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青蔵鉄道の開通とチベット独立・・「西部大開発」を巡る地政学的インパクト

青蔵鉄道の全線試運転を開始
 チベット自治区への観光客の大幅増へ

 「世界の屋根」と呼ばれる、
 中国・チベット高原を貫く青蔵鉄道が7月1日、
 全線で旅客輸送の試運転を開始する。
 青蔵鉄道の開通で、
 中国のすべての省、自治区に鉄道が通ることになる。
 全土が鉄路で結ばれることで、今後、チベット自治区への
 大幅な観光客増加が期待されている。

 青蔵鉄道は、青海省の省都・西寧と
 チベット自治区の区都ラサ間を結ぶ高原鉄道。
 全長は約2000キロに達し、
 経済発展から立ち遅れた内陸部を重点的に開発する、
 中国政府の国家プロジェクト「西部大開発」の目玉の一つ。
 
 最も標高が高い地点は海抜5072メートルで、
 南米ペルーのアンデス山中の地点を抜いて世界一。
 工事区間の標高平均は4500メートルで、
 多くの部分が凍土になっており、
 ロシアやカナダの凍土研究の成果も参考にしての難工事となった。
 列車の最高時速は100-120キロで、気圧が低いため、
 飛行機同様の気密構造車体が採用されている。
 
 昨年10月に線路の敷設が完了し、
 今年2月から貨物便の試運転が行われていた。
 来月1日の全線試運転が順調にいけば、
 来年4月には全線開通する。
 
 中国の華僑向け通信社、中国新聞社電によると、
 青蔵鉄道へは西寧線、北京線、四川省・成都線、
 上海線の4路線の乗り入れが決まっており、
 今年のチベット自治区への観光客は
 前年比40万人増の約220万人が見込まれている。

   (産経新聞)


この「青蔵鉄道」でブログ検索をかけてみると、
鉄道マニアのブログでは、

  海抜4500メートルの工事は難関で
  そこを走る列車は車体の構造が特殊で
  風光明媚な景色で羊が牧童に追われて
  ああ、僕も乗ってみたいなあ~

なんて書いてるし、
逆に反中の保守系ブログなんかだと、

  中国のチベット同化政策の一環で
  これでますます漢族の文化的侵略は進み、
  チベット独立の動きを封じ込め・・・

なんて書いてる。

まあ、硬軟どっちも同意ですな。

旅行者としてこれほど面白そうな鉄道はないだうし、
また、保守系の一人の日本人としては
中国の併合・占領下におかれたチベット人の苦境を
思いやらざるをえない。

この青蔵鉄道とは
大きく分けて2つの視点で見れると思う。

1,チベット独立の封じ込めと中国への同化政策

2,中国の西部大開発の一環。

1はよく知られてることだし、
多くの保守系ブログが語っていることなので、
ここでは2の「西部大開発」について書いておきます。


「西部大開発」
中国の江沢民国家主席が1999年6月、
陝西省を視察した際に提起した国家的開発プロジェクト。

発展の続く広東省や上海など沿海部と、
開発の遅れる西部の内陸地域の経済格差解消や、
農村部と少数民族地域の安定確保が狙い。

鉄道・道路建設などのインフラ整備や
投資環境の整備、科学教育の発展などの優遇政策など、
巨額の資金を投入する。

西部とは陝西省、貴州省、四川省、雲南省、新疆ウイグル自治区、
チベット自治区など十の省・自治区・直轄市を指し、
総面積は国土の56%、人口は全体の23%を占める。
後に内モンゴル自治区と広西チワン族自治区が追加され、
12省区市となった。

この開発計画の柱は4つあって、

1,西電東送
   西部地域の豊富な資源を活用し、発電して
   それを慢性的電力不足の沿岸部の工業地帯に送る。

2,南水北調
   中国南方地域の水を北方地域に送り、
   慢性的な水不足を解消する。

3,西気東輸
   新疆ウイグル自治区と東部の沿海地域を
   全長約四千キロのパイプラインで結び、
   天然ガスを送る。
   
4,青蔵鉄道

このうち、すでに完成して稼働しているのは
西気東輸のパイプラインのみ。
新疆ウイグル自治区のタリム盆地から
天然ガスが上海などに送られている。

青蔵鉄道もこの「西部大開発」の一環で
今まで鉄道が存在しなかったチベット自治区に
北京から直結する鉄道路線を敷き、
流通だけではなく、観光客の呼び込みを行い、
チベット経済を活性化させようとの意図。

その背景には、経済成長による繁栄で
チベット独立派の動きを封じ込め、
中国共産党統治の正統性を確保しようとの狙いがある。

さらに同地の繁栄によって漢族の流入を盛んにし、
人口構成比90%をしめるチベット族の割合を
低下させようとの意味もある。

少数民族対策の眼目ってのは全世界の国々共通で、
やはり「経済繁栄」によるアメと、
「独立派弾圧」「文化的同一化」のムチの二本柱が必須。
これは中国政府も全く同じパターン。

当然ながら、この青蔵鉄道試運転開始の報は
インド北部のダラムサラを本拠とする、
チベット亡命政府の面々にとって頭の痛い話しだろうね。

私は思うんだけど、
たとえば近未来に中共政権が崩壊して
仮にチベットが独立を果たしたとしても、
彼等はどれだけ国造りのビジョンを持っているのだろうか?
問題はここなんだろうな。

