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ポーランドの共産主義粛清運動・・カチンスキ兄弟と魔女狩り


  20070513.jpg


先日、韓国での
親日派の遺族からの財産没収のニュースが流れました。

韓国:「親日派」子孫らから財産の没収決定

しかし、韓国のみならず、
「過去を裁く」という意味では
似たようなことをやっている国があります。

それはポーランドです。


東欧の社会主義圏崩壊後、ポーランドでは自由選挙により、
連帯系政党・旧共産党系政党が交替交代に政権を担ってきましたが、
2005年9月の総選挙で
旧連帯の流れを汲む中道右派の「法と正義」が勝利、
紆余曲折を経て2006年7月、
「法と正義」の党首ヤロスワフ・カチンスキが首相に、
その双子の弟であるレフ・カチンスキが大統領になりました。

出生時間がわずか45分しか違わない双子の兄弟が
共に国家の大統領と首相になったのですから
大いに世界のニュースを湧かせました。

特にこの2人は
顔や身長、声、髪の色や分け方までがうり二つで
大統領(弟)の鼻と頬にあるホクロ以外に識別方法はなく、
これに便乗したパロディサイトまで登場しました。

カチンスキ兄弟

兄と弟を見分けるというゲームですが、
私もやってみましたがワケが分りませんでした(笑)

ちなみに、この記事の冒頭の画像は
左が弟(大統領)で、右が兄(首相)です。

コントのネタにはいいのでしょうが、
報道関係者などは混乱するでしょうね。
大統領かと思って放映したら実は首相だったなんてね。
たまに兄弟入れ替わることも可能ではないかと・・。

まあ、冗談はともかくとして、
このカチンスキ政権は国内的にはカトリック的な保守主義を掲げ、
外交においてはEUに属しつつも
自国の独自性を守るという路線を取っています。

また、歴史的にポーランドは
独露の二ヶ国に対して警戒心が深く、
現在、ポーランドは事あるごとにロシアと角突き合わせています。

この独自性を守るための担保が
EUに属しつつも、独仏の影響下に入ることを嫌い、
米国と密接な外交関係を築くという外交手法で、
これはポーランドだけではなく、他の中東欧諸国も同じですが、
アフガンやイラクへの米国からの派兵要請には
積極的に応じています。

去年末にポーランドはチェコと共に
EUやNATOの頭越しに米国と交渉し、
自国内に米国のBMD(弾道ミサイル防衛)施設の設置を決定。
これにロシアが猛反発し、
欧露関係に亀裂が入る騒ぎとなっています。

フランスはこの施設設置に反対、
ドイツは賛成しつつも
「せめてNATO経由で事を進めてほしかった」と
メルケル首相などは苦りきっています。

ポーランドとチェコが勝手に決めたことで
なんで欧州各国がロシアと亀裂を深めねばならんのかと
他のEU諸国は困惑していますが、
ポーランドもチェコもEUやNATOの一員である以上、
ロシアから無体な圧力がかかれば
欧州全体で両国を擁護せざるをえません。

また、ポーランドは食肉の輸出問題でもロシアと摩擦を起こしており、
これもEUとロシア間の問題となっています。


かように威勢のいいポーランドの外交路線ですが、
国内に目を向けると
「共産主義狩り」の嵐が吹き荒れています。

カチスンスキ兄弟の「法と正義」は
2005年の総選挙時に
「過去の清算」を公約として掲げ、選挙に勝利しました。

兄弟の父親は、
厳格なカトリック教徒・民族主義者であり、
戦争中はナチス・ドイツに対するレジスタンス運動に属し、
戦後は共産党に抵抗してきた筋金入りの闘士でした。

その影響で、兄弟共に共産主義に対する憎悪は深く、
政権成立後にカチンスキ兄弟は
共産主義を徹底的に追放すべく、
一つの法律を制定しました。

その内容は、1972年8月前に生まれた公職者が
過去に共産党政権と何らかの関係がなかったかを調査し、
旧政権との接触を隠していた場合には
10年間失職するというものです。

この法律、ポーランドでは
通称「浄めの法」というそうで
いかにもバリバリのカトリックである兄弟の価値観がにじみ出ています。

法の施行は3月15日からで
72年8月以前に生まれた政治家、高級官僚、大学教授、
弁護士、学校長やジャーナリストなど、
社会的に影響力のある人々、実に70万人が、
1945年から89年までの間に
共産主義政権に協力したか否かの告白をしなければなりません。

