
このアーミテージ報告書の発想です。

敵でもないけど、友好国でもない。
ハッキリしない発想ですし、
中道的といえば中道的ですが、実に分かりづらいですね。

たとえば、米国にとって台頭しつつある中国とは
かつてのソビエト連邦とどう違うのでしょうか?
この米中関係というものを
かつての冷戦期の米ソ関係と比較すると面白いです。

冷戦期の米ソ関係と現在の米中関係を比較するならば
大雑把に言えば2つのことが異なります。

 1,ソ連の政治力及び軍事力は世界を制するだけの力があった。
   さらに共産主義という世界秩序創設の理念をもっていた。
   しかし、中国にはそれがない。
   列強の一つ程度の政治力とアジアローカルの軍事力でしかなく、
   また、次の世界秩序を構成しうる理念を持っていない。

 2,冷戦が始まった当初、
   米国のGDPは全世界の70%を占めていた。
   しかし、現在は30%を切っている。

つまり、1「ソ連は巨大で強かったが中国はさほどでもない」
2「米国の力は冷戦期と比べて衰えている」

もし、米国が今でも圧倒的な国力を持っているならば、
中国を「責任ある利害保有者」などと生ぬるいことは言わず、
強硬的に米国流価値観への変革を強いるでしょう。

また、中国の力がかつてのソ連のように強大であるならば、
米国は眼前の脅威として積極的に対決姿勢を取るか、
あるいは逆に軟弱な融和態度になるでしょうね。
まあ、おそらく米国的価値観から言えば強硬対応となるでしょう。

いわば、かつての冷戦期と比較するならば
ソ連ほど中国は眼前の脅威ではなく、
また、米国も正面対決するほど力に余裕があるわけではない。

よって導き出される結論としては、

  中国に国際秩序の「責任ある利害保有者」となるよう促す。

  と同時に、中国が「利害保有者」から逸脱する場合も想定し、
  常に備えておく必要がある。

の、両面対応でいくということでしょう。

ただ、これは米国的発想であって、
日本も全く同一でいいのかというと
何とも言い難い部分があります。

私は、北米大陸に位置する覇権国家の米国と
アジアに位置する非核武装国家の日本では
自ずから中国に対する態度には温度差があっても
当然のことだと思っています。

ちなみに、このアーミテージ報告書が発表された際に
日本のマスコミ各社もいろいろと報じていましたが、
各社によって報じ方に違いがありました。

毎日・NHKなどは

 中国に対する「封じ込め策」などの強攻策は否定し、
 対話路線を重視する

これに力点をおいて報じていました。

しかし、アーミテージ報告書には
次のような一文もあります。

  米中による地域の「共同管理」との考えも一部にあるが、
  これは米中関係を過大評価し、
  地域の同盟国、友好国との関係を損なう危険がある

これはクリントン政権時の対中融和策、
日本頭越し外交の否定です。

アーミテージらのジャパンハンドは日米同盟の重視派であり、
これがあくまでもアジア政策の基本中の基本と考えています。

日米同盟をしっかりとさせ、
両国の緊密な関係を維持した上で
中国に対して利害保有者となるように促していく。
これがこの報告書の趣旨であり、
無原則な親中政策ではないということです。

それは「台湾」の項目を見ても明らかでしょう。

  米国は台湾の防衛を支援する義務があり、
  日本は米国の義務を理解し、同盟関係の下で
  台湾海峡の平和と安定を維持に協力する必要性がある。

日米両国による明確な台湾防衛宣言ですね。


さて、この報告書は
前回と前々回にも書いたように
日米両国に対する影響力は強大です。

一時期、猖獗したネオコンの力が衰えており、
次期政権が民主党になるにせよ共和党になるにせよ、
アーミテージらの中道的な発想が
米国のアジア政策の基本となっていくでしょう。



関連資料リンク

ジャパン・ハンド 春原 剛 (著)

日米同盟「深化の段階」 アーミテージ「予言」第2弾

空洞化する日米パイプ


関連過去記事

日米同盟とアーミテージ報告書 その2
 ・・クリントン政権と同盟の漂流


日米同盟とアーミテージ報告書 その1・・ジャパン・ハンド








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