彼等の独立の正統性は全く疑わないけど、

  ハイ、独立しました。
  でも、経済的に極貧でもうどうにもなりません。

これじゃあ、しょうがないわけで
近隣諸国と組んだ経済開発ビジョンは
やはり暖めておく必要があると思うよ。
経済的に貧しいってことは、
また他国の侵略を呼び込むってことだからね。


さて、この「西部大開発」は
もっと大きな国際的視点から見ると、
実は興味深い動きが進行中なんです。

それは、この開発計画の一環として、
中国雲南省からミャンマーのシットウェ港への
パイプライン建設が今年から着工されること。
「中緬パイプライン計画」という。

世界地図をお持ちの方は地図を片手に読んでほしいけど、
中国雲南省の省都昆明からミャンマー領マンダレーを経て、
インド洋ベンガル湾にあるシットウェまでをパイプラインで結ぶ。
完成後はさらにラインを延長して
昆明から四川省の重慶まで結ぶ予定。

このパイプライン計画の意味するところは、
即ち、中国がマラッカ海峡を経ずして
インド洋から直接、中東の石油を輸入できるようになること。

その石油を利用して西部地区を大開発すると共に、
マラッカ海峡経由のシーレーンのリスクを
押さえようという意図なんだろうが、
こいつが完成すれば、地政学的な激変は必至。

これに伴い、
かねてよりインド洋のミャンマー領の島を租借して、
小さな海軍基地を作ってた中国が、
一定の海軍力をインド洋に進出させるようになるでしょう。

中国は国際的に孤立したミャンマーに莫大な経済協力を行っており、
その見返りとしてアンダマン海のミャンマー領ココ諸島に
最新のレーダーを持つ海軍基地を保有しているし、
さらに、パキスタンにも働きかけて
アラビア海のグワーダルにも軍港を建設中である。

この中国の「南進」路線にインドが神経を尖らせており、
ベンガル湾のアンダマン・コタバル諸島には
インドの海軍基地が設置され、
ココ諸島の中国基地と対峙する形となっている。

まあ、話しが青蔵鉄道から
えらく拡大してしまいましたが、
この中国の「西部大開発」の成否は
それだけのインパクトを中国やチベットのみならず、
周辺諸国にも与える。

一見、ローカルな話題の青蔵鉄道と西部大開発ですが、
なかなかどうして、重要度大のニュースなんですね。



関連資料リンク

ダライラマ法王日本駐在事務所

BurmaInfo: 中国のビルマ進出

季報:随想 「今、新たに問われるシーレーン防衛」





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テーマ:中国問題 - ジャンル:政治・経済

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コメント

祈ってます

このまま開発、同化が進んでチベットに独立のチャンスがあるのでしょうか?

ウイグル、チベット、台湾には独立を果たして欲しい。チベットが独立したら是非かの地にいってみたいです。

  • 2006/06/30(金) 23:13:52 |
  • URL |
  • 憂国 #-
  • [編集]

独立の回復には・・

何故、チベットが中国の支配下に置かれているかというと、

1,中国とチベットの国力の差

2,中国自体が東アジア周辺部で大国であること

3,中国の国家理念:
   覇権拡大の許容と清朝の版図回復

この3つですね。

国力に差があるから小国は大国に併呑され、
しかも中国が大国なので周辺諸国は介入できず、
中国の国家理念が覇権拡大を良しとし、
かつての歴史上の「版図」の回復を命題としてること。

逆に言えば、
この3つが崩れた時に
チベットは独立を回復できるでしょう。

中国の弱体化、国家理念の変容、
この2つです。

1は力ずくの独立回復が可能となり、
2は多少は平和的な独立回復が可能となるでしょう。

  • 2006/07/01(土) 01:10:26 |
  • URL |
  • ケイ@管理人 #-
  • [編集]

西部大開発

西部大開発の原資は日本のODAを当てにしていたような気がするんですが、どうなったのでしょう?

人民解放軍のインド洋進出はインドだけでなく、アメリカ、イギリスとも摩擦を起こしますね。アウンサン・スーチー女史が、軍事政権に経済援助を行う日本に対してずいぶんと厳しいことを言っているようですが、日本が手を引いたとしても中共が手を伸ばしてくるのは必定だったわけですね。つくづく救われない人だ・・・。日本も中共が影響力を増してくる前にここから手を引いて置けばビルマに民主主義国家が誕生していたかもしれません。親父の裏切りの復讐を、違う形で日本にやられているスーチー女史はいつまで試練が続くでしょうか・・・。

  • 2006/07/02(日) 08:08:01 |
  • URL |
  • クマのプータロー #-
  • [編集]

ミャンマー

> 日本のODAを当てにしていたような気がするんですが、

そう言われて少し調べてみたんですが、
ODAが使われているという情報が全然無いですね。
個々のプロジェクトまでは分かりませんが・・。

過去の産経の記事とか見ても

 中国「ODAを頼む」
 日本「民間の投資中心でやったら?」
 中国「(ーー;)」

みたいな感じでしたよ。

西部大開発、総額は8兆元ですから、
日本円にすると120兆円でしょ。
ここまで巨額になるとODAもへったくれもないですね。

そもそも中国の西部地方の開発なんて
日本の国益に関係ねーやって感じですから。

ミャンマーは難しいですね。
最近の中国の進出に刺激されてか
ここんとこ、日本も
ミャンマーの現政権の批判は手控えてましたけど、
先日の日米首脳会談では厳しく批判したそうですね。

あと、ミャンマーを巡る中国とインドの綱引きも
これも熾烈になってますね。

  • 2006/07/02(日) 21:12:34 |
  • URL |
  • ケイ@管理人 #-
  • [編集]

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