この70万人は所定の書式に必要事項を記入し、

  「あなたは旧共産政権の治安機関に
  密かに、かつ意図的に協力しましたか?」

という問いに答えなければなりません。

つまり、これは一種の踏み絵で
正直に答えれば過去の汚名を浴びることになり、
隠してそれが後でバレたらバレたで
10年間、公職から追放されるわけです。

この「懺悔と悔悟」の期限が5月15日、
つまり明後日に迫っています。

すでに法律施行前から
オーストリア、クウェート駐在の4人の大使が
「過去」をとがめられて召還されたほか、
すでに10人以上の大使や閣僚が罷免されています。

国防大臣のシコルスキも
旧共産党系の諜報機関の利用を唱えたために
辞職に追い込まれました。
シコルスキは熟練の政治家でブッシュ政権に人脈があり、
これから米国とのBMD問題での調整が必要な時期だけに
この退任は米国政府にショックを与えました。

兄弟政治家による「過去の清算」は、
行き過ぎだとして欧米諸国から猛非難を浴びています。

欧米紙の論調を一つ載せておきましょう。


◇ポーランドの魔女狩り

 ポーランドのレフ・カチンスキ大統領と
 双子の兄であるヤロスワフ・カチンスキ首相が、
 同国の自由を損ないかねない動きに出ている。
 最新の被害者はいずれもかつての「連帯」の指導者で、
 ポーランド初の非共産主義者の首相となったマゾビエツキ氏と、
 元外相で現在は欧州議会議員であるゲメレク氏だ。

 二人は、新たな法律によって、
 共産主義時代の秘密警察との接触について
 宣言するよう義務付けられたが、
 両氏とも、かつて政権に参加した際に審査を受けており、
 何も隠す必要がないことが明らかになっている。
 しかし二人は、新法は国家安全保障上、
 必要とされる範囲を大幅に超えているとして協力を拒否した。
 新法で摘発を受けた人物は、ジャーナリスト、教師、
 企業経営者、政治家、官僚などこれまでに約七万人に上る。

 大統領と首相は、
 ポーランドの社会を腐敗させている隠れ共産主義者を
 根絶やしにするのだとしているが、
 大規模な摘発にもかかわらず、
 大統領らが主張する旧共産主義者の陰謀は見つかっていない。

 ポーランドはまだ、
 過去の共産主義時代と折り合いをつけることができずにいる。
 確かな証拠のある深刻な犯罪は訴追されるべきだ。
 人々が自分たちについて何が書かれているかを確認できるよう、
 秘密警察の文書は公開されなければならない。

 しかし、政権は
 大統領の政敵を攻撃するために過去を使ってはならない。
 マゾビエツキ氏とゲメレク氏は、
 かつての共産党時代に権力に抵抗したように、
 現在も政権の行き過ぎたやり方に抵抗しており、
 高く称賛されるべきだ。

   (英フィナンシャル・タイムズ紙 2007/04/30)


カチンスキ兄弟が行いつつある「魔女狩り」は、
歴史上、体制の変革時にしばしば見られる事象であり、
過去の旧支配層や旧思想を追放しようとする政策は
ある程度はやむをえないものでしょう。

しかし、それが行き過ぎ、
過去の体制に関係した人物を
根こそぎ粛清しようという動きは、
結果的に旧体制からの
統治システムや人材の円滑な移管を困難なものにします。

イラク戦争後のイラクの現状などはその最たるもので、
旧バース党関係者や旧イラク軍の将校を追放した結果、
戦後のイラク統治が困難なものとなったのは
見てのとおりです。

体制変革者や征服者にとっての上策は、
旧支配層の上辺部分のみを追い払い、
中層以下は温存して自らの統治体制に協力させることです。

中層以下までも根こそぎ追い払おうとする、
このカチンスキ兄弟の「浄めの法」は
ポーランドの未来にとって大きな傷になると思われます。

5月15日以降の
ポーランド情勢に注視したいと思います。



関連資料リンク

動画:カチンスキ兄弟が進める「共産主義一掃」は民主主義か?

ディプロ:ポーランドのパラノイア

ポーランド“双子政権”旧共産政権関係者“追放”
 消える「歴史」に警鐘







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